第五十四話 ママライバーの集まり
新人王二十日目。
順位四位。
残り四日。
優勝なんて考えていなかった。
でも。
気付けば届きそうな場所にいる。
だからこそ怖かった。
朝。
ランキングを確認する。
四位。
変わらない。
少し安心する。
最近は順位が落ちていないだけで安心するようになっていた。
昼休み。
スマホを見る。
メッセージが届いていた。
送り主は愛美。
【今日来れます?】
私は首を傾げる。
【どこに?】
すぐ返信。
【ママライバーのご飯会】
私は思わず笑った。
そんなものがあるのか。
さらにメッセージ。
【新人王参加者もいます】
【情報交換会みたいな感じです】
少し迷った。
夜は配信がある。
しかし。
たまには外に出るのもいいかもしれない。
私は参加することにした。
夕方。
都内のカフェレストラン。
集まったのは六人。
全員ママライバーだった。
年齢も様々。
二十代後半。
三十代。
四十代。
みんな配信をしている。
そして。
驚くほど普通だった。
「今日保育園迎え行ってから来た」
「うちも」
「夕飯だけ作って飛んできた」
そんな会話が飛び交う。
私は少し安心した。
同じだ。
悩みも。
生活も。
愛美が笑う。
「新人王四位ですよ」
私は慌てる。
「やめてください」
すると。
一人の女性が言った。
「すごいですよね」
「羨ましい」
その言葉に少し違和感を覚えた。
笑顔だった。
でも。
どこか硬い。
私は気にしないことにした。
話題は配信になる。
イベント。
ギフト。
バトル。
リスナー。
みんな苦労していた。
その中で。
一人のママライバーがため息をつく。
「最近リスナーが怖いんですよね」
空気が少し変わった。
私は思わず顔を上げる。
「怖い?」
「家の近所知ってたり」
「子供の学校聞いてきたり」
私は黙る。
愛美も表情を曇らせた。
「ありますね」
「あります」
他の人も頷く。
想像以上だった。
私だけじゃない。
みんな経験している。
その時。
別の女性が笑いながら言う。
「でも太客は大事ですよ」
周囲が苦笑する。
「まあね」
「生活かかってるし」
私は少し考えた。
太客。
大きなギフトを投げるリスナー。
確かにありがたい。
でも。
距離感は難しい。
昨夜の高額ギフターを思い出す。
少しだけ胸がざわついた。
二時間ほどで会は終わった。
帰り道。
愛美と駅まで歩く。
「どうでした?」
「楽しかったです」
本当にそうだった。
同じ悩みを持つ人がいる。
それだけで気持ちが軽くなる。
しかし。
愛美は少し真面目な顔になった。
「さっきの人」
私は首を傾げる。
「羨ましいって言った人」
ああ。
いた。
「どうかしました?」
愛美は少し言いづらそうにする。
「昔から順位にこだわる人なんです」
私は黙る。
愛美は続ける。
「悪い人じゃないです」
「でも少し気を付けた方がいいかも」
私は軽く頷いた。
そこまで深く考えなかった。
しかし。
後になって思う。
この日が、
あるトラブルの始まりだったのだと。
帰宅。
急いで配信準備。
開始すると、
いつものリスナーたちが待っていた。
【おかえり】
【待ってた】
【今日も行こう】
私は笑顔になる。
やっぱりここは落ち着く。
配信終了後。
順位更新。
四位。
↓
三位。
私は画面を見つめた。
全国三位。
現実感がなかった。
残り四日。
そして。
新人王の結末は、
誰にも予想できなくなっていた――。




