第四十一話 守る戦い
新人王七日目。
トップ30入り。
昨日までは目標だった。
でも。
入ってみて分かった。
ここはゴールじゃない。
むしろ。
ここからが本番だった。
朝。
通勤電車の中でランキングを見る。
二十九位。
私は少し笑う。
まだ残っている。
だが。
次の瞬間。
画面を更新した。
二十九位。
↓
三十位。
さらに数分後。
三十一位。
私は思わず顔をしかめた。
落ちた。
いや。
抜かれた。
ほんの少しの差。
でも順位は順位だ。
会社に着く頃には三十二位になっていた。
昨日まで見えていたトップ30。
もう圏外だった。
昼休み。
スマホを見る。
三十三位。
私はため息をつく。
新人王は順位がすべてじゃない。
頭では分かっている。
でも。
気になる。
どうしても。
夜。
配信開始。
開始直後からコメントが流れる。
【気にするな】
【まだ一週間】
【ここから】
みんな順位を見ていた。
私は苦笑した。
「皆さんの方が見てますね」
【当然】
【見守る係】
少し気が楽になる。
しかし。
今日は違った。
順位を上げるだけじゃない。
落ちないことも大事。
初めての感覚だった。
守る戦い。
上へ行く時は夢中だった。
でも。
維持するのは苦しい。
常に追われる。
そんな感覚だった。
配信開始から一時間。
順位。
三十三位。
↓
三十一位。
少し戻す。
コメント欄が盛り上がる。
【よし】
【戻った】
【あと少し】
私は笑顔で返す。
でも内心は余裕がなかった。
その時。
通知が鳴る。
バトル申請。
相手を見る。
三十位。
ほぼ隣。
コメント欄がざわつく。
【直接対決】
【熱い】
【受ける?】
私は画面を見つめた。
勝てば。
順位が近付く。
負ければ。
差が開く。
以前なら迷わなかった。
でも今は違う。
怖い。
負けるのが。
順位が落ちるのが。
その時。
コメント欄に流れた。
【楽しめ】
タカさんだった。
私は思わず笑う。
本当にタイミングが良い。
「受けます」
ボタンを押した。
バトル開始。
序盤から接戦だった。
点差が開かない。
追いつく。
追い越される。
また追いつく。
心臓が忙しい。
コメント欄も熱くなる。
【行け!】
【まだある!】
【最後!】
残り三十秒。
ほぼ互角。
私は気付いていた。
怖さが消えている。
楽しい。
純粋に。
バトルが。
カウントダウン。
3
2
1
0。
終了。
結果。
勝利。
わずか数千ポイント差。
本当にギリギリだった。
コメント欄が爆発する。
【勝った!】
【熱すぎる!】
【ナイス!】
私は思わず机を叩きそうになる。
嬉しかった。
勝ったことも。
でもそれ以上に。
逃げなかったことが。
嬉しかった。
配信終了。
順位更新。
三十一位。
↓
二十七位。
再びトップ30。
しかも前より上。
私は静かに息を吐いた。
まだ七日目。
新人王は長い。
でも。
少しずつ分かってきた。
順位を追うだけじゃない。
自分と戦うイベントなんだ。
恐怖。
不安。
焦り。
それを乗り越えた人だけが、
上へ行ける。
その夜。
ベッドに入る直前。
愛美からDMが届いた。
【今日のバトル見ました】
続いて。
【悔しいけど格好良かったです】
私は少し照れた。
そして返信する。
【愛美さんも追いついてきてますよ】
ランキングを見る。
桜井愛美。
三十三位。
差はわずかだった。
新人王七日目終了。
順位二十七位。
そして。
上位勢との距離は、
少しずつ縮まり始めていた――。




