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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第二章 広がる世界

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第三十八話 ベテランリスナーの授業



 


新人王三日目。


 


 


昨夜の敗北は悔しかった。


 


 


かなり悔しかった。


 


 


 


でも。


 


 


不思議と引きずってはいなかった。


 


 


 


むしろ。


 


 


やることが見えた気がしていた。


 


 


 


 


朝。


 


 


通勤電車の中。


 


 


私は昨夜のバトル配信のアーカイブを見返していた。


 


 


 


自分の声。


 


 


自分の表情。


 


 


自分のリアクション。


 


 


 


見れば見るほど反省点が出てくる。


 


 


 


 


「下手だなぁ……」


 


 


 


思わず呟いた。


 


 


 


 


ギフトが飛んでも反応が遅い。


 


 


 


コメントを拾うのに集中しすぎる。


 


 


 


バトル中なのに雑談ペース。


 


 


 


 


負けるべくして負けた。


 


 


 


 


昼休み。


 


 


スマホにDMが届く。


 


 


 


送り主はタカさん。


 


 


 


 


【昨日のバトル見返した?】


 


 


 


 


私は少し驚いた。


 


 


 


 


【今見てました】


 


 


 


返信する。


 


 


 


 


すぐ既読がつく。


 


 


 


 


【時間ある?】


 


 


 


 


珍しい。


 


 


 


 


その日の夜。


 


 


配信後。


 


 


私はタカさんと通話をしていた。


 


 


 


もちろん顔は見えない。


 


 


 


声だけ。


 


 


 


 


長年ライブ配信を見てきた、


いわゆるベテランリスナー。


 


 


 


 


「昨日どうでした?」


 


 


 


 


私が聞く。


 


 


 


 


すると。


 


 


 


タカさんは即答した。


 


 


 


 


『もったいない』


 


 


 


 


私は苦笑する。


 


 


 


 


予想通りだった。


 


 


 


 


『美咲さん』


 


 


 


 


「はい」


 


 


 


 


『コメント読むの上手い』


 


 


 


 


私は少し驚く。


 


 


 


 


怒られると思っていた。


 


 


 


 


『雑談も悪くない』


 


 


 


 


「ありがとうございます」


 


 


 


 


『でも』


 


 


 


 


そこで言葉を切る。


 


 


 


 


『バトルになると消える』


 


 


 


 


私は黙った。


 


 


 


 


図星だった。


 


 


 


 


『急に守りに入る』


 


 


 


 


『順位を気にする』


 


 


 


 


『負けたくない顔になる』


 


 


 


 


私は何も言えなかった。


 


 


 


 


全部当たっている。


 


 


 


 


『勝ってるライバーって』


 


 


 


 


タカさんが続ける。


 


 


 


 


『バトル中も楽しそうなんだよ』


 


 


 


 


私は考える。


 


 


 


 


確かに。


 


 


 


昨日の相手は笑っていた。


 


 


 


 


余裕があった。


 


 


 


 


強かった。


 


 


 


 


『リスナーは順位だけ見てない』


 


 


 


 


『楽しそうかも見てる』


 


 


 


 


私はノートを開いた。


 


 


 


 


メモを取る。


 


 


 


 


楽しそうに。


 


 


 


 


楽しそうに。


 


 


 


 


何度も書いた。


 


 


 


 


通話は一時間以上続いた。


 


 


 


 


ギフトリアクション。


 


 


 


コメントの拾い方。


 


 


 


バトル中の空気作り。


 


 


 


 


まるで授業だった。


 


 


 


 


最後に。


 


 


 


タカさんが言った。


 


 


 


 


『新人王優勝したい?』


 


 


 


 


私は即答した。


 


 


 


 


「したいです」


 


 


 


 


初めて迷わず言えた。


 


 


 


 


すると。


 


 


 


 


『じゃあ楽しめ』


 


 


 


 


それだけだった。


 


 


 


 


通話終了。


 


 


 


私はしばらく天井を見つめた。


 


 


 


 


優勝したい。


 


 


 


 


口にすると不思議だった。


 


 


 


 


今までは怖かった。


 


 


 


 


言ったら負けそうで。


 


 


 


 


期待されそうで。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


本当は最初からそうだった。


 


 


 


 


勝ちたい。


 


 


 


 


優勝したい。


 


 


 


 


だからここにいる。


 


 


 


 


翌日。


 


 


新人王四日目。


 


 


 


私は少しだけ配信のやり方を変えた。


 


 


 


 


声を大きくする。


 


 


 


笑顔を増やす。


 


 


 


リアクションを早くする。


 


 


 


 


まだぎこちない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


やってみる。


 


 


 


 


コメント欄が流れる。


 


 


 


【元気だな】


 


 


 


【何か違う】


 


 


 


【いい感じ】


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


少しだけ。


 


 


 


本当に少しだけ。


 


 


 


 


成長できた気がした。


 


 


 


 


その夜。


 


 


順位更新。


 


 


 


四十七位。


 


 


 



 


 


 


三十九位。


 


 


 


 


初めてトップ40に入った。


 


 


 


 


コメント欄が沸く。


 


 


 


【きた!】


 


 


 


【40位以内!】


 


 


 


【上がってる!】


 


 


 


 


私は順位よりも嬉しいことがあった。


 


 


 


 


昨日より楽しかった。


 


 


 


 


それが何より嬉しかった。


 


 


 


 


新人王はまだ続く。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


高梨美咲は確実に前へ進み始めていた――。

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