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アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第五章 未来への扉

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第八十八話 静かな結論



 


七月。


 


 


窓から差し込む朝の日差しが、


少しずつ強くなってきた。


 


 


 


美咲はいつものように出勤し、


仕事を終え、


夜には配信を行う。


 


 


 


変わらない日々。


 


 


 


その「変わらなさ」が、


今は何よりありがたかった。


 


 


 


週末。


 


 


事務所から定例ミーティングの連絡が入る。


 


 


 


応接室には、


佐藤と法務担当、


そしてセキュリティ担当がいた。


 


 


 


机の上には、


これまで見慣れたファイル。


 


 


 


「高梨美咲 対応記録」


 


 


 


厚みは、


最初の頃よりずっと増えている。


 


 


 


佐藤がゆっくりと口を開いた。


 


 


 


「今日は、一つの区切りについてお話しします」


 


 


 


美咲は姿勢を正した。


 


 


 


「現在まで、およそ一か月以上、新たな問題行動は確認されていません」


 


 


 


「郵送物なし」


 


 


 


「問題となるコメントなし」


 


 


 


「配信外で把握されていると考えられる発言もなし」


 


 


 


美咲は静かに頷く。


 


 


 


「そのため」


 


 


 


佐藤は資料を閉じた。


 


 


 


「事務所としては、監視体制を通常運用へ戻します」


 


 


 


美咲は少し目を見開く。


 


 


 


「通常……」


 


 


 


「はい」


 


 


 


「完全に終了と断定するわけではありません」


 


 


 


「ですが、特別対応を続ける状況ではなくなった、と判断しました」


 


 


 


部屋に、


穏やかな空気が流れる。


 


 


 


セキュリティ担当も笑顔を見せた。


 


 


 


「もちろん、何かあればすぐ対応します」


 


 


 


「記録も残ります」


 


 


 


「相談もいつでもできます」


 


 


 


「でも、今は日常を優先してください」


 


 


 


その言葉を聞いた瞬間。


 


 


 


美咲の胸の奥にあった、


固い何かが少しだけほどけた。


 


 


 


「ありがとうございました」


 


 


 


自然に、


その言葉が出た。


 


 


 


帰宅後。


 


 


恒一へ報告する。


 


 


 


「良かったな」


 


 


 


恒一は静かに笑う。


 


 


 


「本当に」


 


 


 


「でも、油断はしない」


 


 


 


「うん」


 


 


 


二人とも、


同じ気持ちだった。


 


 


 


夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


今日は特別な企画はない。


 


 


 


雑談だけ。


 


 


 


リスナーとの何気ない会話。


 


 


 


笑い声。


 


 


 


歌。


 


 


 


配信終了間際。


 


 


 


コメント欄に、


一つのメッセージが流れた。


 


 


 


【これからも応援しています】


 


 


 


初めて見る名前だった。


 


 


 


美咲は笑顔で答える。


 


 


 


「ありがとうございます」


 


 


 


その一言だけ。


 


 


 


配信終了。


 


 


 


管理画面を閉じる。


 


 


 


今日は、


手帳を書く前に窓を開けた。


 


 


 


夏の夜風が入ってくる。


 


 


 


机に向かい、


今日の日付を書く。


 


 


 


『事務所より通常運用へ移行との説明。


異常なし。』


 


 


 


少し考えてから、


最後の一行を書き加えた。


 


 


 


『記録を続けることは、不安のためではなく、安心のため。』


 


 


 


ページを閉じる。


 


 


 


最初は、


恐怖から始めた手帳だった。


 


 


 


今は違う。


 


 


 


落ち着いて毎日を過ごすための、


自分自身の記録になっていた。


 


 


 


本棚の隅には、


最初のページから埋まったその手帳が置かれている。


 


 


 


そこには、


恐怖だけではなく、


家族との笑顔も、


配信の楽しさも、


穏やかな日常も、


すべて記録されていた。


 


 


 


その一冊は、


美咲が前へ進んできた証でもあった――。

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