第22話 生きてるのか
「――んっ、……うっ」
気持ち悪い――。
嫌な目覚めだ。
周りは暗い。
身を起こし、目を開ける。
「――うおっ!」
目の前に大きな獣が横たわっている。
よく見ると、獣の腹部に大きな穴が空いている。
――そうか、倒せたのか。
「ふぅ――」
――生きてるのか。
自分の腕を見ると、血が黒く固まっている。
ちぎれてはいないが、感覚がない。
水で洗ってから、回復魔法をかけよう。
魔力は、ほぼ回復している。
僕は、ふらふらしながらも立ち上がる。
獣の周りが月明かりでよく見える。
「――ふぅ、ふぅ、うっ、うぇ」
死体が目に入る。
吐き気が込み上げてくるが、何も出てこない。
耐えきれず、その場に座り込んだ。
そして思い出す。
人が死ぬ瞬間を。
脳から離れてくれない。
「あぁ、あぁ、あぁ、あぁあああぁ」
気持ち悪い。
気持ち悪い。
――助けられただろ……。
――そして、何分ぐらい立っただろうか。
気持ちの整理がつき、落ち着いている。
そして、今の状況を考え異常なことに気づく。
「――父とルクリスはどうしているんだ」
普通だったら、もう獣を討伐してここに来ているはずだ。
ここに来ていないとすれば――。
「まだ、終わっていない?」
これしか、考えられないが、父とルクリスに限ってこれはないと考えたいが。
――行ってみるか。
動かないと。このままいたら、精神が飲み込まれてしまう。
重い腰を上げ、落ちていた杖を拾い、近くにあった井戸で水をすくい上げ腕をゆすぐ。
痛みが感じない。
「『サンシャイン・ヒール』」
傷が塞がらない。
「しょうがない。『エクストラ・サンシャイン・ヒール』」
魔力がごっそり持っていかれる感覚――。
気持ち悪いな。
思わず、膝をつく。
おそらく、何回もエクストラ使っている影響だろう。
初めての感覚だ。
不快感はあるが、傷は塞がった。
つねると、痛みも感じる。
「……奥にある集落を目指そう」
どういう状況か、確認したいのと、一刻も早くこの集落を出たい気持ちがある。
倒れている人を埋葬をしてあげたいが、今の僕では、無理だ。
近くにあった、血まみれの剣を拾う。
意を決し重い足を上げ、奥の集落を目指した。
♢
「あっ!」
三十分ぐらい歩いただろうか、道の途中で、乗ってきた馬車を見つけた。
僕は、馬車へと駆け寄った。
馬は寝ているようだ。
中を覗き込む。
「いないか……」
馬車の中は、もぬけの殻だった。
すこし休憩するため、中へ入った。
座ろうとすると、一枚の紙が目に入った。
『オースへ 迎えに行ってやれなくて済まない、集落の獣は一掃した。急いでいるので簡潔に書く、お父さんとルクリスは、ノーレストへ向かう。オースは、屋敷へ戻りお父さんがノーレストに行ったことを、報告しろ。できるなら王都へ行き、何があったか確認してくれ。 お前が愛する父より』
分からない。
分からない。
今、何が起こっているんだ。
――とりあえず父の言う通りに動こう。
僕は、馬を起こし、後ろの箱を切り離す。
馬を見つめ、あることに気付いた。
……僕、乗馬なんかしたことないや。
と、とりあえず。
馬にしゃがんでもらい乗ってみる。
目線が高い。
この紐が手綱か?
引っ張てみると。
何も起きない。
「違うのか」
自分の足を適当に動かしてみる。
すると――。
「うわっ、うわぁぁぁあ」
勢いよく馬が走り抜ける。
ふくらはぎで馬の腹を圧迫すると動くのか。
「速すぎる!ていうか、屋敷と反対方向だし!!」
思わず、持っていた手綱を引っ張る。
「……と、とまったぁ」
危なかった。
でも、今ので、色々吹っ切れた。
馬を屋敷の方へ向かせて。
走り出す。
「うぉぉぉお!!」
結局原則の仕方がわからず、馬に身を任せ、道を走り抜けていく。
体重が軽くて力強く踏ん張っていないと飛ばされてしまう。
♢
「………」
つ、疲れた。
でも、あっという間に屋敷へ着いた。
僕は、馬を降り、屋敷へと入る。
「あっ!オース様!!」
セリオナが驚いた様子で駆け寄ってくる。
「セリオナ、ただいま」
「それよりも、オース様が!」
セリオナが僕の体をている。
僕は、自分の体を見る。
ジャケットは所々破れ、血に染まっている。
腕は治っているとはいえ、他にも小さな傷がたくさんある。
「それより……」
王都に行く。でも、少し休みたい……。
……けど、今動かなければ。
動かなければ、僕は――
「いまから王都へ向かいます」
「えっ!!」
「なので、いまからまた家を出ます……っあ!そうだった、お父様もノーレストに行ってます」
「は、はい」
「では、行ってくる」
よし報告はできたな。
さっきの馬に乗っていけば朝日が登る頃には王都までおけるだろう。
よしっ、気合い入れていけ。
――怠惰ではいられないな!




