第九十三話 広がる輪
イベントへの参加が正式に決まった。
数日後。
事務所から発表の許可が下りる。
「いよいよですね」
佐藤が笑顔で資料を手渡した。
イベント名。
開催日時。
告知の開始日時。
細かなスケジュールが、
丁寧にまとめられている。
「今日の夜から告知できます」
「ありがとうございます」
美咲は深く頭を下げた。
帰宅後。
夕食を終え、
配信の準備を始める。
今日は少しだけ緊張していた。
配信開始。
「こんばんは!」
いつものように挨拶すると、
コメント欄が動き始める。
【こんばんは!】
【今日も来たよ!】
【待ってました!】
一通り雑談を終えたところで、
美咲は姿勢を正した。
「今日は皆さんにご報告があります」
コメント欄が少し静かになる。
「このたび、配信者イベントへ出演させていただくことになりました」
一瞬の間。
次の瞬間、
コメントが一気に流れ始める。
【おめでとう!!】
【すごい!】
【絶対応援する!】
【楽しみにしてる!】
画面いっぱいに祝福の言葉が並ぶ。
美咲は思わず笑顔になる。
「ありがとうございます」
「皆さんのおかげで、こういう機会をいただけました」
コメント欄には、
さらに温かい言葉が続く。
【体調第一でね】
【無理しないで】
【当日楽しんで!】
以前なら、
数字ばかり気になっていた。
視聴者数。
ギフト。
ランキング。
今は違う。
画面の向こうにいる、
一人ひとりの言葉が嬉しかった。
配信終了後。
スマートフォンを見ると、
イベント告知の投稿にも多くの反応が届いていた。
応援のメッセージ。
祝いのコメント。
その一つひとつへ、
感謝の気持ちが湧いてくる。
翌日。
会社。
昼休みに愛美が駆け寄ってきた。
「見たよ!」
「イベント決定、おめでとう!」
「ありがとう」
「職場のみんなも応援してたよ」
美咲は驚いた。
「本当に?」
「もちろん」
「頑張ってねって話してた」
少し照れくさかった。
でも、
素直に嬉しい。
夜。
手帳を開く。
今日は、
少し長めに書いた。
『イベント出演を正式発表。
たくさんのお祝いの言葉をいただく。
応援してくださる方の存在を改めて感じた。』
最後に、
ゆっくりと一行を書き加える。
『応援は、人を前へ進ませる力になる。』
ページを閉じる。
机の上には、
イベント資料と手帳が並んでいる。
一冊は未来の予定。
もう一冊は、
ここまで歩いてきた記録。
どちらも、
これからの自分には欠かせないものだった。
夏の夜風が、
開いた窓から静かに吹き込む。
美咲はその風を感じながら、
新しい挑戦の日を思い描いていた――。




