第九十四話 初めて会う仲間たち
イベント当日まで、
あと一週間。
美咲は仕事を終えると、
事務所へ向かっていた。
今日は出演者全員が集まる、
事前説明会の日である。
会議室へ入ると、
すでに数人の出演者が談笑していた。
「初めまして」
美咲は軽く頭を下げる。
「初めまして!」
明るい声で返事をしたのは、
同年代くらいの女性配信者だった。
「私、七海です」
「高梨美咲です。よろしくお願いします」
握手を交わす。
その後も、
次々と出演者が集まってきた。
ゲーム配信者。
音楽配信者。
雑談配信を中心に活動する人。
活動内容はそれぞれ違う。
それでも、
「配信が好き」という共通点が、
自然と会話を生み出していた。
説明会が始まる。
運営スタッフが、
当日の流れを説明する。
集合時間。
控室の利用方法。
ステージへの移動。
写真撮影のルール。
一つずつ確認が進んでいく。
途中、
スタッフが質問を呼びかけた。
「ご不明な点はありますか?」
美咲は手を挙げた。
「来場者の皆さんとの交流時間についてですが、終了時間は決まっていますか?」
スタッフは資料を確認しながら答える。
「はい。安全管理のため、時間を区切ってご案内します」
「終了後はスタッフが誘導いたします」
「ありがとうございます」
佐藤が隣で静かに頷いた。
説明会終了後。
七海が話しかけてきた。
「質問、すごくしっかりしてましたね」
美咲は少し照れ笑いを浮かべる。
「以前はいろいろ確認不足だったことがあって……」
「今は確認するのが癖なんです」
七海は感心したように微笑んだ。
「それ、大事ですね」
「私も見習おうかな」
二人は自然に笑い合う。
その笑顔に、
美咲の緊張も少しずつほぐれていった。
帰宅後。
恒一が尋ねる。
「説明会どうだった?」
「楽しかった」
「出演者のみんなも優しくて」
「それは良かった」
美咲はバッグから資料を取り出す。
そこには、
出演者全員の集合写真が印刷されていた。
まだ今日撮影したばかりのものだ。
「なんだか文化祭の準備みたい」
その一言に、
恒一も笑った。
夜。
手帳を開く。
『出演者説明会。
皆さんと初対面。
安心して話せた。』
そして、
最後に書き添える。
『同じ夢を持つ人と出会うと、自分の世界も広がる。』
ページを閉じる。
イベントは、
もうすぐそこまで来ていた。
緊張はある。
それでも、
以前とは違う。
一人で向かう舞台ではない。
支えてくれる家族。
事務所の仲間。
そして、
新しく出会った仲間たち。
その存在を胸に、
美咲は本番の日へ向けて、
静かに歩みを進めていくのだった――。




