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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第五章 未来への扉

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第八十四話 ひとつの知らせ



 


月曜日の朝。


 


 


美咲はいつも通り出勤し、


デスクで仕事を始めていた。


 


 


 


午前十時過ぎ。


 


 


スマートフォンが静かに震える。


 


 


 


画面には、


佐藤の名前が表示されていた。


 


 


 


『お時間のある時にご連絡ください』


 


 


 


急を要する文面ではない。


 


 


 


それでも、


美咲は昼休みに折り返し電話をかけた。


 


 


 


「お疲れさまです」


 


 


 


『お疲れさまです』


 


 


 


佐藤の声は落ち着いていた。


 


 


 


『一つ、ご報告があります』


 


 


 


美咲は静かに耳を傾ける。


 


 


 


『例の二つのアカウントですが』


 


 


 


『ここ一週間、活動がかなり減っています』


 


 


 


「減っている……?」


 


 


 


『コメントはほとんどありません』


 


 


 


『ギフトも送られていません』


 


 


 


『視聴時間も短くなっています』


 


 


 


美咲は少し驚いた。


 


 


 


「何かあったんでしょうか」


 


 


 


『理由は分かりません』


 


 


 


『ですので、良い変化とも悪い変化とも判断できません』


 


 


 


いつものように、


慎重な言葉だった。


 


 


 


「分かりました」


 


 


 


『今まで通りでお願いします』


 


 


 


「はい」


 


 


 


電話を切る。


 


 


 


美咲は窓の外を見た。


 


 


 


終わるのだろうか。


 


 


 


そんな期待が、


ほんの少しだけ胸に浮かぶ。


 


 


 


でも、


すぐにその考えをしまい込んだ。


 


 


 


期待しすぎない。


 


 


 


それも大切だ。


 


 


 


夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


開始から三十分。


 


 


 


いつもの常連たちが集まる。


 


 


 


コメントも穏やか。


 


 


 


例の高額ギフターは現れない。


 


 


 


もう一つのアカウントも来ない。


 


 


 


美咲は表情を変えず、


配信を続けた。


 


 


 


歌を歌い、


雑談を楽しみ、


笑顔で締めくくる。


 


 


 


「今日もありがとうございました」


 


 


 


配信終了。


 


 


 


管理画面を見る。


 


 


 


本当に、


二つのアカウントは来ていなかった。


 


 


 


手帳を開く。


 


 


 


『対象アカウントの視聴なし。


その他、異常なし。』


 


 


 


短い記録だった。


 


 


 


翌日も。


 


 


 


その翌日も。


 


 


 


同じだった。


 


 


 


静かな時間が続く。


 


 


 


事務所でも、


新しい報告はない。


 


 


 


セキュリティ担当は、


定例の確認を続けるだけだった。


 


 


 


金曜日。


 


 


佐藤から短いメッセージが届く。


 


 


 


【現時点で特記事項はありません】


 


 


 


美咲はその文章を読み、


ゆっくり息をついた。


 


 


 


特記事項がない。


 


 


 


それは、


とても良い知らせだった。


 


 


 


その夜。


 


 


恒一がコーヒーを飲みながら言う。


 


 


 


「少し落ち着いたみたいだな」


 


 


 


美咲は微笑む。


 


 


 


「うん」


 


 


 


「まだ油断はしないけど」


 


 


 


「でも、前より安心して眠れそう」


 


 


 


恒一も笑った。


 


 


 


「それでいい」


 


 


 


リビングには、


穏やかな時間が流れる。


 


 


 


その頃。


 


 


事務所のサーバーでは、


監視システムが今日も静かに記録を続けていた。


 


 


 


「変化なし」


 


 


 


その表示が並ぶ画面を見ながら、


セキュリティ担当は小さくつぶやく。


 


 


 


「このまま終わってくれれば、一番なんですが……」


 


 


 


誰も、


未来は分からない。


 


 


 


だからこそ、


今日も記録を止めることはなかった――。

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