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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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決戦!新たな力!!

第二部最終決戦。

 激しい斬撃の嵐を躱し、俺は暴走を続ける水城さんに蹴りを叩き込む。大したダメージにはなっていないが、それでも動きを読まれていることに驚愕したように動きが鈍る水城さん。

「手の内は分かってんだよ。体のスペックだけ無理矢理引き上げたって、本人の技術が上がる訳じゃねーんだ。その点も新型の弱点って奴だ」

 むしろ、本人の技術や感覚がナノマシンで強化された体についていけずちぐはぐな動きになっている。ただただ肉体のスペックのみを追求した二流のやりそうなことだ。博士のナノマシンは、技術はともかく感覚や反射神経、そして脳のスペックの強化で様々な技術の習得速度を大幅に上げる機能がついていた。あのスイカジジイの研究なんざそんなもんだ。

 何度も攻撃を避けられ、苛立ったかのように水城さんは大振りな一撃を叩き込んでくる。それを予測していた俺は懐に潜り込み、そして渾身のボディーブローを叩き込む。

「あの爺さんの言ってた通りか。ちょっとでも苦戦すると大振りな動きに頼るって癖、直せって言われてたんだろ?」

「ヴヴ…!?」

「聞こえちゃいねえか。どんくらい叩きゃあ届くんだ?」

 動揺したように肩を震わせる水城さん。俺は拳を握りしめ、長野での経験を思い出す。

 カミキリ野郎を倒し、キャプテンZにコテンパンに叩きのめされた後、俺は長野で水城さんが通っていたと言う剣道場を訪れていた。ちょうど前日に師範がカミキリ野郎に襲われている所を変身して助けていた訳で面識が無い訳じゃないけれど、まあ向こうは俺が何者なのか知っているはずも無いので、あくまで初対面として事前のアポを取り取材に向かった。

 師範の神野龍一郎氏は、そりゃあまあ気難しそうな人だった。『JACK』に襲われ、その上で公安の人たちからの箝口令を敷かれた直後とあればアポすら断られかねない雰囲気だったが、水城さんがこっちでスランプに陥っている、と言うとすんなり取材許可が降りた。

「ええと、八時に約束した葦原和也ですけども…」

「知っている。それよりも、さくらが伸び悩んでいると言ったな。なぜだ」

「さあ。本人は、あくまでここでの異常な生活から解放されたことでビックリしただけだって言ってますけどもね。何か違和感がありまして。で、その理由を探そうとこの街に」

「…どういう関係だ?」

「は?」

「あの娘とどんな関係だと聞いている。同級生と聞いたが、そこまであの娘を気にかける理由は何だ」

「はぁ。ま、一応漫画家志望でして。その流れで学内の有名人に取材して…その中で、彼女のスランプを知って…」

 もの凄い圧力を受けて思わずビビりながら答えるも、師範は無言でこっちに竹刀を投げてよこして来た。結構なスピードで投げられ、咄嗟にキャッチするものの、常人だったら受け止められないだろ、と想い背筋が凍り付く。一体何をしようって言うんだ?

「それなりに心得はあるらしいな」

「え?」

「むん!!」

「ちょーっ!?」

 いきなり竹刀を振り下ろされ、俺はギリギリのタイミングで受け止める。しかし、殺気の籠った一撃だった。

「な、何するんだ!?」

「素性も知れん男子に、あの娘のことを話せると思うか」

「だから、同級生!!学生証も見せればいいのか!?」

「やかましい!!そう言う問題ではないわ!!」

 またしても振り下ろされた二発目を何とか避け、俺は咄嗟に竹刀を構える。師範は目を細めると、あっちも剣道の構えを取って俺を睨み据えて来た。

「剣で語れってか…ったく。俺は剣道部じゃないってのに…」

 まさか、娘に近づく男は誰であろうと許さん、みたいなノリじゃないことを祈りつつ、俺は水城さんから教わったすり足や構えで師範を睨み据える。師範もそれに同じ動きで答えるも、明らかにあっちの方が動きは良い。と言うか、このくらい動けるのなら昨日のカミキリ野郎も自力で撃退で来たんじゃないのかと思いたくもなる。

「せいっ!!」

「ぐっ!?」

 考え込んだ一瞬の隙を狙われ、強烈な胴を叩き込まれる。俺は咄嗟に竹刀で受け止める物の、今まで何度かやって来た水城さんとの稽古で次の動きを予測する。

「そのまま小手か…!?」

「良く知っている!!」

 竹刀をはじき返されるとほぼ同時に切り返し、そのまま無防備な小手を狙う技。俺は慌てて竹刀を放して避けると、空中で竹刀をキャッチして逆に師範に突きつける。

「悪いけど、剣道の稽古しにきたわけじゃねーんで」

 剣道のセオリーにない動きに動揺したのか、師範は反撃の一撃も防御の一手も打てず動きを止める。しかし、鋭い眼光で俺を睨み据えた。

「…戦い慣れているな。やはり、昨日の助け人はお前か」

「はあ?」

「誤魔化すな。あの娘に剣道を教わっているのだろう?あの怪物と戦った時、今のお前と全く同じ構えを取っていたぞ」

「…そーかい」

 何を言っても誤魔化しきれないと悟って頭をかく俺。その光景を見て師範も竹刀を下ろした。

「お前たちが何に巻き込まれているかは知らんし、聞かん。だが、お前がここに来たのはさくらを助けるために必要なことか?」

「そりゃあ。目の前で困ってる人を見捨てるのはヒーロー失格ですし」

「ヒーロー?ヒーロー…か。まあいい。聞かんと言ったのは私だ。それで、何を知りたい?」

 俺はそこで、師範に水城さんから聞いた話と、この街に来て知った話を語る。そして改めて彼女のスランプの原因を探していることを伝えた。

「やっぱり、彼女の中じゃもう家のことはとっくに振り切った話なんじゃないかって思うんですよね。ああもうしょうがない奴らって感じで…」

「それはそうだ。あの家族は確かに異常だが、あの娘は既に心は他人として扱っていた。だからこそ、私もあの娘がこの街を出る事に賛成した。あくまで学校を卒業するまでの間と語っていたが、恐らくもう帰っては来ないだろう」

