女子高生たちの日常?
長編第二回目終わり。次回からは短編メインで行きます。まあ、テコ入れですね。初代仮面ライダーだってテコ入れで変身ポーズが始まったし、ここいらで変身シーンを変えてみようかな。
「あの娘は剣道しか与えられなかった…それがどれほど不幸なことか。剣道にしか生きがいが無いと言うことは、もしも剣道を失えばどうなる?もしも、今まで何とか持ち合わせていた剣道への情熱を失えば…いや、剣道以外に情熱を向ける先を見つけてしまえば…」
長野の師範はそう語っていた。確かに、水城さんは剣道以外で自分を表現できる方法を教われなかった。ある程度それらの存在は知っていたとしても、あの街に居る限りそれは無関係な他人事だった。だが、俺達の街に来て、それらに自由に触れられる立場になってようやく気付いてしまったんだろう。
結局、自分には剣道しか無い。剣道以外で他人に認められることは無いと。
「水城さんの魅力は、剣道が強いってだけじゃない!!可能性なら、いくらだってある!!」
「ヴ…」
折れた刀を抑えて蹲る水城さん。ナノマシンの気配もどんどん薄れ、俺は声が届いたと思ってホッとした。だが、次の瞬間水城さんは再び刀を再生させて斬りかかって来た。
「ウルサイ…!!」
「ちょ!?」
「ワタシノナニガワカルッテイウノ!!」
めちゃくちゃに刀を振り回し、切っ先が俺の目と鼻の先をすり抜けていく。俺はバックステップで距離を取り、サムライモードの跳躍力と反射神経に驚愕しながらも水城さんを見る。彼女は怒りに任せて暴れまわっていた。
「精神錯乱とナノマシンの精神汚染が混じって暴走したか…!!本音が聞きたいとは思ってたけどさぁ!!」
日本刀モードのボードブレードを構えて接近し、手当たり次第に切り付けていく水城さんの刀を受け止める。
「落ち着けって!!ここで暴れたって、何にも完結しないだろ!!」
「黙ってよ!!」
白鳥怪人の顔部分が砕け、本来の彼女が一瞬だけ素顔を見せる。その目は正気を失いつつも、悲しみと戸惑いをハッキリと伝えていた。
「私、剣道しか出来ないのよ!?化粧とか、おしゃれとか…!!一度もしたことなかった!!」
「でも、やってみたかったんだろ!?チャンスじゃないのか!?」
水城さんの刀が俺の胴に迫り、俺はそれをあえて上に払う。二段構えを想定していた水城さんが動揺する隙を突いて、俺のボードブレードが逆に彼女の胴を横薙ぎに打つ。
「怖かったんだろ?色んなチャンスが一度に来て」
「そうよ…!!やってみたいことが多すぎて…なのにどれも出来ないのよ!!辛くて、苦しくて…!!でも、誰にも言えなくて…!!」
泣きじゃくる様に斬りかかって来る水城さん。お互いの刀がつばぜり合いを起こすも、サムライモードの俺の肉体は彼女の力がぶれた一瞬の間にボードブレードを引き抜き、そのまま刀ごと彼女の小手を斬り捨てる。
「誰も…!!手を差し伸べてくれなくて…!!」
崩れ落ちる水城さん。その悲痛な叫びを聞きつけたのか、森の奥からレーザーガンを抱えて戻って来たヒカリも足を止める。
「…だったら、俺達の出番じゃねーか。だろ?ヒカリ」
「あ…うん。そうだね。学校内のお悩み相談は、私達が滝先生からやる様に言われた正式な活動だもん。だから、水城さんも…」
「もう遅いのよ!!」
しかし彼女の怒りは収まらなかった。再び刀を再生し、俺に向かって走り出す。そして刀を振りかざし、俺の脳天目がけて振り下ろす。
「遅くないって!!」
左腕に戻ったボードブレードに手をかざし、居合のように引き抜くと同時に水城さんの改造された体を斬り捨てる。
「サムライモード…一刀両断居合斬り!!」
再びボードブレードを左腕に戻すと同時に白鳥怪人の体が爆発し、中で泣きじゃくっていた水城さんの体が戻って来る。駆けつけて来たヒカリと二人で抱き留め、脈拍を確認する。
「良かった、生きてる」
「そっか…」
ホッとして脱力する俺達。ようやく、生徒相談室の最初の依頼が達成されたんだと実感が湧いてきて、俺たちは思わずハイタッチした。
「流石だ!!葦原和也!!」
「キャプテンZ!!」
その時、聞き覚えのある声がこの山中に響くんじゃないかってくらいの大音量で俺に呼び掛けて来た。
「プロフェッサーDの新型ナノマシン実験は、ここに失敗を宣言する!!よって偉大なる大首領の命の元、このキャプテンZが『JACK』日本支部を統括する!!」
「ちっ…!!勝利の余韻にすら浸らせてくれねーのかよ!!」
「悪く思うな!少年!!そしてさらばだ!!この基地はただいまを持って放棄する!!ここから先、お前が我々を邪魔し続けると言うのなら、いつかどこかでまた会おう!!」
キャプテンZの演説と共に、『JACK』の基地のあった場所がド派手に爆発する。タイムラグがほとんどなかったが、一体どこから演説していたんだか。
「和也…」
「ああ。分かってる。奴らがまた俺達の日常を壊すって言うんなら、絶対に阻止してみせるさ。いつの日か、元の体に戻るその日まで…」
『対秘密テロ組織、通称JACKによる新型ナノマシン事件最終報告書。
