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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第一章 はじまりの一歩

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第六話 初イベント



翌朝。


目が覚めて最初に見たのは、イベント告知ページだった。


 


『新人ライバー応援イベント』


 


期間七日間。


 


上位入賞者には公式バナー掲載。


 


さらに特別配信枠への出演権。


 


 


私は通勤電車の中で何度もページを読み返した。


 


 


正直に言うと。


 


 


少し期待していた。


 


 


フォロワーも増えてきた。


 


 


常連さんもいる。


 


 


バトルでは負けたけれど、


応援してくれる人もいる。


 


 


もしかしたら。


 


 


少しくらい戦えるんじゃないか。


 


 


そんな甘い考えがあった。


 


 


 


その日の夜。


 


配信でイベント参加を発表した。


 


 


「実はイベントに出ます」


 


 


コメント欄が動く。


 


 


【おお】


 


【新人イベント】


 


【頑張れ】


 


【出ると思ってた】


 


 


「勝てるかなあ……」


 


 


【甘い】


 


 


タカさんだった。


 


 


私は思わず笑った。


 


 


「いきなり厳しい」


 


 


【イベントはバトルと別物】


 


 


【本当に大変】


 


 


 


コメント欄も同意する。


 


 


【配信時間勝負】


 


 


【体力勝負】


 


 


【メンタル勝負】


 


 


 


私は少し不安になった。


 


 


そこまでなの?


 


 


 


イベント初日。


 


 


仕事を終え、


夕食を済ませ、


娘を寝かせ、


配信開始。


 


 


「イベント一日目です!」


 


 


【頑張れ】


 


 


【いこう】


 


 


【応援する】


 


 


 


スタートは悪くなかった。


 


 


ギフトも飛ぶ。


 


 


応援コメントも多い。


 


 


 


ランキングを開く。


 


 


十五位。


 


 


 


悪くない。


 


 


むしろ思ったより良い。


 


 


 


二日目。


 


 


十二位。


 


 


 


三日目。


 


 


十一位。


 


 


 


「あと少しでトップ10だ」


 


 


私は本気でそう思った。


 


 


 


そして四日目。


 


 


ランキングを見た私は固まった。


 


 


 


二十四位。


 


 


 


「え?」


 


 


思わず声が出た。


 


 


 


前日より下がっている。


 


 


大きく。


 


 


 


何度も更新する。


 


 


変わらない。


 


 


 


二十四位。


 


 


 


コメント欄もざわつく。


 


 


【えっ】


 


 


【落ちた?】


 


 


【みんな追い込み始まった】


 


 


 


私は初めて理解した。


 


 


イベントは最後が本番なのだと。


 


 


 


上位ライバーたちの配信時間を見る。


 


 


六時間。


 


 


八時間。


 


 


十時間。


 


 


 


私は絶句した。


 


 


 


そんなに配信できない。


 


 


仕事もある。


 


 


家庭もある。


 


 


娘もいる。


 


 


 


その日の夜。


 


 


配信を終えたあと、


私はソファでランキングを見つめていた。


 


 


「厳しいな……」


 


 


 


するとキッチンから恒一がやってきた。


 


 


温かいココアを差し出してくる。


 


 


「お疲れ」


 


 


「ありがとう」


 


 


 


少し沈黙。


 


 


 


「イベント?」


 


 


「うん」


 


 


 


恒一は私の隣に座った。


 


 


画面を見る。


 


 


「何位?」


 


 


「二十四位」


 


 


 


恒一は少し考えた。


 


 


 


「すごいじゃないか」


 


 


 


私は苦笑した。


 


 


「全然すごくないよ」


 


 


「そうか?」


 


 


 


私は首を振った。


 


 


 


上を見てしまった。


 


 


 


十位。


 


 


五位。


 


 


一位。


 


 


 


届かない。


 


 


全然届かない。


 


 


 


恒一は何も言わなかった。


 


 


ただ静かにココアを飲んでいた。


 


 


 


その優しさが、


少しだけ苦しかった。


 


 


 


五日目。


 


 


六日目。


 


 


順位は上がらない。


 


 


むしろ下がる。


 


 


 


私は焦り始めていた。


 


 


もっと配信しなきゃ。


 


 


もっと頑張らなきゃ。


 


 


もっと。


 


 


もっと。


 


 


 


しかし、


時間だけは増えない。


 


 


 


そして最終日。


 


 


結果発表。


 


 


 


ランキング。


 


 


三十一位。


 


 


 


私はしばらく画面を見つめていた。


 


 


 


三十一位。


 


 


 


入賞どころではない。


 


 


 


完敗だった。


 


 


 


配信を始めて二か月。


 


 


初めて本気で挑んだイベント。


 


 


結果は惨敗。


 


 


 


配信終了後。


 


 


スマホを伏せる。


 


 


 


悔しかった。


 


 


 


悔しい。


 


 


 


涙が出るほどではない。


 


 


でも、


心の奥が重い。


 


 


 


そのとき通知が鳴った。


 


 


タカさんからだった。


 


 


 


【イベントお疲れ様】


 


 


私は返信しない。


 


 


 


何を書けばいいか分からない。


 


 


 


すると続けてメッセージが来た。


 


 


 


【今の気持ち忘れないで】


 


 


 


私は画面を見つめる。


 


 


 


【ここから強くなる人と】


 


【辞める人に分かれる】


 


 


 


しばらく考えた。


 


 


 


そして。


 


 


ゆっくりと返信した。


 


 


 


【悔しいです】


 


 


 


すぐ既読が付く。


 


 


 


【なら大丈夫】


 


 


 


その短い言葉が、


妙に胸に残った。


 


 


 


そしてこの敗北が、


高梨美咲を本気のライバーへと変えていくことになる。

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