第29話 学習する戦争
歴史上の偉人たちと、名もなき人々が“記憶”を武器に戦う物語です。
※本作には戦闘・死亡・一部残酷な描写があります。
BELLUMが動いた。
巨体からは想像できない速さだった。
一歩踏み込んだだけで、地面が割れる。
二本の武器を構える姿は、宮本武蔵を思わせた。だが、右手から放たれたのは沖田総司のような刺突だった。
左手からは、武蔵の二刀を模した横薙ぎの一撃が続く。
二人の剣技を、一つの身体で使っていた。
「来る!」
朝倉湊が叫んだ。
最初に前へ出たのは、スパルタクス、ジャンヌ・ダルク、ニコラ・テスラだった。
本来なら、同じ側に立つ理由のない三人が、正面から迎え撃つ。
「正面は俺が行く!」
スパルタクスの身体を赤い光が包んだ。
――《NO MASTER》。
鎖を巻いた腕を、巨大な刺突へぶつける。
轟音が響いた。
身体が押された。それでも、スパルタクスは踏みとどまった。
「重いな!」
笑った直後、BELLUMの左の刃が迫った。
武蔵の二刀を模した軌道だった。最初の一撃を受けているスパルタクスには、対応できない。
その前へ、白い炎が広がった。
――《LA PUCELLE》。
ジャンヌが旗を構え、二撃目を受け止めた。
炎が弾ける。
「今です!」
テスラが装置の出力を上げた。
――《ALTERNATING CURRENT》。
青白い電流が、スパルタクスの鎖を走った。
「おい!」
「我慢しろ!」
「先に言え!」
「言えば避けるだろう!」
電流が鎖からBELLUMの腕へ伝わった。
金属部分が発光し、巨体が一瞬止まる。
「効いてる!」
湊が叫んだ。
「三秒!」
テスラの声に、スパルタクスが応じた。
「十分だ!」
剣を腕の継ぎ目へ叩き込む。
その横から、ジャンヌの白い炎が反撃に転じた。
BELLUMの胸へ、一撃、二撃と衝撃が重なる。
装甲が割れた。
三秒が過ぎた。
BELLUMが咆哮し、三人は一斉に後退した。
だが、胸部に無数の銃口が開く方が早かった。
「下がれ!」
湊が叫んだ直後、銃声が響いた。
ジャンヌが白い炎を広げ、弾丸を受け止める。
「くっ……!」
「ジャンヌ! それ以上受けないで!」
後ろからナイチンゲールが叫んだ。
「まだ!」
ジャンヌの横に、スパルタクスが立った。
「俺もいる!」
盾は持っていない。
だから剣で弾丸を叩いた。だが、すべては防ぎきれなかった。
一発が肩をかすめ、血が飛んだ。
「スパルタクス!」
「かすり傷だ!」
テスラが銃口の群れへ電気を走らせた。
何本かが火花を散らし、沈黙した。
「交代!」
ナポレオンの声で、三人が離れた。
次に走り出したのは、織田信長、ハリエット・タブマン、桐生大地だった。
BELLUMの戦闘学習率は、31%になっていた。
湊の顔が曇った。
「もう八上がった」
「想定より速い」
アラン・チューリングも数値を見ていた。
「何パーセントで完成?」
「分からない」
「100になったら?」
「こちらの戦闘パターンをほぼ再構成できる可能性が高い」
「最悪じゃん」
「だから100にしなければいい」
簡単に言ってくれる。
BELLUMの右腕に、赤い鎖が現れた。
スパルタクスの《NO MASTER》を思わせるものだった。
完全な能力の再現ではない。それでも、その鎖は信長へ向かって伸びた。
「もう使うか」
信長が笑い、刀で鎖を弾いた。
続いて、BELLUMの身体に白い炎が広がった。
ジャンヌの防御を模した膜だった。
「防御まで覚えた」
ハリエットが足を止めた。
「正面は駄目」
星のような淡い光が灯った。
――《NORTH STAR》。
BELLUMの左後方へ、敵の注意が薄い細い経路が示された。
「そこ」
「俺が行く!」
大地が動こうとすると、信長が止めた。
「待て」
「何です」
「俺が正面へ出る」
