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アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第五章 未来への扉

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第八十三話 同じ場所



 


出版社から届いた見本誌。


 


 


リビングの本棚に並べられたそれを見るたび、


陽菜は嬉しそうに笑っていた。


 


 


 


その笑顔に、


美咲も少しだけ心が軽くなる。


 


 


 


穏やかな日曜日。


 


 


午後から配信があるため、


午前中に買い物を済ませることにした。


 


 


 


「スーパー寄ってくるね」


 


 


 


「気を付けて」


 


 


 


恒一に見送られ、


美咲は家を出た。


 


 


 


近所のスーパー。


 


 


 


野菜。


 


 


牛乳。


 


 


パン。


 


 


 


必要な物を買い物かごへ入れていく。


 


 


 


特に変わったことはない。


 


 


 


レジを済ませ、


店を出る。


 


 


 


その時だった。


 


 


 


入口近くで、


一人の男性とすれ違った。


 


 


 


帽子を深くかぶり、


マスクを着けている。


 


 


 


どこにでもいるような服装。


 


 


 


美咲は気にも留めず歩き出した。


 


 


 


しかし、


数歩進んだところで足が止まる。


 


 


 


――どこかで見た気がする。


 


 


 


振り返る。


 


 


 


男性は店内へ入っていくところだった。


 


 


 


後ろ姿だけでは分からない。


 


 


 


「……気のせいかな」


 


 


 


美咲はそのまま帰宅した。


 


 


 


午後。


 


 


配信開始。


 


 


 


今日は雑談中心。


 


 


 


買い物の話題になりかけたが、


美咲は商品の話だけに留めた。


 


 


 


「最近、野菜が高いですよね」


 


 


 


コメント欄が盛り上がる。


 


 


 


【分かる!】


 


 


 


【うちも同じ】


 


 


 


そんな中。


 


 


 


高額ギフターがコメントした。


 


 


 


【今日は人が多かったですね】


 


 


 


美咲の指先が止まる。


 


 


 


スーパーのことだろうか。


 


 


 


でも、


どこの店かは言っていない。


 


 


 


コメント欄では、


別の受け取り方をしていた。


 


 


 


【配信の話かな?】


 


 


 


【今日は視聴者多いね】


 


 


 


自然に話題が流れていく。


 


 


 


美咲も笑顔で頷いた。


 


 


 


「本当に今日はたくさん来てくれてますね」


 


 


 


それ以上は触れなかった。


 


 


 


配信終了後。


 


 


 


手帳を開く。


 


 


 


『スーパーで男性とすれ違う。


特徴不明。


関連不明。』


 


 


 


次の行。


 


 


 


『コメント「今日は人が多かったですね」。


意味は断定できない。』


 


 


 


最後に、


いつもの一言を書く。


 


 


 


『判断保留。』


 


 


 


翌日。


 


 


事務所。


 


 


 


佐藤は手帳の内容を確認し、


静かに頷いた。


 


 


 


「この書き方で十分です」


 


 


 


「無理に結び付けないことが大切です」


 


 


 


美咲は少し安心する。


 


 


 


「実は、一瞬だけ追いかけて確認しようかとも思ったんです」


 


 


 


佐藤は穏やかな表情で首を振った。


 


 


 


「行かなくて正解でした」


 


 


 


「もし本当に無関係の方なら、ご迷惑になります」


 


 


 


「もし関係があったとしても、一人で確認する必要はありません」


 


 


 


その言葉に、


美咲は深く頷いた。


 


 


 


冷静でいる。


 


 


 


その意味を、


少しずつ理解できるようになっていた。


 


 


 


その日の夕方。


 


 


セキュリティ担当から、


一枚の資料が追加された。


 


 


 


タイトルは、


「配信外で言及された可能性のある事項一覧」


 


 


 


ページの一番下。


 


 


 


新しい項目が加わる。


 


 


 


・「今日は人が多かったですね」


 


 


 


備考欄には、


短く書かれていた。


 


 


 


「現時点では解釈が複数あり、判断保留」


 


 


 


その一文は、


美咲が手帳に書き続けてきた言葉と、


まったく同じだった――。

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