第五十話 トップ10の景色
新人王十六日目。
順位十一位。
あと一つ。
たった一つ。
昨日。
その壁に跳ね返された。
悔しかった。
でも不思議と引きずってはいなかった。
負けた理由が分かるからだ。
足りなかった。
ただそれだけ。
朝。
ランキングを開く。
十一位。
変わらない。
私はスマホを閉じた。
今日は仕事に集中しよう。
そう思った。
だが。
昼休み。
何気なくランキングを見る。
十位。
私は目を疑った。
更新する。
十位。
もう一度。
十位。
間違いない。
トップ10。
ついに入っていた。
思わず席を立ちそうになる。
周囲を見て慌てて座り直した。
理由は分からない。
上の人が落ちたのか。
夜中の集計か。
そんなことはどうでもよかった。
入った。
それだけで十分だった。
夜。
配信開始。
開始前からコメント欄はお祭り状態だった。
【トップ10!】
【おめでとう!】
【ついに来た!】
私は笑いながら手を振る。
「ありがとうございます」
「でも一日で落ちるかもしれません」
【縁起でもない】
【守れ】
【楽しめ】
最後のコメントに私は笑った。
もう完全にチームの合言葉だった。
配信が始まる。
今日は不思議と緊張していた。
トップ10。
そこには特別な響きがある。
今までは追いかける側だった。
今日からは追われる側だ。
その重みを感じていた。
開始一時間。
順位更新。
十位。
↓
九位。
コメント欄が爆発する。
【うおおお!】
【一桁!】
【やばい!】
私は思わず頭を抱えた。
意味が分からない。
二週間前。
コメントを読むだけで必死だった。
今は全国九位。
本当に現実なのだろうか。
その時だった。
通知。
大型バトル申請。
私は画面を見る。
そして固まった。
順位。
五位。
コメント欄も騒然となる。
【五位!?】
【上位勢】
【来た】
私は深呼吸した。
怖い。
でも。
少しワクワクもしていた。
ここまで来たからだ。
「受けます」
コメント欄が沸騰する。
【行こう!】
【楽しめ!】
【全国五位だ!】
バトル開始。
やはり強かった。
圧力が違う。
応援の熱量が違う。
それでも。
以前ほど差は開かない。
食らいつけている。
成長している。
それが嬉しかった。
残り一分。
差はまだある。
勝つのは難しい。
でも。
私は最後まで笑っていた。
楽しい。
純粋に。
この舞台が。
結果。
敗北。
しかし。
相手ライバーは笑顔だった。
『強くなりましたね』
私は驚く。
「初対戦ですよ?」
相手は笑った。
『新人王ランキングで見てますから』
コメント欄が盛り上がる。
【認知されてる】
【すげえ】
【本物だ】
私は少し照れた。
その一言が嬉しかった。
配信終了後。
順位更新。
九位。
↓
八位。
私はしばらく画面を見つめた。
八位。
トップ10どころじゃない。
トップ8だ。
その時。
スマホが震える。
神崎レナからDM。
短い文章だった。
【ようこそ】
私は首を傾げる。
すると続きが届く。
【上位の景色へ】
私はしばらく画面を見つめた。
上位の景色。
確かに。
見えるものが変わり始めている。
応援。
期待。
プレッシャー。
責任。
全部が大きくなっている。
新人王十六日目終了。
順位八位。
そして高梨美咲は、
新たなステージへ足を踏み入れたのだった――。




