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アラフォーママは新人ライバー 〜35歳でライブ配信デビュー〜  作者: ふぁい(phi)
第二章 広がる世界

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第二十一話 見えてはいけないもの



イベント終了まで残り四日。


 


朝、目を覚ました私は反射的にスマホを探した。


 


 


順位。


 


 


四位。


 


 


 


昨日と変わらない。


 


 


それなのに少し安心した。


 


 


 


そして、その安心に気付いてしまった。


 


 


 


まずい。


 


 


 


私は順位に囚われ始めている。


 


 


 


以前の私なら、


配信が楽しかったら満足だった。


 


 


来てくれる人がいたら嬉しかった。


 


 


 


でも今は違う。


 


 


 


四位を維持したい。


 


 


三位に入りたい。


 


 


できれば――。


 


 


 


そこまで考えて、


私は首を振った。


 


 


 


ダメだ。


 


 


 


まだ終わっていない。


 


 


 


 


その日の夜。


 


 


配信開始。


 


 


 


いつも通り笑顔で始めたつもりだった。


 


 


 


でも。


 


 


コメント欄は鋭い。


 


 


 


【疲れてる?】


 


 


 


【大丈夫?】


 


 


 


【今日元気ない】


 


 


 


 


私は驚いた。


 


 


 


そんなつもりはなかった。


 


 


 


でも言われてみれば、


心のどこかで順位ばかり気にしていた。


 


 


 


 


「大丈夫ですよ」


 


 


 


そう答える。


 


 


 


しかしコメントは続く。


 


 


 


【無理してない?】


 


 


 


【イベントだからって頑張りすぎるな】


 


 


 


 


私は少し笑った。


 


 


 


逆だ。


 


 


 


応援している側が、


配信者を心配している。


 


 


 


 


配信を続ける。


 


 


 


でも今日は調子が出ない。


 


 


 


話が広がらない。


 


 


 


コメントも読み飛ばす。


 


 


 


 


すると突然、


古参リスナーのユキさんが書き込んだ。


 


 


 


【最近順位の話ばっかり】


 


 


 


 


一瞬。


 


 


空気が止まった。


 


 


 


 


悪意はない。


 


 


 


むしろ本音だ。


 


 


 


だからこそ刺さる。


 


 


 


 


私は何も言えなかった。


 


 


 


 


数秒後。


 


 


タカさんがコメントする。


 


 


 


【イベント終わったあと何したい?】


 


 


 


 


私は画面を見つめた。


 


 


 


イベント終わったあと。


 


 


 


考えたことがなかった。


 


 


 


 


勝つことばかり考えていたから。


 


 


 


 


「そうですね……」


 


 


 


私は少し考える。


 


 


 


 


「家族で温泉行きたいです」


 


 


 


 


コメント欄が動いた。


 


 


 


【いいじゃん】


 


 


 


【それ行こう】


 


 


 


【陽菜ちゃん喜びそう】


 


 


 


 


自然と笑顔になる。


 


 


 


 


その瞬間だった。


 


 


 


私は気付く。


 


 


 


最近忘れていた。


 


 


 


配信は順位のためじゃない。


 


 


 


誰かと時間を共有するためのものだ。


 


 


 


 


配信終了後。


 


 


私はベランダに出た。


 


 


 


春の夜風。


 


 


 


少し冷たい。


 


 


 


 


スマホが震えた。


 


 


 


玲奈からだった。


 


 


 


【今日見てました】


 


 


 


 


私は苦笑する。


 


 


 


見られていたらしい。


 


 


 


 


【調子悪かったですね】


 


 


 


送る。


 


 


 


すると返信が来た。


 


 


 


【順位見すぎです】


 


 


 


 


図星だった。


 


 


 


 


【分かります?】


 


 


 


 


【分かります】


 


 


 


 


玲奈の返事は早かった。


 


 


 


 


【私も同じだから】


 


 


 


 


私はスマホを見つめる。


 


 


 


 


【四位になると三位見える】


 


 


 


【三位になると二位見える】


 


 


 


【二位になると一位見える】


 


 


 


 


玲奈からのメッセージ。


 


 


 


 


【終わりがないです】


 


 


 


 


私は息を吐いた。


 


 


 


 


そうだ。


 


 


 


終わりがない。


 


 


 


順位は麻薬みたいなものだ。


 


 


 


一つ上がると、


また次が欲しくなる。


 


 


 


 


【だから】


 


 


 


玲奈から続きが来る。


 


 


 


 


【たまに配信を楽しむの思い出してください】


 


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


 


少し前に、


私が玲奈へ言った言葉だった。


 


 


 


 


今度は返されている。


 


 


 


 


【そうします】


 


 


 


返信する。


 


 


 


 


そしてスマホを閉じた。


 


 


 


順位は四位。


 


 


 


変わらない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


心は少しだけ軽くなっていた。


 


 


 


 


イベント終了まで残り三日。


 


 


 


そして翌日、


高梨美咲は初めて――


 


 


 


TOP3のライバーから、


直接バトルを申し込まれることになる。

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