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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第四章  守るということ

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第六十五話 置き配



 


新人王終了から三週間。


 


 


事務所へ相談してから数日。


 


 


 


配信は続けていた。


 


 


 


大きなトラブルはない。


 


 


 


DMも減った。


 


 


 


例の高額ギフターも、


以前より静かになっていた。


 


 


 


 


私は少し安心していた。


 


 


 


 


「考えすぎだったのかな」


 


 


 


 


そう思い始めていた。


 


 


 


 


土曜日の午後。


 


 


久しぶりの休日。


 


 


 


 


陽菜はリビングでお絵描き。


 


 


 


 


恒一は掃除機をかけている。


 


 


 


 


私は洗濯物を取り込んでいた。


 


 


 


 


インターホンが鳴る。


 


 


 


 


「宅配でーす」


 


 


 


 


玄関へ向かう。


 


 


 


 


しかし。


 


 


 


 


ドアを開けると誰もいない。


 


 


 


 


足元には小さな段ボールだけ。


 


 


 


 


置き配だった。


 


 


 


 


「頼んでたっけ?」


 


 


 


 


送り状を見る。


 


 


 


 


宛名は高梨美咲。


 


 


 


 


住所も合っている。


 


 


 


 


だが。


 


 


 


 


送り主の名前がない。


 


 


 


 


空欄だった。


 


 


 


 


私は首をかしげる。


 


 


 


 


ネット通販なら、


送り主やショップ名が書かれているはずだ。


 


 


 


 


恒一も近付いてくる。


 


 


 


 


「何だ?」


 


 


 


 


「分からない」


 


 


 


 


二人で箱を見る。


 


 


 


 


軽い。


 


 


 


 


振っても音はしない。


 


 


 


 


恒一が言う。


 


 


 


 


「開ける前に写真撮っとこう」


 


 


 


 


私は頷いた。


 


 


 


 


スマホで、


箱の表。


 


 


 


 


裏。


 


 


 


 


送り状。


 


 


 


 


全部撮影する。


 


 


 


 


ゆっくり開封。


 


 


 


 


中に入っていたのは。


 


 


 


 


青い折りたたみ傘だった。


 


 


 


 


私は息をのむ。


 


 


 


 


青。


 


 


 


 


あの日のDMが頭をよぎる。


 


 


 


 


【今日は青い傘でしたね】


 


 


 


 


箱の中には、


もう一枚。


 


 


 


 


白いメッセージカード。


 


 


 


 


文字は印刷。


 


 


 


 


手書きではない。


 


 


 


 


そこには一文だけ。


 


 


 


 


「雨の日も応援しています。」


 


 


 


 


私は動けなかった。


 


 


 


 


恒一がカードを見つめる。


 


 


 


 


表情が変わる。


 


 


 


 


「これは……」


 


 


 


 


最後まで言わない。


 


 


 


 


言わなくても分かった。


 


 


 


 


気味が悪い。


 


 


 


 


善意なのか。


 


 


 


 


悪意なのか。


 


 


 


 


判断できない。


 


 


 


 


その日の夕方。


 


 


私は事務所の佐藤へ連絡した。


 


 


 


 


写真も送る。


 


 


 


 


しばらくして電話。


 


 


 


 


『箱は保管してください』


 


 


 


 


「はい」


 


 


 


 


『カードも捨てないでください』


 


 


 


 


「はい」


 


 


 


 


『今後、受け取りに心当たりのない荷物は、できるだけ開封前に相談してください』


 


 


 


 


私は返事をした。


 


 


 


 


佐藤は最後に静かに言った。


 


 


 


 


『現時点では犯罪とは断定できません』


 


 


 


 


『ですが、記録を続けましょう』


 


 


 


 


夜。


 


 


配信。


 


 


 


 


私は何事もなかったように話す。


 


 


 


 


笑う。


 


 


 


 


雑談する。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


玄関に置かれた青い傘が、


頭から離れなかった。


 


 


 


 


配信終了間際。


 


 


 


 


例の高額ギフターが現れる。


 


 


 


 


ギフトを一つ投げる。


 


 


 


 


コメントは短かった。


 


 


 


 


【傘、役に立つといいですね】


 


 


 


 


私は画面を見つめた。


 


 


 


 


コメント欄は流れ続ける。


 


 


 


 


誰も気付かない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


私には分かった。


 


 


 


 


あの荷物。


 


 


 


 


あのDM。


 


 


 


 


全部。


 


 


 


 


繋がっている。


 


 


 


 


私は震える手で、


そのコメントもスクリーンショットに残した。


 


 


 


 


事務所へ送るために。


 


 


 


 


そして。


 


 


 


 


家族を守るために――。

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