まずICPOよりの情報提供により発覚した、新幹部・コードネーム『キャプテンZ』の動向が日本に向いたことによる…(中略)…今回の事件だが、我々特殊組織犯罪対策室は十分な成果を上げられたとは到底言い切れない。新開発のレーザーガンは対イマジネーター作戦においてその効力を発揮しえたが、一丁につき一発しか撃てない仕様と継戦能力の低さは如何ともし難い。
幸い民間協力者として名乗りを上げてくれた天龍寺グループはレーザーガンの改良に成功しており、それらの装備一式を警察庁に公開することに同意してくれた。グループによる実験では頭部を撃ち抜くことでイマジネーターの完全な無力化に成功したと言うことであり、警察庁及び警備部の早急な証人を求める。
しかし、その一方でコードネーム『コミックマン』の威力と成長は無視できないものがある。既に我々では対処不可能な新型イマジネーターを単独での制圧に成功しており、コードネーム『キャプテンZ』と交戦し、手傷を負わせて撤退にまで追い込んだ実力は我々の戦力では到底敵わない段階にまで達していると推測できる。が、現状彼が日本政府、及び国民に危害を加えた事実は無く、また監視を行っていた隊員からの報告にもある通り、本人は左右共に過激な思想は持っておらず、排除の是非を検討する段階には至らないものと判断します。
今後、より本格化していくであろうテログループ・JACKとの戦いを前に、警察庁警備部、または自衛隊の貴重な戦力を無駄に消耗しない為にも、コミックマンは今後も監視対象で止めておくべきと具申します。警察庁警備局・公安課・特殊組織犯罪対策室・第零係・三条慎吾』
「ね、もういい?」
「うーん。もうちょっと待ってて。肌すべすべだし、化粧のノリもいいから意外とやりがいがあってさ」
「うんうん。やっぱり、ルリちゃんに頼んで正解だった。私ひとりじゃここまでやれないよ…」
「なーにをおっしゃる!ヒカリさん!!この際一緒にやりましょう!!前々から実は狙っていたんです!!」
「え?な、なに?ちょっと!?」
「おーい。お前の彼女、また体を弄ばれそうになってるぞ」
「犯人はお前の彼女だろ。ったく。いくら何でもファッションショーやるからってこんな所に…」
広々とした建物からは想像もつかないほど狭い控室に押し込められ、俺と誠は今週のズバットを回し読みしながらげんなりした顔で呟いた。
あの事件から二日。匿名で送りつけられてきた新型ナノマシンのデータの入ったUSBメモリのお蔭で、ようやく学校に復帰した水城さんを連れて放課後にやって来たのは、何と街では有名なブランドショップの二階の撮影所だった。なんでもよくモデルとかが雑誌の撮影に来て、そのまま服や水着を買って帰る様な店なんだとか。
そんな高級店の二階を天龍寺グループの金で貸し切り(ヒカリが財布から出したブラックカードを見たときに誠とルリが固まったが)、おしゃれと化粧に初挑戦する水城さんをサポートしようと言う訳だ。
俺と誠は変身した水城さんを見てリアクションする審査員なんだが、着替えをチラリとも見せない為と言ってこんな狭苦しい控室に閉じ込められてズバットの回し読みを強いられているこの状況は何だか情けない。本当に俺ってヒーローなんだろうか。
「それにしても、どうしてスランプに急な隔離入院で話題になった女子剣道部のエースとお前らが知り合いで、それもこんなステージ開くことになったんだ?」
「そりゃ、水城さんが入院していた病院が天龍寺グループ直営の病院だったからな。その繋がりだ」
「いや、怪しいだろそれ。まあいいけどさ…お?」
顔をしかめながらズバットに目を戻す誠。真ん中辺りのページに次の読み切りの告知があって、それを読んで口を開けていた。
「気づいたか。とうとうこの俺の漫画がズバット本誌に…」
「お待たせ!!もう来ていいよ!!」
俺が長い事かけて隠して来たサプライズは、無遠慮を人の形に固めたんじゃないかって疑いたくなるようなくらいに間の悪いルリに邪魔され、誠はズバットを椅子において立ち上がった。
「…」
「ん?どうした?行こうぜ」
「…ああ。分かってる」
控室のドアを開け、満面の笑顔で待ち構えているルリと顔を合わせる。
「ふっふーん!!男子共!!待たせたな!!」
「いや、待ってねえし」
「…」
「あれ?テンション低い?まあいっか。それよりも、このカーテンの向こうに居るよ」
ルリは小さい胸を張ってカーテンを指差す。その向こうでは二人分の人影が、何やらもじもじしながらこちらの様子を伺っているのが見えた。
「くっくっく…!括目…!!特に和也は!!」
「あ、ちょっと!まだ心の準備が…!!」
「それー!!」
水城さんの声を無視し、ルリがカーテンを思いっきり開ける。するとそこには、それぞれ赤と青のお揃いのワンピースを着たヒカリと水城さんが恥ずかしそうに立っていた。
「ど、どう…?和也。似合ってる?」
「葦原君…その、ダメならダメって言ってくれても…」
「あ…い、いや。二人共似合ってると思うぞ。うん。化粧も薄いし、凄く…その、二人共可愛いと思う」
コメントを求められ、思わず口を突いて出る正直な感想。しかしその言葉を聞いて歓声を上げるルリと誠、そして顔を真っ赤にする二人を見てすぐに後悔することになったのだった。
感想待ってます。




