日本列島最悪の三日間、初日
前回は結構好評でした。やはりバイクアクションは王道ですね。
それより、ある程度話がまとまったら最初の辺りから二・三話を一つにまとめて話数をコンパクトにしようかと思い始めて来たこの所。4000字を基準に一話書いてますが、そろそろ七十話にも到達しようと言う今日この頃。話数を抑えて再出発してみたいですが、いかがでしょうか?
『えー、既にお伝えしましたが本日午後十五時、各地に黒いライダースーツとヘルメットを着用し、バイクに乗った武装集団が日本の各地で一斉に暴動を起こしました。死者、行方不明者多数。また、武装集団は警察によって取り押さえられましたが、その内の一部は警察の包囲を突破し、現在もなお逃走を続けています。近隣住民の皆様方は、出来る限りの外出を控えてください。武装集団は大変危険です。もしも見かけたら警察に通報し、武装集団の関心を買わないよう速やかにその場を離れてください。繰り返しお伝えします。本日午後十五時…』
テレビの臨時ニュースでアナウンサーが何度も同じことを繰り返しているのを聞きながら、私達はグループ本社ビル地下の作戦室で三条警部補たちと顔を突き合わせていた。
「まずは礼を言う。君たちの活躍で、現時点でのこの地区の被害は最小限に抑えられた」
「いや…この地区『だけ』さ」
和也が心底面白くなさそうな顔で言い放つ。テレビを見れば、日本中の彼方此方で黒服暴走族たちの攻撃で傷つけられた人たちが映っている。全部救うことなんて、物理的に不可能だって和也にも分かってるはずなのに。
そんな和也に、三条警部補は厳しい顔のまま首を横に振った。
「正確に言えばまだだ。奴らの計画書は読ませてもらった。予想外の事態に予定を大幅に変えたのだろうが、それでも大筋は変えていないだろう。まずは派手に日本中で使い捨ての暴走族を使い被害を出させる。事前にこの事態を阻止出来なかったことでまずは一敗」
「そして、暴走族たちの確保に失敗したことで二敗目か?」
おじいちゃんの指摘に三条警部補は頷く。
「ええ。しかし、もう彼らが暴れることは無いでしょう。所詮は捨て駒だ。それに、実行犯のほぼ全員の確保には成功している。確かに全国規模で見れば数人程逃したのもいるだろうが…」
「じゃあ、あのニュースで言ってるのは?まるで全国にあいつらがうろついてるような言い草だったけど…」
「それ自体は嘘ではないな。実行犯以外の残党も居るだろう。だが、マスメディアはこの事態を必要以上に煽っている。私達が嘘だと指摘できないギリギリのラインでな」
「マスコミも、奴らと通じてるのか?」
「恐らくはな。スポンサーを牛耳ったか、それとも役員を洗脳したか。だがこれは想定以上に危険な事態だ。既に国会では、与野党の立場を越えた議員連盟が結成され、国民の保護を口実に警察の武装強化と自衛隊の緊急出動を内閣に要請し始めている」
「あのジジイが言ってた計画通りか…このままじゃ、本当に日本の中枢に『JACK』が根を張ることになるぞ…」
日本の治安を悪化させ、警察と自衛隊の装備を強化させることで、日本政府と『JACK』が協力関係を結ぶキッカケを作るというこの日本ズタズタ計画。計画開始よりも先に察知出来たのは良かったかもしれないけど、これじゃあ結果は…。
「計画の一部には既に届いていたんだ。不自然なまでの銃火器の持ち込みと金にならないばら撒き。調べてはいたが、遅すぎたのか…」
「いいや。まだ手はあるさ」
「何だって!?」
和也は新しく描いたコミックマンの原稿用紙を制服のポケットに入れつつ、三条警部補やおじいちゃんの視線を受けながら立ち上がる。
「いくら超党派の議員連盟が出来たからって、そういきなりは変えられない筈だ。奴らもそれを知ってるからこそ、計画の続きがあるんだから、それらを阻止して今回の件を終息させればいい」
「そ、それはそうだよね…」
「だけど、それには日本人全員に、事件が終息したと納得させるだけの証拠が居るな。素人でも分かるくらいに単純で分かり易く、説得力のある証拠が…」
