第二十四話 守る戦い
イベント終了まで残り一日。
朝。
目が覚めた私は、いつものようにスマホを手に取った。
順位。
三位。
変わらない。
しかし。
三位という数字は、昨日までとは意味が違っていた。
追う立場ではない。
守る立場だ。
四位との差はわずか。
五位との差も大きくない。
少し気を抜けば落ちる。
それがイベント終盤だった。
リビングへ向かう。
恒一が朝食を作っていた。
「おはよう」
「おはよう」
私の顔を見るなり、恒一が笑った。
「また順位見た?」
「見た」
「顔で分かる」
私は苦笑した。
陽菜も席につく。
「ママ三位なんでしょ?」
「うん」
「すごいじゃん」
あまりにも普通に言う。
私は思わず聞いた。
「落ちたらどうする?」
陽菜は首を傾げた。
「何が?」
「順位」
陽菜は少し考えて、
当たり前のように答えた。
「また頑張れば?」
私は笑ってしまった。
最近、娘の方がよほど冷静だ。
仕事中も落ち着かない。
昼休み。
順位確認。
三位。
午後。
順位確認。
三位。
数字は変わらない。
なのに心は忙しい。
夜。
配信開始。
開始直後から人数が多かった。
【防衛戦】
【守ろう】
【絶対表彰台】
コメント欄の熱量が違う。
みんな本気だ。
私は深呼吸した。
「今日は順位の話をしません」
コメント欄がざわつく。
「気になるけど」
「たぶん気にしたらダメだから」
するとコメントが流れる。
【正解】
【楽しもう】
【それでいい】
私は笑った。
そして配信を始める。
最近の失敗談。
陽菜のダンス発表会。
会社での出来事。
いつも通り。
本当にいつも通り。
途中。
バトル申請が来る。
ランキング六位。
強い。
でも受けた。
バトル開始。
接戦だった。
お互い譲らない。
残り一分。
ほぼ同点。
コメント欄が盛り上がる。
【いけ!】
【あと少し!】
【勝とう!】
しかし。
私は不思議と落ち着いていた。
勝ちたい。
もちろん勝ちたい。
でも。
負けたら終わりではない。
それを少しずつ理解し始めていた。
終了。
結果。
『WIN』
コメント欄が歓声で埋まる。
順位更新。
三位。
変わらない。
私は少し安心した。
しかし。
配信終了三十分前。
事件は起きた。
順位更新。
三位。
↓
四位。
私は固まった。
コメント欄もざわつく。
【落ちた】
【追い抜かれた】
【まだ差は小さい】
心臓が大きく鳴る。
守れなかった。
ほんの数時間前まで三位だった。
それが今は四位。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
その時だった。
タカさんがコメントする。
【まだ終わってない】
ユキさん。
【今何時?】
アオイ。
【イベント終わった?】
カズ坊。
【終わってないよな?】
私は画面を見つめる。
そうだ。
終わっていない。
イベント終了は明日だ。
私は笑った。
「終わってないですね」
コメント欄が流れる。
【そう】
【ここから】
【最後まで】
私は大きく頷いた。
配信終了。
順位。
四位。
でも。
昨日ほど絶望していなかった。
ここまで来たのだ。
最後までやるしかない。
スマホが震える。
玲奈からだった。
【私二位です】
私は笑う。
さすがだ。
続けてメッセージ。
【明日楽しみですね】
私は返信する。
【ですね】
イベント終了まで残り一日。
そして明日。
高梨美咲のライバー人生を変える、
最後の戦いが始まる。




