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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第二章 広がる世界

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第三十話 発表の日



 


新人王イベント参加者発表の日。


 


 


朝から落ち着かなかった。


 


 


 


正式発表は午後六時。


 


 


事務所からも連絡が来ていた。


 


 


 


『それまでは口外しないでください』


 


 


 


当然だ。


 


 


 


まだ決定ではない。


 


 


 


発表されるまでは何が起きるか分からない。


 


 


 


 


それでも。


 


 


仕事中も何度も時計を見てしまう。


 


 


 


昼休み。


 


 


スマホを見る。


 


 


 


玲奈とのDM。


 


 


 


【今日ですね】


 


 


 


 


短いメッセージ。


 


 


 


でも意味は分かる。


 


 


 


 


【ですね】


 


 


 


返信する。


 


 


 


 


数秒後。


 


 


 


【たぶん出るんでしょ?】


 


 


 


 


私は苦笑した。


 


 


 


 


【分かりません】


 


 


 


 


【嘘つき】


 


 


 


 


思わず笑ってしまった。


 


 


 


 


玲奈は鋭い。


 


 


 


 


午後五時。


 


 


仕事を終える。


 


 


 


今日は珍しく定時退社だった。


 


 


 


 


帰りの電車。


 


 


 


スマホを見る人が多い。


 


 


 


私は何となく落ち着かない。


 


 


 


 


午後五時五十五分。


 


 


帰宅。


 


 


 


恒一が夕食の準備をしていた。


 


 


 


 


「間に合った?」


 


 


 


「ギリギリ」


 


 


 


 


陽菜もソファに座っている。


 


 


 


 


「何見るの?」


 


 


 


 


「お仕事みたいなもの」


 


 


 


 


説明になっていなかった。


 


 


 


 


午後六時。


 


 


 


公式発表。


 


 


 


私はスマホを開く。


 


 


 


 


新人王イベント参加者一覧。


 


 


 


 


スクロールする。


 


 


 


 


名前。


 


 


名前。


 


 


名前。


 


 


 


そして。


 


 


 


そこにあった。


 


 


 


 


高梨美咲


 


 


 


 


私は息を止めた。


 


 


 


 


本当に載っている。


 


 


 


 


新人王。


 


 


 


 


正式出場。


 


 


 


 


「おおー」


 


 


 


 


隣で陽菜が言った。


 


 


 


 


何がすごいか分かっていない顔だった。


 


 


 


 


でも少し嬉しかった。


 


 


 


 


恒一がスマホを覗く。


 


 


 


 


「決まったんだな」


 


 


 


 


「うん」


 


 


 


 


「おめでとう」


 


 


 


 


その一言が妙に胸に響いた。


 


 


 


 


スマホが震える。


 


 


 


通知。


 


 


 


通知。


 


 


 


通知。


 


 


 


 


事務所チャット。


 


 


 


SNS。


 


 


 


DM。


 


 


 


 


一気に増えていく。


 


 


 


 


玲奈。


 


 


 


【やっぱり】


 


 


 


 


タカさん。


 


 


 


【知ってた】


 


 


 


 


ユキさん。


 


 


 


【おめでとう】


 


 


 


 


アオイ。


 


 


 


【全国大会だ】


 


 


 


 


カズ坊。


 


 


 


【忙しくなるな】


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


みんな同じ反応だった。


 


 


 


 


その夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


開始直後からコメントが流れる。


 


 


 


【おめでとう!】


 


 


 


【新人王!】


 


 


 


【見たよ!】


 


 


 


【出場決定!】


 


 


 


 


私は頭を下げた。


 


 


 


 


「ありがとうございます」


 


 


 


 


本当にそれしか言えなかった。


 


 


 


 


そして少し間を置いて言う。


 


 


 


 


「でも」


 


 


 


 


コメント欄が静かになる。


 


 


 


 


「たぶんすごく厳しいと思います」


 


 


 


 


これは本音だった。


 


 


 


 


事務所イベントとは違う。


 


 


 


全国の新人ライバーが集まる。


 


 


 


 


配信一本で生活している人もいる。


 


 


 


 


専業ライバー。


 


 


 


芸能経験者。


 


 


 


元モデル。


 


 


 


元アイドル。


 


 


 


 


私は違う。


 


 


 


 


会社員。


 


 


 


主婦。


 


 


 


母親。


 


 


 


 


配信経験もまだ浅い。


 


 


 


 


勝てる保証なんてどこにもない。


 


 


 


 


すると。


 


 


 


コメントが流れた。


 


 


 


【だから応援するんだろ】


 


 


 


 


タカさんだった。


 


 


 


 


続いて。


 


 


 


【そういう話】


 


 


 


【最初から強い人は面白くない】


 


 


 


【みさママだから見たい】


 


 


 


 


私は言葉に詰まる。


 


 


 


 


胸が熱くなった。


 


 


 


 


少し前まで、


コメントを読むだけで精一杯だった。


 


 


 


 


イベントで負けた。


 


 


 


悔しかった。


 


 


 


泣いた。


 


 


 


 


それでも続けてきた。


 


 


 


 


そして今。


 


 


 


こんなにも応援してくれる人がいる。


 


 


 


 


私は深呼吸した。


 


 


 


 


「頑張ります」


 


 


 


 


それしか言えなかった。


 


 


 


 


コメント欄が流れる。


 


 


 


【行こう】


 


 


 


【新人王】


 


 


 


【全国へ】


 


 


 


【楽しもう】


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


そうだ。


 


 


 


まずは楽しもう。


 


 


 


 


新人王は怖い。


 


 


 


でも。


 


 


 


ワクワクもしている。


 


 


 


 


配信終了後。


 


 


私はイベントページを開いた。


 


 


 


参加者一覧。


 


 


 


そこには見知らぬ名前が並んでいる。


 


 


 


 


ライバルたち。


 


 


 


 


そしてその中に、


高梨美咲の名前もある。


 


 


 


 


私は静かに画面を閉じた。


 


 


 


 


新人王開幕まで、あと二週間。


 


 


 


 


この時はまだ知らなかった。


 


 


 


 


このイベントが、


これまで経験したどの戦いよりも過酷で。


 


 


 


そして。


 


 


 


人生で最も大きな出会いと、


最も大きな別れを連れてくることを――。

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