和也はそう呟きながら遠くを睨む。確かにここまで大事になってしまったら、ただ警察が事件は解決したのでもう終わりです、と言うだけでは皆は納得できない。またこんな事件が起きたらどうする、と言う流れになって、結局あいつらの計画通りになってしまうかもしれない。
どうしよう、とみんなが頭を抱える。だけどおじいちゃんがゴホン、と咳払いして皆の視線を集めた。
「その事は今考えても仕方あるまい。まずは第二段階の日本人全体の危機感の変革の阻止、そして第三段階の凶暴化ガスによる暴動の阻止をこなし、その上で証拠を集めるべきじゃろ。ワシはこれから各方面にあたり、マスコミや政治家共の動きを少しでも牽制しておく。アンタたち警察は、何をするんじゃ?」
おじいちゃんは既に内線の電話の受話器を片手に三条警部補を見つめる。こういう時のおじいちゃんはやっぱり頼りになるな。
「ええ。では、まずは国内に流出した銃火器の回収ですね。まだ準備が整っていないらしいのなら勝機はある」
「なら俺は、奴らの作ったって言う凶暴化ガスを調べるか。もう無いかもしれないが、グランドパークで奴らの基地の場所も何か所かメモしてあったしな」
「やることは決まったね…皆で、平和を守り抜こう」
それぞれが自分の役目を果たすために動き出す。私と和也も『JACK』の基地を探しに行こうとするけど、地上行のエレベーターの中でふと和也が私の方をじっと見て来た。
「な、なに?」
じっと見つめられて思わず一歩引いちゃう私。そう言えば、今日の色々とあった校外学習から帰って来てから一度もシャワーを浴びてない。もしかして汗臭かったりするのかな。
私のそんな乙女心を無視して、和也はグイッと近づいてきた。
「ヒカリ、お前…」
「どうしたの?い、一応言っておくけど今は…」
言い訳するような口調の私の肩をポンと叩く和也。ただそれだけだったのに、私の膝はかくんと折れてエレベーターの床に座り込んでしまった。
「フライトスーツが壊れたのは聞いてたけど、ここまで疲れてるじゃねーか」
「ご、ごめん…」
「謝ることねーよ。ほれ」
そう言って和也は私の目の前でしゃがんでみせた。おんぶしてくれるつもりらしい。色々と問題があるからちょっとだけ迷ったけど、なんだか甘えたい気分だったしここは素直におんぶしてもらう。
私を背負って和也が軽々と立ち上がる。ちょうどそのタイミングでエレベーターが一階に到着して、おじいちゃんが呼んでいてくれた車に乗って家に帰る。自分でも思っていなかったくらいに疲れてた私はその道中で眠ってしまった。
「…着替えまでは無理か」
ヒカリを部屋のベッドに寝かせ、着替えと簡単な料理だけを置いてまた外に出る。家の外は案の定人っ子一人居らず、俺は無人の道を走っていった。目標の場所は繁華街にあるスポーツジム。元々ガラの悪い奴らが屯っているという噂のあった場所だったけど、グランドパークの地図ではあそこも『JACK』の下部組織になっているらしい。
(ここだな…随分と繁盛しているようだが…)
裏路地に回り、休憩しているような体勢でスポーツジムの壁に耳を付ける。強化された聴覚ならこの程度の壁など無意味だ。
『ヤバイっすよ…ここまで大事になるなんて…』
『そうだな…』
『クソッ!これで暴れりゃ金くれるって言うから乗ったのによぉ…なんでこんなことに…』
『俺達も逮捕されちまうんかなぁ…で、でも、俺達、未遂だしよぉ?別に法律に違反したって訳じゃ…』
聞こえてくるのは、それ程年のいってない若者の悔やむような声。どうやら暴れる予定だったが、いざ暴れる所になって怖気づいて戻ってきてしまったと言う所だろう。まあ、正常な判断だ。むしろ金やるから銃や爆弾持って暴れて来いって言われてホイホイつられた挙句、本気で暴れてる奴らが日本中に居ることがおかしいんだが。
だが、こうなって来ると好都合だ。ここに居る奴らを自首させて証言すれば、誰かが裏で糸を引いていることを日本中に知らせられるかもしれない。まあそれだけで状況を覆せるかはやってみないと分からないけど。
