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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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麻久利村

大体このシナリオの目途は立ちました。多分、後五・六話くらいで日本ズタズタ計画編が終わります。目標は七十五話あたりですね。そのくらいになったら、リアルの事情もあって続きを書きづらくなると思われるので、その間に話数をまとめる作業に入りたいです。

 校外学習翌日。俺達は三条警部補が見つけた情報を元に、とある小さな農村に向かっていた。それ程遠くはないので、一番近くまでは電車で向かう中、ヒカリは物珍し気に呟いた。

「…こんな時でも電車は動くんだね」

「あー。まあ、これこそ日本人のメンタリティって奴だからな。間違ってる気がしなくもないけども」

 ゴジラが出たって翌日には働きだす日本人故、現在進行形で前代未聞のテロ事件が起きていようが、外出禁止令でも出ない限りは出勤して働くのが当たり前。最も、学生は自宅待機なので俺達もこうして日帰りの取材旅行に行けるわけだが。

この取材旅行のキッカケになったのは、あの蟹と一緒にチンピラたちを自首させた直後のこと。『JACK』が国内に流出させた銃火器の情報を追っていた三条警部補が、全国の警察官たちからの情報を整理する中で聞いた奇妙な噂について連絡してきたのだ。

 今から俺達が向かう農村の駐在さんが一週間ほど前に、署に助けを求める連絡をしてきたとのこと。ただならぬ雰囲気に数人の警官が村に向かった所、その村には人っ子一人居なかった。慌てて数十人体勢で捜索すると、村人たちは全員何事もなかったかのように山奥から戻ってきた。しかし助けを求めて来た駐在さんの姿は無く、そのことについて問いただすと村が熊に襲われたのだと村人は答えた。だから私達も山に隠れていたが、駐在さんは熊に襲われて行方知らずなのだと。

 あり得ない話では無い為、警官たちは山に捜索隊を送ったが駐在さんは見つからず、結局一名が行方不明のまま事件は解決した。しかし、捜索隊に参加した一部の警官たちは、あの村にも森にも熊の痕跡が無かったと証言していたのだ。確かに森には野生の熊が居てもおかしくは無いが、駐在が助けを求めるほどに暴れたのなら、壁や扉に穴が空いているのが自然だ。村人たちが森に隠れていたのなら、それらを直す暇など無かったはずなのに、と。

 しかし結局署は事件を熊による獣害として結論付けた。あくまで一部の人員が不自然だと言っているだけで、わざわざ予算を費やしてまで追求するほどの事件ではないと判断してのことだった。

 だがその事件の前後、逮捕された黒服暴走族たちの一部がその村の周囲に来るよう命令されていたと証言したこと。そしてグランドパークで発見した資料の中に、事件の舞台になった『麻久利村』の名前があった為、武器回収で忙しい公安の代わりに俺たちが向かうことになったわけだ。

「バスは…二分前に出たので最後か」

「もう一本早い電車に乗ればよかったね」

「いや、それだと家出るの一時間早くなってたぞ。ヒカリが起きられないだろ。それ」

「うっ…確かに」

 やむを得ずコンクリで整備された山道を歩きだす。駅前だというのに周囲に人影は無く、ほぼすべての商品が売り切れのまま放置されている自販機だけが俺達を出迎え、そして見送ってくれていた。

 擦れた地図を読めば、この辺りも以前は商店街として栄えていたらしいのだが、今はどの店もシャッターで閉まっていて誰かが住んでいる形跡すらない。少し目を凝らせば真新しい家の立ち並ぶニュータウンが見えるが、そっちにはそっちで別の路線の駅が通っているようだ。

「ま、こっちには用は無いか」

 そう呟いて『麻久利村』に向けて足を踏み出したその時だった。がさ、と言う物音がして俺達はシャッター街の方を振り返ると、そこには小学生くらいの男の子が看板の影に隠れていた。

「どうする?」

「この辺に住んでる子供だろ?別に気にすることは無いさ」

 口ではそう言いつつ、内心変身して飛んでいけばいいや、と言う考えが実行に移せないことを悟ってため息を付く俺。結構遠そうだから、時間の節約もかねて楽したかったんだけどな。

 まあそんなことを言ってても仕方ない。寂れたシャッター街や自然の風景をスケッチしつつ、ヒカリと一緒に山道を登っていく。時々ヒカリとしょうもない話をしつつ、気づいたら車のタイヤ痕がくっきりと残っている獣道のような所にまで来てしまっていた。

「コンクリはここまでか…ヒカリ、大丈夫か?」

「大丈夫。スーツが足も覆ってるから。それより、あの子どこまでついて来るつもりなんだろ」

 携帯用の鏡を取り出して後ろを見るヒカリ。旧商店街からずっと、あの少年は木の影や横溝に隠れてこっちを伺い続けていた。へたくそな尾行はまあご愛敬ではあるが、いい加減鬱陶しく思えて来たのも事実。

 ちょうど急カーブの所に来ていることもあって、俺たちはアイコンタクトで作戦を決める。そして急カーブを曲がって少年の視界から消えた所で二人同時にジャンプして生い茂った木の上に飛び上がった。

「あ、あれ?」

 少年にしてみれば、追いかけていた相手がカーブを曲がった途端に消えたように見えたことだろう。少年はびっくりした顔で周囲を探し回り、最後にはガードレールすらない道の端からがけ下を覗き込み始めた。どうやら俺たちが転落したと思ったらしい。

