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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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ハリネズミの最後!!

度々出て来たハリネズミさん。ここで退場です。そして次回で水城さくらが変身した白鳥怪人との戦いも終わり、第五十話で水城編が終了予定。

その後は二・三話で終わる短編物で話を進めていく予定です。

「ヴヴヴヴヴ…!!フハァァァァァァ!!」

 声にならない叫び声を上げて、白鳥怪人に変身した水城さんが俺達に刀を向ける。その構えは彼女の剣道の構えと寸分の狂いも無い。

「とうとう機械で完全再現か。何年か前に、居合抜きの達人の技を機械が再現したって話は聞いたことがあるが…」

 ボードブレードを剣道の構えで握りしめ、静かに水城さんを見つめる。彼女の事情も、過去も、真実も全て調べ終えた。彼女のスランプも、彼女がなぜ知らなかったとはいえ『JACK』に縋ってしまったのかも。

「和也…」

「大丈夫だ。彼女は俺が必ず助ける。援護を頼めるか」

「うん」

 排熱が終わったレーザーガンを抱えて足裏ジェットを吹かすヒカリ。しかし、飛び上がって行こうとするヒカリを何かが狙撃した。

「きゃっ!?」

「ヒカリ!!大丈夫か!?」

「だ、大丈夫…フライトスーツが守ってくれたけど、この針…」

 わき腹を抑えながら地面に転がる針を見つめるヒカリ。俺にもこの針は見覚えがある。確か、あのスイカジジイの勤めている大学病院の帰りに襲って来たイマジネーターのだ。

「アイツは私に任せて!!和也は、水城さんを助けて!!」

「…分かった!!」

 針の飛んできた方向に飛んでいくヒカリ。一瞬、たった一人でイマジネーターと戦わせてしまうことに迷いを感じたものの、ヒカリはもうただ守られているだけの存在じゃないことを思い出す。

「だったら、俺は水城さんを絶対に助けなくっちゃな。ちょいと痛くて苦しいかもしれねーけど、我慢しろよ…!!」

 俺はその言葉と共に、水城さんが変身した白鳥怪人と一瞬だけ刀をぶつけ合う。そして、白鳥怪人はあの鋭い剣筋で俺に本気の殺意をぶつけて来たのだった。



 和也と水城さんから離れて森の上を飛翔する私。眼鏡のレンズには周囲の様々な情報が入って来るけど、イマジネーターの気配はまだ関知できていない。

「生体反応、動体反応、サーモグラフィー…全部ダメか」

 諦めて目視で確認しようとしたその時、ハリネズミの針が飛んできて私はまたお腹の辺りに激痛を感じた。

「うっ…!!ハリネズミ!!どこ!!」

 咄嗟に針の飛んできた方向にレーザーガンを向けて引き金を引く。しかし、発射されたレーザー光線は木に当たって穴を開けるだけで、今度は全く違う方向からハリネズミの針が飛んでくる。

「ああっ…!!」

 あっちこっちから飛んでくる針に袋叩きにされてしまう私。フライトスーツのお蔭で怪我はしないけれども、空を飛んでいては的になるだけと分かるまで時間がかかってしまった。

 慌ててジェットエンジンを弱めて森に降りる。するとちょうど着地地点にまたしても針が飛んできて、私は慌てて木の影に隠れた。

 カカカカッと音を立て、私の隠れた木に突き刺さる針たち。一発一発は大したことは無いけれど、このフライトスーツを着て居なければ今頃私がハリネズミにされしまっていた。

「何とかしなきゃ…!!私が、和也の足を引っ張っちゃダメなんだから…!!」

 自分に気合を入れるべくしっかりとレーザーガンの銃身を握りしめ、決意を新たにした私は眼鏡のレンズに写ったこの山と森の詳細なデータを確認しなおす。元々それほど大きい山じゃないし、この辺りは山頂も近いからあまり起伏は無い。だから飛んでも隠れられるような大きい岩とかは無い代わりに、こうして私が隠れて楯に出来るくらいには大きい木が幾つもある。

「やっぱり、ここで飛ぶわけにはいかない…だけど、飛ばなきゃ機動力でハリネズミには追いつけない…何とかしてアイツの居場所を突き止めないと」

 そうなると、ここで座っているだけと言う訳にはいかない。私は足裏ジェットを最弱に設定し、ローラーの無いローラースケートのようにふんわりと浮かび上がる。そうしてゆっくりと木の影から出て移動を始めたその時、今度は私の頭目がけて針が飛んできた。

「っ!?」

 咄嗟に足を上にあげてバランスを崩す。すると針は私の頭じゃなくて太ももに当たるけど、それでもかなりの威力で痛みがじんじん残ってしまった。おまけに地上擦れ擦れでバランスを崩したせいで顔から地面に叩き付けられてしまい、私は顔に付いた泥とひび割れた眼鏡を庇いながら何とか上体を起こす。

 その光景を見て、姿を隠していたハリネズミが嬉々として唸り声を上げながら姿を現した。

「まさか、動いていなかったとはな!!スナイパーが戦場で生き残るコツは、常に目立たず移動し続けることだぞ!素人め!!」

「ハリネズミ…!!」

「フッフッフ。その足ではもう飛べまい…!!」

「うっ…!!」

 ハリネズミの言う通り、さっきの針の一撃が効いて右足が上手く動かせない。そのせいで右足を庇いながら、両手の力で後ずさるしかないんだけど、ハリネズミはこんな私を見て心底おかしそうに笑った。

「貴方、一体何なの!!こんなとんでもない兵器作って、普通に暮らしてただけの皆の人生と身体を滅茶苦茶にして!!良心が痛まないの!?」

「良心?良心だと!!ハッハッハッハ!!そんな物、サンタクロースを信じる心と一緒に捨てるのが一般常識じゃないか!!まさか未だにサンタクロースを信じている訳でもないだろう!?」

