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ママライバー美咲 ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第一章 はじまりの一歩

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第八話 勝ちたいなら学べ



イベント惨敗から一週間。


私の日常は少し変わっていた。


 


朝の通勤電車。


 


以前ならSNSを眺めていた。


 


今は人気ライバーの配信アーカイブを見ている。


 


昼休み。


 


コンビニのおにぎりを食べながら配信を見る。


 


帰宅後。


 


夕食の準備を恒一に任せることは変わらない。


 


でも食後の時間は違った。


 


配信。


 


配信研究。


 


配信。


 


研究。


 


そんな毎日だった。


 


 


「ママ最近、受験生みたい」


 


土曜日の朝。


 


陽菜が笑った。


 


 


「受験生?」


 


 


「ずっと勉強してるじゃん」


 


 


私は思わず苦笑した。


 


 


確かにそうかもしれない。


 


 


配信なんてスマホ一台でできる。


 


 


最初はそう思っていた。


 


 


でも違った。


 


 


上手い人には理由がある。


 


 


人気がある人には理由がある。


 


 


それが少しずつ見えてきていた。


 


 


 


その日の夜。


 


私はある人気ライバーの配信を見ていた。


 


 


同時視聴者数三百人。


 


 


私とは世界が違う。


 


 


 


「みんな昨日の続き聞く?」


 


 


ライバーが笑う。


 


 


コメント欄が一気に動く。


 


 


【待ってた】


 


 


【気になってた】


 


 


【早く】


 


 


 


私はそこで気付いた。


 


 


続きだ。


 


 


 


この人は昨日の配信の続きを話している。


 


 


だからリスナーが来る。


 


 


続きが気になるから。


 


 


 


ドラマみたいだ。


 


 


 


翌日。


 


私はタカさんにメッセージを送った。


 


 


【人気の人ってすごいですね】


 


 


返信はすぐ来た。


 


 


【人気には理由がある】


 


 


 


【やっぱり美人だからですか?】


 


 


 


少し意地悪な気持ちで送る。


 


 


すると。


 


 


【それだけなら続かない】


 


 


 


即答だった。


 


 


 


【リスナーが来る理由は四つ】


 


 


私は画面を見つめる。


 


 


 


【話を聞きたい】


 


【会話したい】


 


【応援したい】


 


【居場所が欲しい】


 


 


 


私は何度も読み返した。


 


 


 


居場所。


 


 


 


その言葉が妙に残った。


 


 


 


 


翌日の配信。


 


私は少しやり方を変えた。


 


 


いつもなら。


 


 


「こんばんは」


 


から始める。


 


 


 


今日は違う。


 


 


 


「今日、会社で大失敗しました」


 


 


コメント欄が一気に動いた。


 


 


【何した】


 


 


【気になる】


 


 


【話して】


 


 


 


私は驚いた。


 


 


 


みんな聞いてくれる。


 


 


 


話の続きに興味を持ってくれる。


 


 


 


その日の配信はいつもより盛り上がった。


 


 


 


配信終了後。


 


私は一人で小さくガッツポーズした。


 


 


 


 


そして。


 


 


バトル修行も始まった。


 


 


 


月曜日。


 


敗北。


 


 


火曜日。


 


敗北。


 


 


水曜日。


 


敗北。


 


 


木曜日。


 


敗北。


 


 


金曜日。


 


敗北。


 


 


 


五連敗。


 


 


 


翌週。


 


 


七連敗。


 


 


十連敗。


 


 


十二連敗。


 


 


 


私は笑うしかなかった。


 


 


 


「弱すぎる……」


 


 


 


深夜。


 


リビング。


 


 


私はソファに倒れ込んだ。


 


 


 


そこへ恒一がやってくる。


 


 


 


「また負けた?」


 


 


 


「また負けた」


 


 


 


恒一は少し笑った。


 


 


 


「最近ずっと負けてるな」


 


 


 


「ひどい」


 


 


 


「でも続いてる」


 


 


 


私は顔を上げた。


 


 


 


「え?」


 


 


 


恒一はコーヒーを飲みながら言う。


 


 


 


「本当に嫌なら辞めてるだろ」


 


 


 


その言葉に少し考える。


 


 


 


確かに。


 


 


悔しい。


 


 


でも辞めたいとは思わない。


 


 


 


むしろ。


 


 


もっと上手くなりたい。


 


 


 


その気持ちの方が強かった。


 


 


 


 


翌日のバトル。


 


 


また負けた。


 


 


 


配信終了後。


 


タカさんからコメントが届く。


 


 


 


【最近、勝つことばかり考えてない?】


 


 


 


私はドキッとした。


 


 


 


図星だった。


 


 


 


【負けたくないです】


 


 


 


正直に送る。


 


 


 


すると返信が来た。


 


 


 


【勝つ人は】


 


 


 


【勝ち方を考えてるんじゃない】


 


 


 


【楽しませ方を考えてる】


 


 


 


私は画面を見つめた。


 


 


 


楽しませ方。


 


 


 


そうか。


 


 


 


私はずっと数字ばかり見ていた。


 


 


順位。


 


フォロワー。


 


ポイント。


 


勝敗。


 


 


 


でも。


 


 


リスナーは数字を見に来るわけじゃない。


 


 


私に会いに来ている。


 


 


 


その当たり前のことを、


私は忘れていた。


 


 


 


その夜の配信。


 


 


私は宣言した。


 


 


 


「今日の目標は一つです」


 


 


コメント欄が反応する。


 


 


【何?】


 


 


【イベント?】


 


 


【バトル?】


 


 


 


私は首を振った。


 


 


 


「今日はみんなを笑わせます」


 


 


 


一瞬静かになる。


 


 


そして。


 


 


【何それ笑】


 


 


【頑張れ】


 


 


【期待してる】


 


 


 


コメント欄が明るくなる。


 


 


 


その日の配信は、


不思議なくらい楽しかった。


 


 


 


配信終了後。


 


フォロワー通知が鳴る。


 


 


一人。


 


 


また一人。


 


 


さらに一人。


 


 


 


大きな数字ではない。


 


 


 


でも。


 


 


イベント前より確実に増えていた。


 


 


 


私は静かに微笑む。


 


 


 


そのとき。


 


 


アプリに新しい通知が表示された。


 


 


 


『春の大型事務所イベント開催決定』


 


 


 


私は画面を見つめる。


 


 


 


前回は三十一位。


 


 


 


惨敗だった。


 


 


 


だが今は違う。


 


 


 


まだ弱い。


 


 


 


でも少しだけ成長している。


 


 


 


私はスマホを握りしめた。


 


 


 


「今度は……」


 


 


 


静かに呟く。


 


 


 


「今度は勝ちたい」


 


 


 


春のイベントまで、あと一か月だった。

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