一つ頷き、まずはどうやって自首を促そうかと考えを巡らせていると、ふと嫌な気配が襲って来た。
『な、なんだ!?』
『うわあああああ!?』
「しまった!」
悲鳴が轟き、組織が使えない駒の口封じに来たことを悟って原稿用紙を取り出す。コミックマンへと変身して窃盗防止用の格子の付いた窓を蹴破って侵入する。
そして全速力で悲鳴のした方向に走ると、器具のあるフロアで五人ほどの若者が尻餅をついていた。
「グルルルル…役立たず共め…」
「あ、ああ…」
「ひいいい!?」
彼らの視線の先には、血の滴る鋏をカチカチさせながら近づいて来る蟹型イマジネーターが。このまま組織のことを誰かに喋られるよりも先に口封じに来たんだろうが、これはこっちとしても好都合だ。
「た、助けてくれよぉ!!俺達、ただのガキなんだよぉ!!」
「知ったことか。我々の役に立たん人間など生きている意味など無い!!ここで死に晒せぇ!!」
鋏を突き出したクラブイマジネーター。標的に選ばれた不良Aが思わず目を閉じるが、俺はボードブレードを投げつけて彼らを救う。
「むっ!?」
ボードブレードをくらって吹き飛ぶクラブイマジネーター。良かった、どうやらそれ程強い奴じゃなさそうだ。
「な、なんだお前は!?」
「何だと思う?」
「だ、誰でもいいから助けてくれよ!!俺達、殺されかけてるんだ!!」
「そりゃ、見ればわかる。だけど、お前らに助けてもらうだけの価値があるかな?」
「へっ!?」
「な、なんだよ!?何でもするから助けてくれって!!」
「へえ。じゃ、その言葉忘れるなよ…!!」
言質は取った。後は目の前の敵を倒すのみ。
「キシャアアアアアアア!!」
強酸の泡を吹きながら迫るクラブイマジネーターにパンチを叩き込み、そして追撃のハイキックで横に置いてあったサンドバッグに叩き込む。全身の堅さと棘でサンドバッグから砂が漏れ出し、それを被った敵は悲鳴を上げながらのたうち回る。
「よくも!!」
何とか立ち上がって鋏を振り上げてくる。しかし動きが単調で簡単に避けられる。クラブイマジネーターはそれがショックだったのか、地団駄を踏んで悔しがる。
何だか少し可哀想に感じなくもないが、まあだからと言って同情はしない。もう一発パンチを叩き込み、今度は吹き飛ばされてガラスの向こうにあったプールに叩き込まれた。
俺は割れたガラスの壁を飛び越えてプールに入り、身体が半分水に浸かったままクラブイマジネーターを殴りつける。が、今度はパンチを受け流されてしまった。
「馬鹿め!この俺は蟹の力を持ったイマジネーターなんだぞ!!」
「水中戦はお得意ってか。ま、ならやりようはあるぜ」
鋏を両手で受け止めつつ、意識を集中させてファイヤーコミックマンへと強化変身する。
「あ、熱っ!?」
「ゆでガニにしてやるよ。はあああああああっ!!」
俺が集中すればするほど炎は燃え盛り、プールの水温はどんどん上昇していく。湯気が立ち始め、水嵩が減り、ボコボコと俺の周囲が沸騰を始める。
「熱い!!熱い!!熱いぃぃぃぃぃ!!」
クラブイマジネーターは何とか逃げ出そうとするが、俺が鋏を掴んでいるせいで一番熱いこの場所から逃れられない。まさに生きたまま鍋に入れられ調理される蟹の末路だ。
「や、やめてくれ!!助けてくれえ!!」
「もう遅い!!茹で上がれーっ!!」
超高温の中に閉じ込められ、クラブイマジネーターが真っ赤に染まって倒れ込む。そして大量の湯気を発しつつ、ナノマシンの力が抜けてただの青年に戻っていくのだった。
「ひいっ!?」
俺はソイツを隠れている不良たちの所に投げ捨て、彼らの前に降り立った。
「…さて、取引だ。どうすりゃ良いか、分かってるんだろうな?」
「は、はい…自首、します…」
「それでいい。お前らの命の為にもな」
この後、不良たちは俺が連絡した千葉刑事の所に自首していったのだった。
感想待ってます。