「でも」
「お前はそこへ行け」
大地はハリエットの示す道を見た。
信長は一人で正面へ進み、刀を肩へ預けた。
「こっちだ」
BELLUMが信長を認識し、攻撃を向けた。
その周囲に黒と金の領域が生まれる。
――《天下布武》。
湊は身構えた。
だが、今回は広範囲へ広がらなかった。
信長の周囲、十数メートルほどに絞られている。
その領域に触れたBELLUMの白い炎が揺らいだ。
「BELLUMにも効く!」
凛が声を上げた。
「完全ではない!」
チューリングが返した。
炎は弱まっていたが、消えてはいなかった。
危険度EXの統合体が生み出す模倣の防御は、出力も高かった。
「それでよい」
信長が、薄れた白い炎へ刀を叩き込んだ。
「破れぬなら」
もう一撃を加える。
「薄くすればよい」
その間に、ハリエットと大地が死角へ回った。
BELLUMは、まだ気づいていない。
大地は巨大な脚の背後へたどり着いた。
「ここか!」
両腕を回し、脚を抱え込む。
「何を」
湊が言いかけたところで、大地が地面を踏みしめた。
「動かなきゃいいなら、俺ごと止める!」
――《ANCHOR》。
大地の足元が光った。
その光が、抱え込んだBELLUMの脚にも及んだ。
完全に固定できたわけではない。
それでも、一瞬、脚が止まった。
――能力対象拡張兆候。
湊のスマートフォンに表示が現れた。
「大地さん!」
大地自身には、その表示を見ている余裕もなかった。
顔を真っ赤にして、巨大な脚を押さえている。
「長くは無理!」
「三秒」
ハリエットが言った。
「また三秒!?」
「十分」
正面の信長が、動きの止まったBELLUMを見た。
ハリエットが、信長の位置から死角へ入れる経路を示す。
信長は迷わず動いた。
白い炎の薄いところを抜け、脇腹へ刀を振るう。
装甲が裂けた。
一撃、二撃。
「無理!」
大地が限界を迎え、《ANCHOR》を解いた。
三人が離れる。
BELLUMが振り向いたときには、ハリエットが退避する経路を示していた。
三人とも、その道から脱出した。
戦闘学習率、36%。
「上がり幅が減った」
チューリングが言った。
「何で?」
「組み合わせが予測を外している」
「単体の能力は学べる」
横からテスラが言った。
チューリングが頷いた。
「でも、異なる能力同士の連携は毎回変えられる」
話を聞いていたナポレオンが、BELLUMを見た。
「なら続ける」
次は、上杉謙信、坂本龍馬、黒瀬凛だった。
湊は凛を見た。
「気をつけて」
「そっちも」
「俺はまだ行かない」
「だから言ってる」
凛は一瞬だけ湊を見て、それから走り出した。
謙信が前、龍馬が後ろ、凛がその間を進む。
BELLUMの胸から、戦闘記憶体が次々と現れた。
十体、二十体、三十体。
金色の線がBELLUMと兵士たちを結んでいく。
今度は、ナポレオンの部隊同期を模していた。
「軍団戦に変えた!」
湊が声を上げた。
「ならば」
謙信が刀を構えた。
――《毘沙門陣》。
凛と龍馬という守る相手を背に、戦闘判断と迎撃の精度が高まっていく。
危険度がSを示した。
一体目を斬り、二体目の攻撃を受け、三体目の位置をずらす。
その隙間へ、龍馬が銃を撃ち込んだ。
一発、二発。
狙っているのは敵の身体ではなかった。
武器を弾き、足元を撃ち、射線を崩している。
「倒さないの?」
凛が聞くと、龍馬が笑った。
「全部倒す必要ないき」
「じゃあ」
「通れりゃえい」
敵を倒すより、道を作る。
凛は理解して走った。
謙信が攻撃を防ぎ、龍馬が進路の邪魔をずらす。
その間を凛が通り抜けると、足元に白い光が走った。
――《ROUTE》。
BELLUMへ近づく一本の経路がつながった。
「できた!」
「ほいたら」
龍馬が拳銃をしまった。
「帰ろうか」
「攻撃しないの?」
