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アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第一章 はじまりの一歩

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第十五話 開幕前夜



春の大型イベント開始まで、あと一日。


 


その日は朝から落ち着かなかった。


 


仕事をしていても集中できない。


 


メールを書いていても、


頭の片隅ではイベントのことを考えている。


 


 


「高梨さん」


 


 


会議中。


 


上司の声で我に返った。


 


 


「大丈夫?」


 


 


「はいっ!」


 


 


少し大きな声が出てしまう。


 


 


会議室に小さな笑いが起きた。


 


 


私は恥ずかしくなった。


 


 


 


帰宅途中。


 


 


スマホを見る。


 


 


イベントページ。


 


 


参加者一覧。


 


 


何度見たか分からない。


 


 


 


白石玲奈。


 


 


高梨美咲。


 


 


名前が並んでいる。


 


 


 


いよいよだ。


 


 


 


家に帰ると、


陽菜がリビングでストレッチをしていた。


 


 


ダンスレッスンの前らしい。


 


 


 


「明日なんでしょ?」


 


 


陽菜が言った。


 


 


「何が?」


 


 


 


「イベント」


 


 


 


私は驚いた。


 


 


 


「覚えてたの?」


 


 


 


「ママ毎日言ってるもん」


 


 


 


返す言葉がない。


 


 


 


 


陽菜は立ち上がる。


 


 


 


「優勝してね」


 


 


 


私は笑った。


 


 


 


「それは難しいかな」


 


 


 


「なんで?」


 


 


 


「強い人いっぱいいるから」


 


 


 


陽菜は不思議そうな顔をする。


 


 


 


そして当たり前のように言った。


 


 


 


「でもママ頑張ってるじゃん」


 


 


 


私は一瞬黙った。


 


 


 


子どもの言葉は時々ずるい。


 


 


 


理屈がない。


 


 


 


だから真っ直ぐ届く。


 


 


 


 


夕食後。


 


 


恒一がコーヒーを淹れてくれた。


 


 


 


「緊張してる?」


 


 


 


「してる」


 


 


 


「見れば分かる」


 


 


 


私は苦笑した。


 


 


 


「負けたらどうしよう」


 


 


 


思わず本音が漏れる。


 


 


 


恒一は少し考えた。


 


 


 


そして言った。


 


 


 


「前も負けたじゃないか」


 


 


 


「ひどい」


 


 


 


「事実だろ」


 


 


 


 


私は吹き出した。


 


 


 


確かにそうだ。


 


 


 


前回は三十一位。


 


 


 


惨敗だった。


 


 


 


でも。


 


 


 


あの時より今の方がずっと楽しい。


 


 


 


 


「今回もダメだったら?」


 


 


 


私が聞く。


 


 


 


恒一は肩をすくめた。


 


 


 


「また次頑張ればいい」


 


 


 


 


あまりにも簡単に言う。


 


 


 


でも。


 


 


 


その言葉に少し救われた。


 


 


 


 


夜。


 


 


イベント前最後の配信。


 


 


 


いつもより多くの人が集まっていた。


 


 


 


【明日だね】


 


 


【楽しみ】


 


 


【緊張してる?】


 


 


 


コメントが流れる。


 


 


 


私は素直に答えた。


 


 


 


「してます」


 


 


 


コメント欄が笑う。


 


 


 


【正直】


 


 


【みさママらしい】


 


 


【そこが好き】


 


 


 


私は少し照れた。


 


 


 


 


「でも」


 


 


 


私は画面を見つめる。


 


 


 


「前回よりは怖くないです」


 


 


 


コメント欄が静かになる。


 


 


 


 


「前回は一人で戦ってる気がしてた」


 


 


 


「でも今は違う」


 


 


 


 


タカさん。


 


 


ユキさん。


 


 


アオイ。


 


 


カズ坊。


 


 


 


毎日来てくれる人たち。


 


 


 


玲奈。


 


 


 


そして家族。


 


 


 


 


「応援してくれる人がいます」


 


 


 


「だから頑張ります」


 


 


 


コメント欄が一気に流れ始めた。


 


 


 


【もちろん】


 


 


【任せろ】


 


 


【みんなで行こう】


 


 


【楽しもう】


 


 


【絶対見に行く】


 


 


 


胸が熱くなる。


 


 


 


 


配信終了。


 


 


 


私はスマホを置いた。


 


 


 


静かな部屋。


 


 


 


時計を見る。


 


 


午前零時。


 


 


 


イベント開始まで、あと九時間。


 


 


 


ベッドに入る。


 


 


 


でもなかなか眠れない。


 


 


 


目を閉じる。


 


 


 


イベント。


 


 


順位。


 


 


バトル。


 


 


リスナー。


 


 


玲奈。


 


 


 


色々なものが頭を巡る。


 


 


 


するとスマホが震えた。


 


 


 


玲奈からだった。


 


 


 


【眠れません】


 


 


 


私は思わず笑った。


 


 


 


すぐ返信する。


 


 


 


【私もです】


 


 


 


数秒後。


 


 


返信。


 


 


 


【お互い頑張りましょう】


 


 


 


私は画面を見つめた。


 


 


 


ライバル。


 


 


 


でも仲間。


 


 


 


不思議な関係だ。


 


 


 


私はゆっくり返信する。


 


 


 


【頑張りましょう】


 


 


 


スマホを置く。


 


 


 


深呼吸。


 


 


 


そして目を閉じた。


 


 


 


明日から始まる。


 


 


 


三十一位で終わった私のリベンジが。


 


 


 


高梨美咲、二度目のイベントが――。

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