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アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第四章  守るということ

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第七十話 声を掛けられた日



 


ルールを発表してから数日。


 


 


配信は穏やかだった。


 


 


 


コメント欄も落ち着いている。


 


 


 


高額ギフターも、


以前ほど目立たなくなった。


 


 


 


 


私は少し安心していた。


 


 


 


 


土曜日。


 


 


陽菜と二人で買い物へ出掛ける。


 


 


 


 


恒一は休日出勤。


 


 


 


 


近所のショッピングモール。


 


 


 


 


服を見て。


 


 


本屋へ寄って。


 


 


最後にフードコート。


 


 


 


 


陽菜はソフトクリームを嬉しそうに食べている。


 


 


 


 


その笑顔を見て、


私は自然と笑っていた。


 


 


 


 


こんな時間が、


一番好きだった。


 


 


 


 


「……あの」


 


 


 


 


突然、


後ろから声がした。


 


 


 


 


私は振り返る。


 


 


 


 


二十代くらいの男性。


 


 


 


 


少し緊張した様子。


 


 


 


 


「もしかして……


美咲さんですか?」


 


 


 


 


私は一瞬だけ固まる。


 


 


 


 


でも、


すぐ笑顔を作った。


 


 


 


 


「はい」


 


 


 


 


男性は嬉しそうに頭を下げる。


 


 


 


 


「いつも配信見てます!」


 


 


 


 


「応援してます!」


 


 


 


 


私はほっとした。


 


 


 


 


普通のファンだった。


 


 


 


 


「ありがとうございます」


 


 


 


 


軽く会釈する。


 


 


 


 


男性はそれ以上近付かない。


 


 


 


 


写真も求めない。


 


 


 


 


握手もしない。


 


 


 


 


「これからも頑張ってください!」


 


 


 


 


それだけ言って去っていった。


 


 


 


 


私は小さく息を吐く。


 


 


 


 


陽菜が見上げてきた。


 


 


 


 


「ママ、お友達?」


 


 


 


 


私は笑う。


 


 


 


 


「配信を見てくれてる人だよ」


 


 


 


 


「へぇー!」


 


 


 


 


陽菜は嬉しそうだった。


 


 


 


 


その出来事は、


本来なら嬉しいことだった。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


心のどこかで思ってしまう。


 


 


 


 


私だと分かるんだ。


 


 


 


 


配信の外でも。


 


 


 


 


夕方。


 


 


帰宅。


 


 


 


 


恒一へ話す。


 


 


 


 


今日の出来事。


 


 


 


 


男性の様子。


 


 


 


 


対応。


 


 


 


 


全部。


 


 


 


 


恒一は頷いた。


 


 


 


 


「ちゃんと距離を守ってくれたんだな」


 


 


 


 


「うん」


 


 


 


 


「それなら良かった」


 


 


 


 


私もそう思う。


 


 


 


 


悪い出来事ではない。


 


 


 


 


応援してくれる人。


 


 


 


 


その気持ちは本当に嬉しい。


 


 


 


 


夜。


 


 


事務所へも報告した。


 


 


 


 


佐藤から返信。


 


 


 


 


【適切な対応でした】


 


 


 


 


【今後も無理に長話はせず、安全を優先してください】


 


 


 


 


私は「ありがとうございます」と返す。


 


 


 


 


配信開始。


 


 


 


 


今日の出来事を少しだけ話した。


 


 


 


 


「今日、応援してますって声を掛けてもらいました」


 


 


 


 


コメント欄が盛り上がる。


 


 


 


 


【おお!】


 


 


 


 


【有名人!】


 


 


 


 


【嬉しいね】


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


「ちゃんと距離を守ってくださって、とても嬉しかったです」


 


 


 


 


「ありがとうございます」


 


 


 


 


その言葉に、


コメント欄も温かくなる。


 


 


 


 


【マナー大事】


 


 


 


 


【これからも応援します】


 


 


 


 


【無理しないでね】


 


 


 


 


私は安心した。


 


 


 


 


ファンは怖い存在ではない。


 


 


 


 


ほとんどの人は、


ちゃんと節度を守ってくれる。


 


 


 


 


その時。


 


 


 


 


例の高額ギフターがコメントした。


 


 


 


 


【今日は楽しそうでしたね】


 


 


 


 


私は礼を言う。


 


 


 


 


続いて。


 


 


 


 


【あのショッピングモール、休日は混みますよね】


 


 


 


 


私は笑顔のまま止まった。


 


 


 


 


その話は、


まだ配信でしかしていない。


 


 


 


 


けれど。


 


 


 


 


なぜだろう。


 


 


 


 


その一文だけで、


昼間の出来事が、


急に別の意味を持ち始めた。


 


 


 


 


あの男性は、


本当に偶然だったのか。


 


 


 


 


それとも――。


 


 


 


 


私は配信を続けながら、


机の下で静かにスマホの録画ボタンを押した。


 


 


 


 


何も起きないかもしれない。


 


 


 


 


それでも。


 


 


 


 


記録だけは、


残しておこうと思った――。

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