「だ、大丈夫なのかな…?」

「誰が?」

「えっ!?」

 声をかければ、当然のように少年は心臓が飛び出るくらいに驚いた顔してこっちを見上げてくる。俺達はそんな少年の顔に満足して木から飛び降りる。

「君、どうして私達を追いかけて来たの?駅からずっと追いかけて来たわよね?」

「お、追いかけてねーよ!別に…」

 露骨に顔を逸らして逃げ出す少年。だが俺としては逃げ出す理由も気になってしまうので追いかけようとするが、ヒカリはそんな俺の肩を掴んで止めた。

「追いかけないのか?」

「多分、行き先は同じよ」

 既にカーブを曲がってしまって見えなくなった少年の足音を聞きつつ、ヒカリは自信たっぷりに頷いた。



『日本ズタズタ計画。急きょ予定を早めたと聞いたが順調のようだな』

「はっ!後は狂化ガス散布の準備が整い次第実行できます!」

『よろしい。今回の作戦は我々の今後を左右する重要な作戦。失敗は許されんぞ。分かっているな?』

「分かっております大首領。このキャプテンZ、いかなる事態に陥ろうとも成果を確保してみせましょう」

『期待しているぞ』

 『JACK』日本支部。大首領との謁見を終えたキャプテンZはホッと一息付きつつ謁見室を後にする。この作戦はキャプテンZが支部長、いや幹部に昇進してから初めての大規模作戦。失敗が許されないことなど改めて言われるまでもなく心得ている。だからこそ万全の態勢で臨みたかったのだが、予期せぬエラーのせいで準備不十分のまま実行せざるを得なかった。

「今の所問題は無いか!?」

「はっ!公安に目立った動きはありません。予定通り、武器の回収に手間取っています!!」

「ICPOも同じく!」

「葦原和也は?」

 キャプテンZの質問に、作戦室が凍り付く。

「なんだ、どうしたというんだ!?」

「じ、実は、汚名返上の為とプロフェッサーDがその役を買って出たのですが、それっきり報告が…」

「またか…プロフェッサーDはどこに居る!?」

「分かりません…三十分ほど前に調べものをしてくる、と…」

 猛烈に嫌な予感がしてしまう。元はと言えばプロフェッサーDが和也に情報を漏らした挙句取り逃がしてしまったことでこの事態になってしまった。頼むからこれ以上余計な真似だけはしてくれるな、と念じながらキャプテンZは走り出す。そしてプロフェッサーDが居るであろう研究室や自室を探し回るも、結局見つけられることは無かった。

「…葦原和也の行方を探れ!恐らくプロフェッサーDもそこに居る!!」

 キャプテンZの号令に、部下たちは飛び上がらんばかりに驚きながら作業に入る。部下のスタンドプレーを誰よりも嫌っていたプロフェッサーDのスタンドプレーに、部下たちはおろかキャプテンZすらも頭を抱える。

「出ました!や、奴は『麻久利村』に向かっています!!狂化ガスの実験に使った村です!!」

「何だと…!?」



 少年は自分だけが知っている村への近道を走っていた。最も、どこかの野生動物が作った獣道ではあるが、その動物もここ数か月姿を見せていない。

 村へ急ぎつつ、少年はついさっき見つけた二人組のことを想い出す。どちらも村の人間ではないし、下の街の住人でもない。村へ向かおうとしていることを聞いて、何のために来るのか探ろうとしたが、まさか見つかってしまうとは思わなかった。

 だけど、二人共あの身のこなしはただものじゃない。まさか、あの夜に来た化け物たちの仲間なんじゃ。

 不吉な想像が脳裏に過ったその時だった。

「うわあ!?」

 少年のすぐ目の前に、あの夜に村を襲った怪物がまたしても姿を現した。

「見つけたぞ。小僧!お前もガスを吸うが良い!!」

「い、嫌だああああああ!!」

 化け物の口から放たれる紫色のガス。少年は慌てて正反対の方向に逃げようとするものの、何とそこには不気味な老人が笑いながらこちらを見つめていた。

「あ、あああ…!!」

 後ろからはガス。そして目の前には恐ろしい老人。少年が恐怖のあまり思わず目を閉じたその時だった。

「おりゃあ!!」

「むうっ!?」

 気配を追って追いかけて来た和也が飛び蹴りを放ち、プロフェッサーDは持っている杖でそれを防ぐ。目を開いた少年がその光景に戸惑っていると、真後ろから来る紫色のガスが肩のあたりまで迫って来ていることに気づいた。

「た、助けてーっ!!」

「任せて」

 足裏ジェットを吹かして飛んできたヒカリが少年を抱きかかえ、そしてそのままホバリングで起きた爆風で紫色のガスを吹き飛ばしていく。

「ヒカリ飛べ!!」

「うん!!」

「うおおっ!?」

 化け物がガスをより一層吹き始めたことに気づいた和也が叫び、ヒカリは少年を抱きかかえたまま飛び上がる。いきなりお姉さんに抱きかかえられた上に空まで飛んだ少年が驚きのあまりしがみつく。

「はあっ!!」

「なっ!?」

 真後ろから迫る紫色のガスに気づいた和也は、戦っていたプロフェッサーDを合気道の要領で真後ろに投げ飛ばす。

「ま、待て!ガスを止めろぉぉぉぉぉ!!」

「いや、止めなくていいぜ。じゃあな」

 紫色のガスの中に投げ込まれたプロフェッサーDが悲鳴を上げ、それを見届けた和也が飛び去って行ったヒカリを追ってその場を立ち去る。

 ガスをもろに吸い込んでしまったプロフェッサーDは狂ったように笑いながら部下であるイマジネーターを杖で何度も殴りつける。上官の命令に絶対服従と命じられているイマジネーターは、自分自身のガスで狂ってしまったプロフェッサーDにタジタジになるしかなかったのだった。

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