第四十九話 トップ10への挑戦
新人王十五日目。
順位十三位。
あと三つ。
たった三つ。
でも。
その三つが遠い。
朝。
ランキングを確認した私は思わず息を呑んだ。
十一位。
一晩で二つ上がっている。
何度も画面を更新する。
間違いない。
十一位。
トップ10が目の前だった。
「どうした?」
朝食を作っていた恒一が聞く。
「十一位」
恒一の手が止まる。
「すごいな」
「まだ入ってない」
「でも近い」
私は頷いた。
近い。
だからこそ怖かった。
届きそうで届かない場所。
そこが一番苦しい。
昼休み。
ランキングを見る。
十一位。
↓
十二位。
すぐ抜かれる。
新人王は本当に残酷だ。
少し気を抜けば順位が変わる。
夜。
配信開始。
開始直後からコメント欄が盛り上がる。
【トップ10見えてる】
【今日行ける】
【頑張れ】
私は苦笑した。
「みんなの方が期待してる」
【当然】
【夢見させろ】
【行こう】
その言葉に笑ってしまう。
夢。
たしかにそうだ。
私一人の挑戦じゃない。
みんなと一緒に登っている。
その時。
通知が鳴る。
バトル申請。
相手順位。
十位。
コメント欄が大騒ぎになる。
【来た!】
【トップ10】
【直接対決】
私は画面を見つめた。
運命みたいだった。
あと一歩。
その壁が目の前にいる。
受けるか?
そんなことを考えるまでもなかった。
「受けます」
コメント欄が沸騰する。
【行けええ!】
【楽しめ!】
【勝負!】
バトル開始。
相手は男性ライバー。
落ち着いている。
強い。
明らかに強い。
序盤から押される。
点差が開く。
コメント欄も焦り始める。
【まだある】
【諦めるな】
【最後まで】
私は深呼吸した。
焦るな。
楽しめ。
タカさんの言葉。
レナの言葉。
恒一の言葉。
全部思い出す。
私は笑った。
「皆さん」
コメント欄が反応する。
「ここまで来れたの、みんなのおかげです」
一瞬静かになる。
そして。
大量のコメント。
【泣かせるな】
【まだ終わってない】
【勝つぞ】
【行こう!】
残り一分。
大きなギフトが飛ぶ。
続いてもう一つ。
さらにもう一つ。
コメント欄が熱狂する。
【押せええ!】
【逆転!】
【あと少し!】
私は画面を見つめた。
心臓が痛いくらい速い。
残り十秒。
点差はほぼない。
カウントダウン。
5
4
3
2
1
0。
終了。
私は結果画面を見る。
そして。
言葉を失った。
負けていた。
本当にわずか。
数千ポイント差。
あと少しだった。
コメント欄が悔しさで埋まる。
【惜しい】
【悔しい】
【あと一歩】
私はゆっくり息を吐いた。
悔しい。
ものすごく悔しい。
でも。
涙は出なかった。
前なら泣いていた。
今は違う。
届かなかった。
それだけだ。
次に届けばいい。
配信終了後。
順位更新。
十一位。
↓
十一位。
変わらない。
トップ10には届かなかった。
私はベッドに座り込む。
その時。
スマホが震えた。
神崎レナからDM。
【惜しかったですね】
続いて。
【でも今日の配信、すごく良かったです】
私は苦笑する。
慰められている。
するともう一通。
【トップ10は逃げません】
私は思わず笑った。
確かに。
逃げない。
明日もある。
新人王十五日目終了。
順位十一位。
あと一歩。
あと一歩届かなかったその悔しさが、
高梨美咲をさらに強くしていくのだった――。




