第十七話 見えてきた景色
イベント二日目。
朝、目が覚めて最初にしたことは歯磨きでも顔を洗うことでもなかった。
スマホを手に取ることだった。
イベントページを開く。
順位。
十七位。
「下がってる……」
思わず呟く。
昨日の十五位から二つ下がっていた。
まあ当然だ。
深夜に配信するライバーもいる。
朝活をするライバーもいる。
イベントは二十四時間動いている。
それでも少し悔しかった。
リビングへ行く。
恒一が朝食を作っていた。
「おはよう」
「おはよう」
「順位見た?」
「見た」
「下がってた」
恒一は味噌汁をよそいながら言った。
「まだ二日目だろ」
正論だった。
私は黙って席に座る。
会社でも落ち着かない。
昼休み。
イベントページ。
順位。
十六位。
少し戻った。
それだけなのに嬉しい。
我ながら単純だと思う。
夜。
配信開始。
開始五分。
コメント欄がいつも以上に活気づいていた。
【順位見た?】
【もうすぐTOP10】
【行けそう】
TOP10。
私はその言葉に少し緊張した。
今まで遠かった場所だ。
前回は三十一位。
その私が。
「まだ遠いですよ」
そう言う。
するとコメントが流れる。
【近いよ】
【あと少し】
【自信持って】
私は苦笑した。
みんなの方が前向きだ。
配信は順調だった。
最近は話題に困ることも減った。
コメントを拾う。
話を広げる。
笑う。
それが自然にできるようになってきた。
一時間後。
バトル。
今日で三回目。
結果は二勝一敗。
悪くない。
むしろ今までの私なら考えられない。
四回目のバトル。
残り三十秒。
接戦。
コメント欄が熱い。
【いけ!】
【勝とう!】
【あと少し!】
私は必死に話す。
必死に笑う。
必死に盛り上げる。
そして。
終了。
結果。
『WIN』
私は拳を握った。
勝った。
すぐにイベントページを更新する。
順位。
十二位。
コメント欄が沸く。
【来た!】
【見えてる!】
【TOP10目前!】
私は画面を見つめた。
十二位。
本当に見えてきた。
その瞬間。
心の中に危険な感情が生まれる。
行けるかもしれない。
TOP10に。
前回は考えもしなかった場所。
でも今は違う。
手が届きそうな気がしてしまう。
配信終了後。
私はベッドの上でイベントページを見ていた。
十二位。
何度見ても変わらない。
嬉しい。
でも。
少し怖い。
期待してしまうからだ。
そのときDMが届く。
玲奈だった。
【順位どうでした?】
私は返信する。
【十二位】
数秒後。
【すごい】
【私五位】
さすがだ。
私は笑う。
【玲奈さんこそ】
送る。
すると返信が返ってきた。
【でも追い上げてきてますね】
【面白くなってきました】
私は画面を見つめる。
面白くなってきた。
その言葉に胸が高鳴る。
ランキングは戦いだ。
でも。
今は不思議と楽しかった。
翌朝。
イベント三日目。
私はいつものようにスマホを開いた。
順位。
十一位。
TOP10まで。
あと一つ。
私は思わず息を呑んだ。
そしてその日の夜。
初めて、
本物の強豪ライバーとのバトルが待っていることを、
まだ知らなかった。




