表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第四章  守るということ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/231

第七十八話 増えていく記録



 


「駅前のカフェ、落ち着きますよね」


 


 


そのコメントから、


数日が過ぎた。


 


 


私は以前と変わらず、


仕事と配信を続けていた。


 


 


 


ただ一つ。


 


 


変わったことがある。


 


 


 


私は小さな手帳を持ち歩くようになった。


 


 


 


スマートフォンにも記録は残している。


 


 


 


でも、


気付いたことをその場で書けるように、


手帳も使い始めた。


 


 


 


 


日付。


 


 


時間。


 


 


場所。


 


 


出来事。


 


 


感じた違和感。


 


 


 


 


ほんの数行。


 


 


 


 


それでも、


後から見返すと役に立つ。


 


 


 


 


昼休み。


 


 


会社の休憩室。


 


 


 


 


愛美が私の手帳を見て言った。


 


 


 


 


「ずいぶん細かく書いてるね」


 


 


 


 


私は苦笑する。


 


 


 


 


「事務所にも勧められて」


 


 


 


 


愛美は真剣な表情になった。


 


 


 


 


「面倒でも続けた方がいいよ」


 


 


 


 


「人の記憶って、意外と曖昧だから」


 


 


 


 


私は頷いた。


 


 


 


 


確かに。


 


 


 


 


一週間前のことでも、


細かい時間までは思い出せない。


 


 


 


 


夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


 


今日は歌の日。


 


 


 


 


リクエストを受けながら、


ゆっくり歌っていく。


 


 


 


 


コメント欄は穏やかだった。


 


 


 


 


高額ギフター。


 


 


 


 


もう一つのアカウント。


 


 


 


 


どちらも視聴している。


 


 


 


 


歌が終わると、


高額ギフターがコメントした。


 


 


 


 


【今日の青い曲、好きです】


 


 


 


 


私は少し考える。


 


 


 


 


「ありがとうございます」


 


 


 


 


それだけ返す。


 


 


 


 


青。


 


 


 


 


その言葉に、


一瞬だけ青い傘を思い出した。


 


 


 


 


でも、


歌のタイトルにも「青」が入っていた。


 


 


 


 


考えすぎかもしれない。


 


 


 


 


私は気持ちを切り替える。


 


 


 


 


配信終了後。


 


 


 


 


手帳を開く。


 


 


 


 


今日のページ。


 


 


 


 


『歌配信。


「青い曲が好き」とコメントあり。


歌名に含まれるため判断保留。』


 


 


 


 


私はペンを置いた。


 


 


 


 


「判断保留」


 


 


 


 


最近、


よく使う言葉だった。


 


 


 


 


決めつけない。


 


 


 


 


でも、


忘れない。


 


 


 


 


その姿勢を大切にしていた。


 


 


 


 


翌日。


 


 


事務所。


 


 


 


 


佐藤へ手帳を見せる。


 


 


 


 


佐藤は静かにページをめくった。


 


 


 


 


「とても整理されていますね」


 


 


 


 


私は少し照れる。


 


 


 


 


「書くことで、自分も落ち着くんです」


 


 


 


 


佐藤は微笑んだ。


 


 


 


 


「それも大事なことです」


 


 


 


 


「不安だけで記録すると、どうしても思い込みが入りやすくなります」


 


 


 


 


「でも、高梨さんは『判断保留』と書いている」


 


 


 


 


「それが客観性につながっています」


 


 


 


 


私は少し安心した。


 


 


 


 


怖い。


 


 


 


 


その気持ちはある。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


感情だけでは動かない。


 


 


 


 


そう決めていた。


 


 


 


 


帰宅後。


 


 


 


 


陽菜が学校で描いた絵を見せてくれた。


 


 


 


 


家族三人が手をつないでいる。


 


 


 


 


大きな太陽。


 


 


 


 


青い空。


 


 


 


 


私は思わず笑顔になる。


 


 


 


 


「上手だね」


 


 


 


 


陽菜は得意そうに笑った。


 


 


 


 


その絵を見ながら、


私は心の中で思う。


 


 


 


 


この日常を守る。


 


 


 


 


そのためなら、


手間を惜しまない。


 


 


 


 


その頃。


 


 


 


 


事務所では、


セキュリティ担当が新しい資料をまとめていた。


 


 


 


 


タイトルは一行だけ。


 


 


 


 


「行動パターン比較(更新版)」


 


 


 


 


ページ数は、


前回よりさらに増えている。


 


 


 


 


少しずつ。


 


 


 


 


本当に少しずつ。


 


 


 


 


点だった違和感が、


一本の線になり始めていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