「目的はそれではないらしい」
謙信が笑った。
三人が戻り、BELLUMが追おうとする。
だが、凛の作った経路は、次の組が使うために残されていた。
湊は目を見開いた。
「攻撃しなくてもいいんだ」
「ああ」
隣でナポレオンが答えた。
「さっきの組」
「攻撃そのものが目的ではない」
ナポレオンはBELLUMを見た。
「次の三人へ条件を残した」
「戦いを繋いでる」
「軍とはそういうものだ」
湊は少し考えた。
「一人一人が勝つ必要ない」
「ああ」
「次の人が勝てるようにすればいい」
ナポレオンが湊を見た。
「ようやく分かったか」
「ちょっと腹立つ言い方」
「気にするな」
「気にします」
次の組は、ナポレオン、チューリング、そして湊だった。
「え」
湊は自分を指した。
「もう?」
「行くぞ」
「心の準備」
「不要だ」
「時間は有限です」
チューリングまで言った。
「叡智軍まで冷たい」
戻ってきた凛が、湊の肩を軽く叩いた。
「行ってきて」
「簡単に言うな」
「さっき私にも言ったでしょ」
湊は息を吐き、スマートフォンを握った。
「分かった」
三人が前へ出た。
凛が残した白い経路が、BELLUMまで続いている。
ナポレオンを中央に、左へチューリング、右へ湊がついた。
「朝倉」
「何です」
「私が指示する」
「スパルタクスみたいに言った方がいい?」
「嫌なら従うな」
湊は少し笑った。
「それなら聞きます」
ナポレオンが剣を上げた。
「走れ」
三人は白い経路に沿って駆けた。
BELLUMが反応し、右腕から三連続の刺突を繰り出す。
沖田の動きを模した攻撃だった。
一撃目を、ナポレオンがかわした。
二撃目が迫っても、チューリングは動かなかった。
「チューリング!」
湊が叫んだ、その直後だった。
チューリングが半歩だけ動き、刺突が外れた。
「何で」
「パターンがあります」
三撃目が湊を狙った。
「右へ二歩!」
チューリングの声に、湊は右へ跳んだ。
刺突が左を通り抜けた。
「予測した?」
「学習しているのは向こうだけではありません」
チューリングが淡々と言った。
「私もです」
怖い。
だが、頼もしかった。
ナポレオンがBELLUMの正面へ出た。
巨大な武器へ剣を合わせる。
力で受け止めれば、人間の身体では耐えられない。
ナポレオンは刃を滑らせ、角度を変えて受け流した。
「朝倉!」
「はい!」
「三秒後、左肩!」
何をするのかは分からなかった。
それでも、湊はスマートフォンを向けた。
三、二、一。
BELLUMの左肩が開き、銃口が現れた。
「今!」
湊は武蔵と沖田の衝突を記録した動画を選んだ。
「《REPLAY》!」
キィンッ!
再現された衝撃で、銃口がわずかにずれた。
弾丸がナポレオンを外れる。
「次!」
「胸部中枢、0.6秒露出!」
チューリングが告げた。
湊は、すでに録画していた。
BELLUMの胸が開き、赤い中枢が一瞬見えた。
「撮った!」
「再生しろ!」
ナポレオンが言った。
「何を!?」
「今の0.6秒!」
湊は理解した。
胸部の装甲が開いた、その構造変化を使うのだ。
できるのか。
今撮った動画を選ぶ。
――対象記憶を認識。
――構造変化現象。
――再現可能時間、0.4秒。
「短い!」
「十分だ!」
「みんな三秒とか一秒とか十分って言いすぎ!」
湊は発動した。
「《REPLAY》!」
閉じていた胸部装甲に、記録したときの開いた状態が一瞬重なった。
再現できるのは、0.4秒だった。
「今!」
チューリングの声と同時に、ナポレオンが剣を投げた。
「え!?」
剣が一直線に胸へ飛び、露出した中枢に突き刺さった。
赤い光が弾ける。
BELLUMが咆哮した。
戦闘学習率は42%。
だが、別の表示が現れていた。
――CORE STRUCTURE DAMAGE.
