第四十三話 トップ20の扉
新人王九日目。
順位二十一位。
あと一つ。
あと一つ上がればトップ20。
たった一つ。
でも。
その一つが遠かった。
朝。
通勤電車の中でランキングを見る。
二十二位。
私は苦笑した。
昨夜の二十一位は一瞬だったらしい。
新人王は甘くない。
誰かが上がれば、
誰かが下がる。
当たり前の話だった。
昼休み。
スマホを確認する。
二十三位。
さらに下がっている。
胸の奥がざわついた。
トップ20が見えた途端、
今度は焦りが生まれる。
人間は欲張りだ。
トップ50の時も。
トップ30の時も。
同じだった。
到達すると、
次を目指してしまう。
夜。
配信開始。
開始直後からコメントが流れる。
【焦るな】
【まだある】
【今日も楽しめ】
私は思わず笑った。
最近、
みんな私の心を読んでいる気がする。
「焦ってないですよ」
【嘘】
【顔に出てる】
【分かりやすい】
即座に否定された。
私は降参する。
「少しだけ焦ってます」
コメント欄が笑いで埋まる。
その空気に救われた。
一人で抱えると苦しい。
でも。
誰かと共有すると軽くなる。
開始一時間。
順位は二十二位。
変わらない。
二時間。
二十一位。
少し上がる。
コメント欄がざわつく。
【あと一つ】
【見えてる】
【行ける】
私の心臓も忙しくなる。
その時。
通知が鳴った。
バトル申請。
相手を見る。
順位二十位。
私は思わず声を上げた。
「嘘でしょ」
コメント欄が爆発する。
【きたあああ】
【直接対決】
【運命】
本当にそうだった。
トップ20の扉。
その相手が目の前にいる。
私は画面を見つめる。
受けるか。
断るか。
数秒考える。
そして笑った。
答えは決まっていた。
「受けます」
コメント欄が一気に盛り上がる。
【行こう!】
【楽しめ!】
【勝負だ!】
バトル開始。
開始直後から激戦だった。
互角。
本当に互角。
点差が離れない。
追いつく。
抜かれる。
また追いつく。
五分間が異常に長く感じた。
コメント欄も熱狂している。
【あと少し!】
【押せ!】
【まだある!】
残り三十秒。
ほぼ同点。
私は息を呑んだ。
すると。
大きなギフトが飛ぶ。
続けてもう一つ。
コメント欄が沸騰する。
【うおおお!】
【きた!】
【最後!】
カウントダウン。
3
2
1
0。
終了。
私は結果画面を見る。
そして。
固まった。
勝っていた。
本当に。
わずかな差で。
コメント欄が爆発する。
【勝ったあああ!】
【トップ20!】
【おめでとう!】
私は両手で顔を覆った。
涙が出そうだった。
嬉しい。
ただただ嬉しい。
配信を始めた頃。
コメントを読むだけで精一杯だった。
事務所イベントで負けた。
悔しかった。
そこから少しずつ成長して。
今。
全国二十位。
夢みたいだった。
順位更新。
二十一位。
↓
十九位。
トップ20入り。
コメント欄は祭り状態だった。
【すごすぎる】
【ママライバー最強】
【まだ上がる】
私は首を振る。
「まだまだです」
でも。
笑顔は隠せなかった。
配信終了後。
スマホが震える。
愛美からDM。
【おめでとう】
短い文章。
でも。
そこに悔しさも優しさも混じっているのが分かった。
私は返信する。
【ありがとうございます】
そして続けた。
【愛美さんも来ますよ】
少しして返信。
【追い抜きます】
私は笑った。
それでいい。
ライバルなんだから。
新人王九日目終了。
順位十九位。
ついに開いた。
トップ20への扉が――。




