第二十話 勝ちたい
イベント終了まで残り五日。
中間発表七位。
その順位は、
私の中に小さな変化を起こしていた。
勝ちたい。
もっと上へ行きたい。
そんな気持ちだった。
以前の私なら考えなかった。
配信を続けられるだけで十分。
来てくれる人がいるだけで嬉しい。
そう思っていた。
もちろん今もそう思っている。
でも。
人は欲張りになる。
七位になったら五位が見える。
五位になったら三位が見える。
三位になったら――
そこから先も見たくなる。
朝。
通勤電車。
私はイベントページを見ていた。
順位。
六位。
思わず二度見した。
六位。
本当に六位だった。
夜中の順位変動で一つ上がっている。
「嘘でしょ……」
心臓が速くなる。
TOP5が見える。
見えてしまった。
会社でも落ち着かない。
昼休み。
順位。
六位。
午後。
順位。
五位。
私はスマホを落としかけた。
五位。
本当に五位。
その瞬間、
玲奈からDMが届いた。
【五位ですね】
私は笑った。
【見てたんですか】
返信。
【ライバルですから】
ライバル。
以前なら恐れ多かった。
でも今は少し嬉しい。
【玲奈さん何位?】
【三位】
さすがだった。
でも。
前より近い。
ずっと近い。
夜。
配信開始。
開始直後から人が多かった。
【五位おめでとう】
【TOP3見えてる】
【行こう】
コメント欄が熱い。
私は笑顔で返す。
でも。
心の奥は少し違った。
もっと。
もっと。
そんな気持ちがある。
配信開始から二時間。
今日はイベント終盤らしい空気だった。
ギフトも多い。
応援コメントも増える。
そして。
大きなバトルが始まった。
相手はランキング四位。
つまり。
私の一つ上。
コメント欄がざわつく。
【来た】
【大勝負】
【勝ったらでかい】
私は深呼吸した。
逃げない。
受ける。
バトル開始。
残り五分。
序盤は互角だった。
本当に互角。
コメント欄が盛り上がる。
残り三分。
少し負ける。
残り二分。
さらに離される。
焦る。
久しぶりに焦った。
勝ちたい。
負けたくない。
その気持ちが強くなりすぎる。
コメントを読み飛ばす。
会話が雑になる。
すると。
コメントが流れた。
【みさママ落ち着いて】
私はハッとした。
【焦ってる】
【いつも通りで】
【大丈夫】
タカさんだった。
ユキさんだった。
いつもの人たちだった。
私は深呼吸する。
そして笑った。
「ごめん」
「勝ちたくなってました」
コメント欄が流れる。
【知ってる】
【いいんだよ】
【でも楽しもう】
私は肩の力を抜いた。
そこからだった。
コメントを読む。
笑う。
話す。
いつもの配信に戻る。
残り三十秒。
点差が縮まる。
残り二十秒。
さらに縮まる。
残り十秒。
逆転。
「えっ!?」
自分が一番驚いた。
カウントダウン。
3。
2。
1。
0。
終了。
『WIN』
コメント欄が大爆発した。
【勝ったああああ!】
【すげえええ!】
【逆転!】
私は口を押さえた。
信じられない。
本当に勝った。
イベント順位更新。
五位。
↓
四位。
私は言葉を失った。
四位。
その順位の上には。
TOP3しかいない。
配信終了後。
玲奈からDMが届いた。
【追い付いてきましたね】
私は少し笑った。
【まだまだです】
返信。
すると返事が来る。
【そういうところです】
意味が分からなかった。
でも。
少し嬉しかった。
ベッドに入る。
順位を見る。
四位。
イベント終了まで残り四日。
そして。
初めて現実的に見えてきた。
表彰台が。