11%。
「ダメージ入った!」
湊が叫んだ。
「剣を取れ!」
「俺が!?」
BELLUMの胸に刺さった剣を見て、湊は声を上げた。
「無理!」
「戻らないと次の攻撃」
チューリングが言った。
BELLUMの右腕が巨大な砲へ変わり始めていた。
「捨てましょう!」
ナポレオンは一瞬、剣を見た。
「仕方ない」
「歴史的な剣じゃないですよね!?」
「知らん」
「ならいい!」
三人は《ROUTE》の経路を引き返した。
背後で砲撃が炸裂した。
爆風にあおられ、湊の身体が浮いた。
「うわ!」
凛が《ROUTE》を使って駆け込み、湊が危険な場所へ落ちないよう、着地する方向をずらした。
湊は地面を転がった。
「痛っ!」
「生きてる?」
「多分!」
「なら大丈夫!」
「扱い雑になってない!?」
ナポレオンは普通に着地していた。
チューリングも転がったが、すぐに立ち上がった。
「俺だけ格好悪い」
『通常運転』
蓮を通して壮真の声が届いた。
「聞こえてるぞ!」
BELLUMの胸では、赤い光が揺らいでいた。
確かにダメージは入っている。
次に前へ出たのは、待機していた徳川家康、ナイチンゲール、レオナルド・ダ・ヴィンチだった。
湊は思わず聞いた。
「その三人で攻撃できる?」
「失礼だな」
家康が返した。
「私は戦闘要員ではありません」
ナイチンゲールが言った。
「僕もどちらかといえば違う」
ダ・ヴィンチも続けた。
「じゃあ何するんです?」
ダ・ヴィンチが笑った。
「戦わない」
BELLUMが砲を向けた。
家康が前へ出た。
だが、刀は抜かなかった。
「何を」
湊が見つめる中、家康の頭上に初めて能力反応が現れた。
――歴史記憶体《徳川家康》。
――遺想能力発動。
淡い金色の光が地面へ広がった。
《鳴くまで待とう》
『能力名それでいいの!?』
遠くの壮真が声を上げた。
家康が少し嫌そうな顔をした。
「私がつけた名ではない」
後世の人々が覚えた人物像が、能力の名になっているのだ。
――対象となる敵対行動に対し、即時反応を放棄。
――観測継続時間に応じ、回避・対処精度を累積。
「待つほど強くなる?」
「簡単に言えば」
家康が答えたところへ、BELLUMが砲撃を放った。
それでも家康は動かなかった。
「え?」
湊の声が漏れた。
砲弾が迫る。
その直前、家康は一歩だけ横へ動いた。
砲弾が外れた。
「遅っ!」
『いや避けてる!』
湊に、壮真が返した。
家康はBELLUMを見続けていた。
次は槍だった。
その突きも、ぎりぎりでかわした。
攻撃はしない。
一回、二回、三回と、相手の動きを観察し、避け続ける。
その間に、ダ・ヴィンチはBELLUMの各部を描いていた。
ナイチンゲールは負傷者のもとへ走り、ジャンヌ、スパルタクス、大地の傷を確かめ、処置を進める。
「この組、戦ってない」
湊が気づいた。
「だから学習率が上がらない」
テスラが言った。
42%の表示が止まっていた。
家康が攻撃を引き受け、ダ・ヴィンチが観察し、ナイチンゲールが負傷者を支える。
時間を使いながら、次に備えていた。
「そういう戦い方もあるのか」
凛が呟いた。
倒すことだけが戦いではない。
攻撃することだけが、役割でもなかった。
三十秒が過ぎた。
家康は、まだかわし続けていた。
BELLUMの攻撃が変わる。
フェイントを挟み、一撃、二撃と迫った。
そこで、家康が初めて刀を抜いた。
「待った」
一閃。
次の攻撃を始める、その直前の継ぎ目へ刀が入った。
大きな損傷ではなかった。
だが、BELLUMの腕が巨大砲へ変形する途中で止まった。
「今です」
家康が言った。
ダ・ヴィンチの絵が完成していた。
全員へ示されたBELLUMの身体に、赤い点が七つ描かれている。
「これ何?」
湊が聞いた。
