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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第四章  守るということ

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第七十五話 白い封筒の中



 


白い封筒は、


そのまま事務所へ預けられた。


 


 


私は開けなかった。


 


 


 


恒一も触れなかった。


 


 


 


佐藤の指示どおり。


 


 


 


記録を残し、


保管した。


 


 


 


 


翌日。


 


 


私は仕事を終え、


事務所へ向かった。


 


 


 


 


会議室。


 


 


 


 


机の上には、


透明な保存袋へ入れられた白い封筒。


 


 


 


 


佐藤。


 


 


法務担当。


 


 


セキュリティ担当。


 


 


 


 


三人が待っていた。


 


 


 


 


「高梨さん」


 


 


 


 


「こちらで確認しました」


 


 


 


 


私は静かに頷く。


 


 


 


 


封筒の中には、


便箋が一枚だけ入っていた。


 


 


 


 


印刷された文章。


 


 


 


 


手書きではない。


 


 


 


 


佐藤が読み上げる。


 


 


 


 


いつも配信をありがとうございます。


無理をしないでください。


これからも応援しています。


 


 


 


 


それだけだった。


 


 


 


 


私は目を瞬かせる。


 


 


 


 


脅迫でもない。


 


 


 


 


悪口でもない。


 


 


 


 


普通の応援メッセージ。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


「問題は内容ではありません」


 


 


 


 


法務担当が静かに言う。


 


 


 


 


「届け方です」


 


 


 


 


私は頷く。


 


 


 


 


郵便ではない。


 


 


 


 


事務所経由でもない。


 


 


 


 


自宅の郵便受けへ直接。


 


 


 


 


そこが問題だった。


 


 


 


 


セキュリティ担当が続ける。


 


 


 


 


「現時点では差出人は分かりません」


 


 


 


 


「ただし、封筒や紙は保管します」


 


 


 


 


私は少しだけ肩の力を抜いた。


 


 


 


 


大きな危険ではなかった。


 


 


 


 


そう思いたかった。


 


 


 


 


しかし。


 


 


 


 


佐藤は真剣な表情のまま言う。


 


 


 


 


「今後は、ご自宅周辺でも少し警戒してください」


 


 


 


 


私は静かに返事をした。


 


 


 


 


帰宅。


 


 


 


 


恒一へ報告する。


 


 


 


 


「中身は普通だったよ」


 


 


 


 


恒一は少し安心したように笑う。


 


 


 


 


「それなら良かった」


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


次の言葉は同じだった。


 


 


 


 


「届け方は普通じゃない」


 


 


 


 


私は頷く。


 


 


 


 


それだけは変わらない。


 


 


 


 


夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


 


私は何も話さない。


 


 


 


 


封筒のことも。


 


 


 


 


事務所のことも。


 


 


 


 


リスナーを不安にさせたくなかった。


 


 


 


 


いつもの雑談。


 


 


 


 


歌。


 


 


 


 


笑顔。


 


 


 


 


コメント欄も穏やかだった。


 


 


 


 


例の高額ギフター。


 


 


 


 


新しいアカウント。


 


 


 


 


今日もいる。


 


 


 


 


コメントはない。


 


 


 


 


ただ、


最後まで見ている。


 


 


 


 


配信終了。


 


 


 


 


私は管理画面を閉じる。


 


 


 


 


その時だった。


 


 


 


 


事務所用の連絡アプリが鳴る。


 


 


 


 


佐藤から。


 


 


 


 


【追加で一つ分かりました】


 


 


 


 


私は画面を開く。


 


 


 


 


添付された写真。


 


 


 


 


封筒の拡大画像。


 


 


 


 


そこには、わたし以外の


小さな指紋が付着していたことが記されていた。


 


 


 


 


鮮明ではない。


 


 


 


 


本人を特定できるものでもない。


 


 


 


 


それでも。


 


 


 


 


「封筒は誰かが素手で投函した」


 


 


 


 


その事実だけは、


よりはっきりした。


 


 


 


 


私はスマホを置く。


 


 


 


 


リビングを見る。


 


 


 


 


陽菜は眠っている。


 


 


 


 


恒一も静かに本を読んでいた。


 


 


 


 


この日常を守りたい。


 


 


 


 


その思いが、


前よりずっと強くなっていた。


 


 


 


 


一方その頃。


 


 


 


 


マンションから少し離れた場所。


 


 


 


 


誰かが、


静かに建物を見上げていた。


 


 


 


 


街灯の明かりだけが、


その足元を照らしている。


 


 


 


 


顔は見えない。


 


 


 


 


名前も分からない。


 


 


 


 


ただ、


その人物は数秒だけ立ち止まり、


やがて夜の街へ溶け込むように歩き去っていった――。

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