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アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第四章  守るということ

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第六十六話 守るためのルール



 


青い傘が届いてから三日。


 


 


事務所はすぐに動いた。


 


 


 


私は仕事を終え、


事務所へ向かっていた。


 


 


 


 


新人王以来、


久しぶりに訪れる会議室。


 


 


 


 


中には佐藤と、


マネージャー数名が座っていた。


 


 


 


 


「高梨さん、お疲れさまです」


 


 


 


 


私は頭を下げる。


 


 


 


 


席に着くと、


佐藤が口を開いた。


 


 


 


 


「まず結論からお伝えします」


 


 


 


 


部屋の空気が引き締まる。


 


 


 


 


「現時点では、警察へ相談する段階とまでは判断していません」


 


 


 


 


私は静かに頷いた。


 


 


 


 


予想していた答えだった。


 


 


 


 


「ですが」


 


 


 


 


佐藤は資料を私の前へ置く。


 


 


 


 


そこにはタイトル。


 


 


 


 


ライバー活動における安全対策


 


 


 


 


私は思わず息をのむ。


 


 


 


 


「高梨さんだけではありません」


 


 


 


 


「人気が出たライバーには、同じようなケースがあります」


 


 


 


 


私はページをめくる。


 


 


 


 


そこには細かく書かれていた。


 


 


 


 


・配信で現在地を話さない


・通勤ルートを固定しない


・背景から住所を特定される情報を映さない


・外出写真は時間をずらして投稿する


・心当たりのない荷物は記録する


・不審なDMには返信しない


 


 


 


 


私は一つずつ読む。


 


 


 


 


全部、


できているつもりだった。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


「気付かないうちに話してしまうこともあります」


 


 


 


 


佐藤が静かに言う。


 


 


 


 


「駅まで歩いています」


 


 


 


 


「仕事帰りです」


 


 


 


 


「今日は雨ですね」


 


 


 


 


「こういう何気ない一言も、積み重なると情報になります」


 


 


 


 


私は青い傘を思い出した。


 


 


 


 


確かに。


 


 


 


 


全部、


自分で話したことだった。


 


 


 


 


会議が終わる頃には、


私は少し考え方が変わっていた。


 


 


 


 


隠すのではない。


 


 


 


 


守る。


 


 


 


 


そのための工夫なのだ。


 


 


 


 


帰宅すると、


恒一が夕食を作っていた。


 


 


 


 


「どうだった?」


 


 


 


 


私は資料を見せる。


 


 


 


 


恒一は最後まで目を通し、


静かに笑った。


 


 


 


 


「会社の情報管理と同じだな」


 


 


 


 


「必要な情報だけ公開する」


 


 


 


 


私は頷く。


 


 


 


 


確かに似ている。


 


 


 


 


何でも話せば信頼されるわけじゃない。


 


 


 


 


守るべきものもある。


 


 


 


 


その夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


 


私は少しだけ話し方を変えた。


 


 


 


 


「今日は仕事が忙しかったです」


 


 


 


 


以前なら、


何時に終わったかまで話していた。


 


 


 


 


今日は話さない。


 


 


 


 


「帰りに買い物しました」


 


 


 


 


どこで買ったかは言わない。


 


 


 


 


小さな変化。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


自分では意識していた。


 


 


 


 


コメント欄はいつも通りだった。


 


 


 


 


常連が笑う。


 


 


 


 


初見さんが増える。


 


 


 


 


そして。


 


 


 


 


例の高額ギフター。


 


 


 


 


今日も来た。


 


 


 


 


ギフト。


 


 


 


 


コメント。


 


 


 


 


【今日は詳しく話さないんですね】


 


 


 


 


私は心臓が跳ねた。


 


 


 


 


気付いた。


 


 


 


 


たった一日の違いに。


 


 


 


 


私は笑顔を崩さない。


 


 


 


 


「想像にお任せします」


 


 


 


 


冗談っぽく返す。


 


 


 


 


コメント欄には笑いが流れる。


 


 


 


 


だが、


そのコメントには返事がなかった。


 


 


 


 


配信終了後。


 


 


 


 


私はスクリーンショットを保存する。


 


 


 


 


もう迷わない。


 


 


 


 


違和感は、


違和感のまま残しておく。


 


 


 


 


それが今の私にできることだった。


 


 


 


 


窓の外では、


静かに雨が降り始めていた。


 


 


 


 


玄関には、


あの日届いた青い折りたたみ傘が、


箱に入ったまま置かれている。


 


 


 


 


開くことは、


たぶんもうない。


 


 


 


 


高梨美咲は少しずつ学んでいた。


 


 


 


 


人気を守ることではない。


 


 


 


 


自分と、


大切な家族を守る方法を――。

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