「接続点」
「何の?」
「戦争記憶同士を結んでいる場所」
チューリングが、すぐに絵と数値を照合した。
「胸部中枢だけを攻撃しても再構成される」
ダ・ヴィンチが七つの点を示した。
「先にこれを切る」
「七つ全部?」
テスラが聞いた。
「ああ」
「ただし、同時ではない」
チューリングが言った。
全員が彼を見た。
「一つが切れれば、次の接続点が露出する」
ダ・ヴィンチが、順番に点を指した。
「右肩。左肩。右脚。左脚。腹部。胸脇。そして頭部」
「開いている時間は?」
ナポレオンが聞いた。
「正確にはまだ分からない。ただ、長くはない」
ナポレオンが十五人を見回した。
「七点」
「なら、人数は足りる」
スパルタクスが剣を構えた。
湊は、描かれた七つの点を見た。
「一つずつ繋ぐってことか」
「ああ。一つでも順序を外せば、連鎖が切れる可能性がある」
チューリングが答えた。
「なら次の一撃から始める」
ナポレオンが言った。
「誰がどこを」
信長の問いに、テスラが答えた。
「相性で決める」
「私は?」
ジャンヌが聞いた。
「防御」
ナポレオンが即答した。
ジャンヌが少し不満そうな顔をした。
「重要だ」
「その通りです」
ナイチンゲールも言った。
「分かっています」
配置は、すぐに決まった。
最初の右肩は、スパルタクス。
次の左肩を、上杉謙信。
右脚を信長、左脚を大地。
腹部はテスラ、胸脇は龍馬。
最後の頭部を、ナポレオンが狙う。
残る者たちは、防御、支援、経路の確保、解析を引き受ける。
「俺は?」
湊が聞いた。
「記録」
「また?」
「七点が順番に開く瞬間を全部撮れ」
「無茶!」
「できる」
ダ・ヴィンチが言った。
「何で」
彼は、自分の絵を湊へ渡した。
七つの接続点と、その位置が描かれている。
「画角を決めた」
「開く順序も予測する」
チューリングが続けた。
「私が撮れる場所まで道を作る」
凛も言った。
湊は三人を見た。
「……分かった」
ナポレオンが全員へ告げた。
「一度だけだ」
「命令か」
スパルタクスが聞いた。
「提案だ」
「なら乗る」
BELLUMが咆哮した。
42%で止まっていた学習が、再び動き出そうとしていた。
次の攻撃が来る。
ナポレオンは剣を失っていた。
代わりに、足元に落ちていた、王冠軍参加者のものらしい古い軍刀を拾い上げた。
「各自」
全員が構えた。
「違う戦い方をしろ」
「当たり前だ」
信長が笑った。
「合わせるぞ」
謙信が静かに言った。
「一回で壊す」
スパルタクスの鎖が鳴る。
「三秒作れ」
テスラの手元に電気が集まった。
「また三秒かよ!」
大地が《ANCHOR》を使った。
「長い三秒になりそうじゃのう」
龍馬が銃を構えた。
凛の《ROUTE》が、これまで通った経路を七つの位置へつなぐように示した。
湊はスマートフォンのカメラを構えた。
ジャンヌの白い炎が、全員を守るように広がった。
「必ず守ります」
「その後は私が治します」
ナイチンゲールが後方に立った。
「焦るな」
家康が刀を持ち直す。
ハリエットの《NORTH STAR》が、敵の注意が薄い場所を示した。
チューリングが数値を追っていた。
「開始まで」
ダ・ヴィンチが絵に最後の一本を引いた。
「三」
BELLUMが動いた。
「二」
七つの接続点が、赤く脈打つ。
最初の右肩で、光が強くなった。
「一」
ナポレオンが叫んだ。
「今だ!」
十五人が、一斉に走った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
『MEMORIA WAR ―記憶戦争―』は、“記憶”と“歴史”をテーマにした異能バトル長編です。
少しでも続きが気になった方は、ぜひ次話もお読みいただけるとうれしいです。