「サンタクロースは関係ないでしょ!誰かが傷つくところを見たくないって言う、人間らしい心も持っていないと言うの!?」

「馬鹿め。誰かが傷つくところを見たいと思うのも、人間らしい心なんだよ!お子様め!!」

 一切悪びれることも無く、ハリネズミはそう叫んで私の顔に特大の針を突きつけてくる。その姿に、私は私の中にある『JACK』への敵意を再確認した。

 やっぱり、こいつらはやっつけないといけない敵だ。私達の生きている世界に居ちゃいけない奴らなんだ。

「やっぱり、貴方たちは人間じゃない!!」

 腰のベルトを操作し、ジェットエンジンを最大出力で噴射する。強烈なジェットエンジンのエネルギーを真正面から受けたハリネズミが吹き飛び、私は右足の痛みに堪えながら低空飛行で場所を移す。

 着地するまでの途中、何度か針が飛んでくるけどそれを回避して大き目の木の根っこの下に着地する。

「人間が皆美しくて、素晴らしい物なんかじゃないってことくらい知ってる…!!だけど、本当に強くて皆に認められる人は、きっと…!!」

 握りしめたレーザーガンの銃身と眼鏡のレンズに写るのは、今もなお水城さんを助けるために戦う和也の姿。私は、あんな人になりたい。望んでもいないスーパーパワーを与えられ、何一つ悪くなんかないのに人生を狂わされてもなお誰かの為に戦える人。いつだって真っ直ぐ、まるで漫画に出てくるような誰かを助けられるヒーローに。

「あんなの、ここで倒さないと…!!だけど、どうすれば…!!」

 落ち着け、私。ハリネズミを倒すには、レーザーガンの最大威力の一撃を正確に、弱点の脳天に打ち込むしかない。レーザー光線はイマジネーターの外殻を貫いてナノマシンを破壊出来るから、そうすれば変身が解除されて無力化できるはず。だけど、そのためにはハリネズミを正確に狙える位置に誘導しないと。

 今私の手元にあるのはレーザーガンとフライトスーツ。後は泥だらけの制服にひび割れた眼鏡と足元に転がっている小石や砂に草木くらいだ。これでどうやってハリネズミを誘導するのか。いや、それ以上にどうやって見つけるのか。

 そこまで考えたところで私はふと気づいた。ハリネズミは、さっき私の居場所を目視以外で突き止めてきていた。この森で、複数の目がある訳でもないのにどうやって。

「そう言えば…」

 ハリネズミは、確か私がこの足裏ジェットを使った直後に私の居場所を突きとめて来た。つまり、このジェットエンジンの音が聞こえる範囲には既に来ていて、その上でジェットエンジンの音を聞き分けて狙い撃っているのでは。

 これは一つの仮説。しかし、それを実証する時間も余裕も無い。そんなことをしていては狙われてしまい、今度こそアウト。ぶっつけ本番でやるしかない。

 私は一つ深呼吸すると、考えた作戦の準備に取り掛かった。



「あの小娘…どこに行った!?」

 基地から送られてくる監視カメラや振動計測器からの情報で、大体の居場所に見当はついてはいる。だが、この森に仕掛けられたカメラの数は少なくそれほど詳しい居所が分かる訳ではない。

「やはりこれか。さて、どこだ…?」

 ここに来て一番頼りになるのは、やはり集音器だ。あの小娘はジェットエンジンなんて煩い代物を足に取りつけている。森や山道に慣れていない女子高生がこの地形を足で動き回れるとは思えないし、そろそろ我慢が出来なくなってジェットエンジンに火を入れ始めた頃では無かろうか。

「むっ!?」

 そんなことを考えていると、ビンゴだった。ジェットエンジンの音が響き始め、ハリネズミ怪人は音のした方向を向く。するとジェットエンジンの音は急上昇をし始めていた。

「右足を怪我しているはずだが、まあ空が恋しくなったと言う所か!!逃がさんぞ!!この特大の針をくら―――」

 その時、一瞬の炸裂音と共に高出力のレーザー光線がハリネズミ怪人の脳天を撃ち抜いた。

「な、なぜ…?」

 どさりと音を立てて倒れ、体内のナノマシンが自壊を始めたことで人間の姿に戻った。

「やった…!!」

 その様子を見届けたヒカリはレーザーガンから手を放すと、何と下着姿で立ち上がった。

「もういいよ、戻って」

 眼鏡の縁の音声入力にそう言い、上がっていたフライトスーツが降りてくる。しかし、そのフライトスーツは何と無人だった。内部の機械仕掛けのパワードスーツが人に見えるようヒカリの体型を維持したまま上昇していたのだ。

「ううっ!やっぱりさぶいし、恥ずかしい…早く着替えよう」

 ヒカリの立てた作戦はこうだ。まず、フライトスーツと制服を脱いで自動操縦で上昇するよう指示を出す。そして重たくて持ち上げられないレーザーガンを木の根っこで固定し、この周囲を捜索しているハリネズミが照準に入るのを待つ。

 そしてハリネズミが狙える位置に来たところでフライトスーツを上昇させ、ハリネズミの注意を上空に逸らした隙を突いて脳天を狙撃したのだ。

「もうレーザーガンもフライトスーツも限界…でも、倒せた。私一人の力で」

 満足げに呟き、ヒカリはよろめきながらもう一度フライトスーツを着なおす。ジェットエンジンの燃料は残り少なく、レーザーガンは放熱限界を告げるアラートを鳴らしている。

「和也の援護、出来ないかも…」

 それでも、とヒカリはレーザーガンを持ち上げて歩き出す。その先には和也と水城さくらの戦いの舞台があった。

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