「まんまと逃げおおせたって感じですよね。でも、だったらなぜ今さらスランプに?家のことが原因だって本人は思い込んでるみたいですけど…」

「ふむ…そうだな。心当たりがあるとすれば――――――」

 師範の言葉、そしてその後ある程度の稽古を付けて貰った上で、俺はこの場に戻って来た。

 そして今、水城さんの動きは完璧に読み切っている。本人がそのまま襲い掛かってきているのであれば緩急を付けたり、軽いフェイントを入れたりなどして動きを読ませないこともあっただろう。だが、ナノマシンはあくまで肉体のスペックと動きをトレースし、強化していくばかりで本人の意志や経験がなせる『技』を出すことが出来ない。

 あの師範から二時間ほど、水城さんの取るであろう動きをみっちりマスターして戻って来た今の俺なら、苦戦することもあり得ないのだ。

「おりゃあ!!」

 ボードブレードで水城さんの胴を受け止め、弾かれた所で切り返し小手に向かう切っ先をそのまま受け止める。

「何度同じ手を繰り返すんだよ。バレバレだってなんで分からない!!」

 この動き、師範ならこの後もう一発胴か面に叩き込んでくると言うのに。水城さんにはまだ無理なんだろうけども、それでも機械の猿真似には応用や発展なんて言葉は無い。

「再現度だけしか長所がないな!数世代前のマシーンにも負けてるぜ!!スイカジジイ!!」

 渾身のパンチが水城さんを吹き飛ばし、俺はトドメを刺そうと腰を落とす。そして膝に力を込めた所で、立ち上がった水城さんが刀を上段に構えた。

「…成程、面白いじゃないの」

 考えてみれば、今まで何度かやってきた水城さんとの稽古や師範との稽古で、一度もあの構えからの面を攻略できたことは無かったっけ。

「じゃあ俺も。こいつでぶっ倒しゃあ、少しは正気に戻るだろ」

 俺はボードブレードを真正面に構え、お互い変身したことで大幅に広くなった間合いの中で睨み合う。

 静寂が周囲を支配する。遠くに聞こえて来ていたレーザーガンの射撃音も先ほどから聞こえなくなっていて、ヒカリが勝ったのか、それとも追いつめられているのかも分からないまま時間だけが進む。

 だが、今はこの戦いに集中しなくちゃな。ヒカリは大丈夫だ。アイツを信じて、俺は水城さんを助けて見せる。

 そして暫くの静寂を乗り越え、久方ぶりに聞こえるレーザーガンの射撃音が響くと同時に二人共動く。

「ヴヴァアアアアアア!!」

 超高速で接近し、一目散に俺を頭から真っ二つに叩き斬ろうと襲い掛かって来る水城さん。それを見つめつつ、俺はその場を一歩たりとも動かずに迎え撃つ。

「腕全体じゃなくて持ち手と肩の力で…」

 前に言われた通り、俺はボードブレードをしっかりと握りしめる。

「はぁっ!!」

 そして全身全霊で相手を真正面から叩き斬る自分をイメージしてボードブレードを振り上げる。すると俺が変身しているコミックマンの肉体の色が赤く染まり、全体的にスマートな装甲に変わる。ボードブレードもまるで日本刀のような細長く鋭い形状に変わる。剣をメインに戦う新形態だ。

「形が変わったが…今決めた!!コミックマン・サムライモードだ!!」

 そして俺はボードブレードを全身全霊を込めて振り下ろす。水城さんも刀を振り下ろしながら走り抜け、俺たちはすれ違った一瞬だけの間に命のやり取りを交わし終えていた。

 戦場に静寂が戻る。俺と水城さんの二人だけが立ちすくみ、やがて真ん中で叩き斬られた水城さんの刀が地面に突き刺さり、そして役目を終えて消滅した。

「ヴヴァ…」

 ボードブレードの一閃の傷が開き、水城さんの体を支配する白鳥怪人が後ずさる。大ダメージを負ってナノマシンが一瞬だけとは言え弱体化したのを感じた俺は即座に彼女の元に駆け寄る。

「おーい。聞こえてるか?」

「ヴヴ…?」

 白鳥怪人は不思議そうに俺を見つめる。どうやら意識が戻りかけているらしい。

「色々と説明したいことはあるけどな。とりあえずこれだけは言っておきたいことがある。よく聞け」

 彼女の意識を完全に覚醒させるためにも、そして彼女のスランプを克服させるために。俺は彼女に届くようにと大声で叫んだ。

「いいか!!俺、第一印象からして、水城さんのこと結構美人だって思ってたぞ!!」

「ヴっ!?」

「剣道の腕だけじゃない!!水城さんは勉強だってそれなりに出来るし、素人の俺に剣道を教えられるくらいには人とのコミュニケーションも長けてる!だから…自分には剣道しか無いなんて思いこむな!!」

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