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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第二章 広がる世界

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35/231

第三十五話 新人王前夜



 


新人王開幕まで、あと一日。


 


 


気が付けばここまで来ていた。


 


 


二週間前。


 


 


新人王への出場が決まった時は、


まだ遠い未来の話のように思えた。


 


 


 


でも。


 


 


もう明日だ。


 


 


 


 


朝。


 


 


私はいつもより早く目を覚ました。


 


 


 


寝不足ではない。


 


 


 


むしろ昨日はしっかり寝た。


 


 


 


それでも落ち着かない。


 


 


 


遠足前の子どもみたいだった。


 


 


 


 


リビングへ行く。


 


 


恒一が朝食を作っていた。


 


 


 


「おはよう」


 


 


 


「おはよう」


 


 


 


 


顔を見るなり笑われた。


 


 


 


 


「緊張してるな」


 


 


 


 


「してない」


 


 


 


 


「してるな」


 


 


 


 


即答だった。


 


 


 


 


私は諦める。


 


 


 


 


「ちょっとだけ」


 


 


 


 


「嘘だな」


 


 


 


 


「かなり」


 


 


 


 


恒一が吹き出した。


 


 


 


 


悔しい。


 


 


 


 


その時。


 


 


 


陽菜が起きてきた。


 


 


 


 


「おはよー」


 


 


 


 


まだ眠そうだ。


 


 


 


 


「ママ明日だっけ?」


 


 


 


 


「そう」


 


 


 


 


「優勝してね」


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


「簡単に言うなぁ」


 


 


 


 


「だってママ強いじゃん」


 


 


 


 


私は少し驚いた。


 


 


 


 


強い。


 


 


 


 


そう見えているのか。


 


 


 


 


自分では全然そんな気がしない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


娘がそう思ってくれているなら、


少しだけ嬉しかった。


 


 


 


 


会社。


 


 


 


仕事は手につかなかった。


 


 


 


 


もちろん仕事はする。


 


 


 


でも集中力が続かない。


 


 


 


 


昼休み。


 


 


スマホを見る。


 


 


 


新人王参加者たちのSNS。


 


 


 


みんな気合いが入っていた。


 


 


 


 


『絶対勝つ』


 


 


 


『目標は優勝』


 


 


 


『人生変える』


 


 


 


 


そんな言葉が並ぶ。


 


 


 


 


私は少しだけ怖くなった。


 


 


 


 


本気度が違う。


 


 


 


 


いや。


 


 


 


私も本気だ。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


専業ライバーたちの熱量を見ると、


圧倒される。


 


 


 


 


帰宅後。


 


 


夕食。


 


 


お風呂。


 


 


家事。


 


 


 


いつも通り。


 


 


 


でも心だけ落ち着かない。


 


 


 


 


午後九時。


 


 


配信を始める。


 


 


 


タイトル。


 


 


 


『新人王前夜』


 


 


 


 


開始直後。


 


 


コメント欄が流れる。


 


 


 


【来た】


 


 


【前夜祭】


 


 


【緊張してる?】


 


 


 


 


私は笑う。


 


 


 


 


「してます」


 


 


 


 


【正直】


 


 


【知ってた】


 


 


 


 


コメント欄が温かい。


 


 


 


 


その時。


 


 


 


愛美が現れた。


 


 


 


 


【こんばんは】


 


 


 


 


コメント欄が反応する。


 


 


 


【愛美さん!】


 


 


【ママライバー会】


 


 


 


 


私は笑う。


 


 


 


 


「こんばんは」


 


 


 


 


すると。


 


 


 


愛美がコメントする。


 


 


 


 


【明日頑張りましょう】


 


 


 


 


私は返す。


 


 


 


 


「頑張りましょう」


 


 


 


 


続いて。


 


 


 


玲奈も来た。


 


 


 


 


【新人王楽しみ】


 


 


 


 


さらに。


 


 


 


事務所イベントで知り合ったライバーたちも現れる。


 


 


 


 


コメント欄が賑やかになる。


 


 


 


 


私は少し感動していた。


 


 


 


 


ライバーを始めた頃。


 


 


 


知り合いなんて一人もいなかった。


 


 


 


 


コメントを読むだけで精一杯だった。


 


 


 


 


でも今。


 


 


 


応援してくれる人がいる。


 


 


 


仲間がいる。


 


 


 


ライバルもいる。


 


 


 


 


配信終了間際。


 


 


私は深呼吸した。


 


 


 


 


「明日から新人王です」


 


 


 


 


コメント欄が流れる。


 


 


 


【行こう】


 


 


【楽しもう】


 


 


【優勝】


 


 


 


 


私は首を振る。


 


 


 


 


「優勝できるかは分かりません」


 


 


 


 


本音だった。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


続ける。


 


 


 


 


「ただ」


 


 


 


 


コメント欄が静かになる。


 


 


 


 


「後悔だけはしたくないです」


 


 


 


 


これは本心だった。


 


 


 


 


勝つか負けるか。


 


 


 


結果は分からない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


やれることは全部やる。


 


 


 


 


そう決めていた。


 


 


 


 


「だから最後まで頑張ります」


 


 


 


 


コメント欄が一気に流れる。


 


 


 


【応援する】


 


 


【最後まで】


 


 


【一緒に行く】


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


本当に。


 


 


 


一人じゃない。


 


 


 


 


配信終了。


 


 


 


スマホを置く。


 


 


 


 


窓の外を見る。


 


 


 


夜の街。


 


 


 


静かだった。


 


 


 


 


明日。


 


 


 


新人王が始まる。


 


 


 


 


人生が変わるかもしれない。


 


 


 


変わらないかもしれない。


 


 


 


 


それでも。


 


 


 


私は進む。


 


 


 


 


高梨美咲、三十五歳。


 


 


会社員。


 


 


妻。


 


 


母親。


 


 


そしてライバー。


 


 


 


新人王開幕まで、あと数時間――。

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