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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第二章 広がる世界

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第二十九話 運営からの電話



 


事務所イベントが終わって一週間。


 


 


日常は少しずつ元に戻っていた。


 


 


朝起きて。


 


会社へ行って。


 


帰宅して。


 


家事をして。


 


夜に配信する。


 


 


 


忙しいけれど、


どこか穏やかな毎日だった。


 


 


 


イベントの熱狂が嘘みたいに感じる。


 


 


 


配信も落ち着いていた。


 


 


 


順位を気にしなくていい。


 


 


 


ポイントも追わなくていい。


 


 


 


純粋に楽しかった。


 


 


 


 


ただ一つだけ変わったことがある。


 


 


リスナーが増えた。


 


 


 


準優勝以降、


毎日のように新しい人が来る。


 


 


 


「イベント見てました」


 


 


「おすすめで流れてきました」


 


 


「切り抜きから来ました」


 


 


 


そんなコメントが増えていた。


 


 


 


嬉しい。


 


 


 


でも少し怖い。


 


 


 


知らない人が増えるということは、


良いことばかりではないからだ。


 


 


 


 


その日の昼休み。


 


 


私は会社近くの公園でサンドイッチを食べていた。


 


 


 


スマホが鳴る。


 


 


 


事務所のマネージャー。


 


 


 


珍しい。


 


 


 


 


「お疲れさまです」


 


 


 


『高梨さん、今少しお時間大丈夫ですか?』


 


 


 


 


声が少し弾んでいる。


 


 


 


何だろう。


 


 


 


 


「大丈夫です」


 


 


 


 


『実はですね』


 


 


 


 


そこで一度言葉を切った。


 


 


 


 


『公式新人王イベントの推薦枠が出ました』


 


 


 


 


私は固まった。


 


 


 


 


新人王。


 


 


 


 


TikTok LIVE公式新人王。


 


 


 


 


新人ライバーなら誰でも知っている。


 


 


 


新人期間中しか出場できない、


特別な公式イベント。


 


 


 


 


全国規模。


 


 


 


参加者もレベルが違う。


 


 


 


 


事務所イベントとは別世界だ。


 


 


 


 


『高梨さんを推薦したいと思っています』


 


 


 


 


私は言葉を失った。


 


 


 


 


推薦。


 


 


 


私を。


 


 


 


 


『もちろん最終決定ではありません』


 


 


 


『ただ事務所としてはぜひ挑戦してほしいです』


 


 


 


 


心臓が速くなる。


 


 


 


 


新人王。


 


 


 


 


少し前の私なら、


考えもしなかった舞台だった。


 


 


 


 


「私で大丈夫なんでしょうか」


 


 


 


 


思わず本音が出る。


 


 


 


 


マネージャーは笑った。


 


 


 


 


『事務所イベント準優勝ですよ』


 


 


 


『何を今さら』


 


 


 


 


私は苦笑した。


 


 


 


 


確かにそうだ。


 


 


 


でも。


 


 


 


不安は消えない。


 


 


 


 


電話を切る。


 


 


 


しばらくベンチで空を見上げた。


 


 


 


春の青空。


 


 


 


雲がゆっくり流れている。


 


 


 


 


新人王。


 


 


 


 


そこまで来たのか。


 


 


 


 


その日の夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


私はまだ誰にも話していなかった。


 


 


 


正式発表前だからだ。


 


 


 


 


雑談しながらコメントを読む。


 


 


 


いつもの時間。


 


 


 


いつもの空気。


 


 


 


 


でも頭の片隅には、


ずっと新人王のことがあった。


 


 


 


 


配信終了後。


 


 


タカさんからDMが届く。


 


 


 


【何かあった?】


 


 


 


私は驚いた。


 


 


 


 


【なんでですか?】


 


 


 


 


返信する。


 


 


 


 


【今日ちょっと上の空】


 


 


 


 


図星だった。


 


 


 


 


長く見ている人には隠せないらしい。


 


 


 


 


少し迷った。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


私は打ち込んだ。


 


 


 


 


【新人王の推薦が来ました】


 


 


 


 


数秒。


 


 


返信がない。


 


 


 


 


やがて届く。


 


 


 


 


【そうか】


 


 


 


 


それだけだった。


 


 


 


 


私は首を傾げる。


 


 


 


もっと驚くと思った。


 


 


 


 


すると続きが届く。


 


 


 


 


【行くんだろ?】


 


 


 


 


私は画面を見つめた。


 


 


 


 


正直。


 


 


 


まだ迷っていた。


 


 


 


 


怖い。


 


 


 


負けるかもしれない。


 


 


 


恥をかくかもしれない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


【たぶん行きます】


 


 


 


返信する。


 


 


 


 


すると即座に返ってきた。


 


 


 


 


【知ってた】


 


 


 


 


私は吹き出した。


 


 


 


 


本当にこの人は。


 


 


 


 


スマホを置く。


 


 


 


そして天井を見上げる。


 


 


 


 


イベントは終わった。


 


 


 


でも。


 


 


 


物語は終わっていない。


 


 


 


 


むしろ。


 


 


 


ここからなのかもしれない。


 


 


 


 


数日後。


 


 


 


高梨美咲の名前は、


正式にTikTok LIVE公式新人王イベント参加者として発表される。


 


 


 


そしてその瞬間。


 


 


 


彼女の配信人生は、


新たなステージへ進むことになるのだった。

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