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アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で、「ただいま」があふれる居場所を育てています。~  作者: ふぁい(phi)
第五章 未来への扉

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第八十九話 新しい朝



 


七月のある朝。


 


 


カーテンの隙間から差し込む光で、


美咲は目を覚ました。


 


 


 


窓を開けると、


夏の空気が部屋へ流れ込んでくる。


 


 


 


「おはよう」


 


 


 


キッチンでは、


恒一がコーヒーを淹れていた。


 


 


 


「おはよう」


 


 


 


陽菜も眠そうな顔で起きてくる。


 


 


 


「ママ、おはよう!」


 


 


 


その元気な声に、


自然と笑みがこぼれた。


 


 


 


朝食を囲みながら、


何気ない話をする。


 


 


 


学校のこと。


 


 


仕事のこと。


 


 


週末の予定。


 


 


 


どれも、


特別ではない。


 


 


 


だからこそ、


大切だった。


 


 


 


出勤前。


 


 


玄関でバッグを手に取る。


 


 


 


その横には、


あの手帳が置かれていた。


 


 


 


美咲は少し考え、


バッグへ入れる。


 


 


 


毎日持ち歩く必要は、


もうないかもしれない。


 


 


 


それでも、


自然とそうしていた。


 


 


 


会社では、


愛美が笑顔で迎えてくれる。


 


 


 


「最近、表情が柔らかくなったね」


 


 


 


「そうかな?」


 


 


 


「うん。前よりよく笑ってる」


 


 


 


美咲は少し照れた。


 


 


 


自分では気付かなかった。


 


 


 


昼休み。


 


 


窓際の席で昼食を食べながら、


青空を見上げる。


 


 


 


以前なら、


周囲ばかり気にしていた。


 


 


 


今は違う。


 


 


 


景色を見る余裕が戻ってきた。


 


 


 


夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


「こんばんは!」


 


 


 


コメント欄が一斉に動き出す。


 


 


 


【こんばんは!】


 


 


 


【待ってました!】


 


 


 


【今日も楽しみ!】


 


 


 


美咲は笑顔で応える。


 


 


 


「今日もよろしくお願いします」


 


 


 


歌を歌い、


雑談をして、


ゲームを楽しむ。


 


 


 


いつもの時間。


 


 


 


配信終了後。


 


 


手帳を開く。


 


 


 


今日は何を書こうか、


少し考える。


 


 


 


異常はない。


 


 


 


困ったこともない。


 


 


 


それなら――。


 


 


 


『今日も楽しかった。』


 


 


 


それだけを書いた。


 


 


 


ページを閉じると、


自然と笑顔になる。


 


 


 


数か月前なら、


想像できなかった一文だった。


 


 


 


その頃。


 


 


事務所では、


佐藤が一冊のファイルを書庫へ戻していた。


 


 


 


背表紙には、


「高梨美咲 対応記録」


 


 


 


書庫へ並ぶファイルの中に、


静かに収まる。


 


 


 


佐藤は一瞬だけ立ち止まり、


小さくつぶやいた。


 


 


 


「これで終わりなら、それが一番ですね」


 


 


 


照明を消し、


部屋を出る。


 


 


 


書庫の扉が閉まる音が、


静かな廊下へ響いた。


 


 


 


そのファイルが再び開かれる日が来ないことを、


誰もが願っていた。


 


 


 


そして。


 


 


 


美咲の日常は、


また新しい朝へ向かって歩き始める。


 


 


 


恐怖を忘れたわけではない。


 


 


 


経験を消したわけでもない。


 


 


 


それでも。


 


 


 


笑顔で過ごせる今日を、


大切に積み重ねていこう。


 


 


 


そう思える自分が、


そこにいた――。

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