↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラフォーママは新人ライバー ~ライブ配信で「ただいま」と言える居場所を育てています~  作者: ふぁい(phi)
第六章 選ぶ勇気

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
113/500

第百十三話 思いがけない出会い



 


約束の日。


 


 


仕事を終えた美咲は、


事務所へ向かっていた。


 


 


夕暮れの街は、


昼間の暑さが少しだけ和らいでいる。


 


 


応接室の前で、


小さく深呼吸をした。


 


 


「失礼します。」


 


 


ドアを開けると、


佐藤と、もう一人の女性が立ち上がった。


 


 


二十代前半だろうか。


 


 


少し緊張した表情で、


何度も指先を握り直している。


 


 


「こちらが、以前お話しした……。」


 


 


佐藤が紹介する。


 


 


「配信者の結衣さんです。」


 


 


「はじめまして。」


 


 


結衣は深々と頭を下げた。


 


 


「高梨さんの記事を読んで……。」


 


 


「一度、お話を聞いてみたくて。」


 


 


美咲も笑顔で頭を下げる。


 


 


「はじめまして。」


 


 


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」


 


 


その一言で、


結衣は少しだけ表情を和らげた。


 


 


佐藤は二人に飲み物を置くと、


席を外した。


 


 


「ゆっくりお話ししてください。」


 


 


部屋には、


二人だけになる。


 


 


少しだけ沈黙が流れた。


 


 


先に口を開いたのは、


結衣だった。


 


 


「あの……。」


 


 


「私、配信を始めて一年くらいなんです。」


 


 


「でも最近、自信がなくて。」


 


 


「何かあったんですか?」


 


 


美咲は急がず尋ねる。


 


 


「登録者が全然増えないんです。」


 


 


「頑張ってるつもりなのに……。」


 


 


「周りの人は、どんどん人気になって。」


 


 


「私だけ止まってる気がして。」


 


 


その言葉を聞いた瞬間、


美咲は一年前の自分を思い出していた。


 


 


毎日数字を見て、


落ち込んで。


 


 


誰かと比べて。


 


 


「私も同じでした。」


 


 


結衣は驚いたように顔を上げる。


 


 


「高梨さんも……ですか?」


 


 


「もちろん。」


 


 


美咲は小さく笑う。


 


 


「毎日、登録者数を何回も見てました。」


 


 


「減ると落ち込んで。」


 


 


「増えても、もっと増やさなきゃって思って。」


 


 


「終わりがなかったんです。」


 


 


結衣は黙って聞いている。


 


 


「じゃあ……。」


 


 


「どうやって乗り越えたんですか?」


 


 


美咲は少しだけ考えた。


 


 


答えはある。


 


 


でも、


その答えを押しつけたくはなかった。


 


 


「私はね。」


 


 


「数字を見る時間を減らしました。」


 


 


「その代わり、コメントを読む時間を増やしたんです。」


 


 


「コメント……ですか?」


 


 


「うん。」


 


 


「一人が笑ってくれたら、それで今日は良かったって思うようにしたの。」


 


 


結衣は静かにうつむく。


 


 


「私……。」


 


 


「数字しか見てなかったかもしれません。」


 


 


「それだけ真剣だったってことですよ。」


 


 


美咲は優しく微笑んだ。


 


 


「だから、自分を責めなくて大丈夫。」


 


 


その言葉に、


結衣の目が少し潤む。


 


 


「ありがとうございます。」


 


 


「今日は来て良かったです。」


 


 


帰り際。


 


 


エレベーターの前で、


結衣が振り返る。


 


 


「また、お話ししてもいいですか?」


 


 


美咲は迷わず頷いた。


 


 


「もちろん。」


 


 


「でも、次は相談だけじゃなくて。」


 


 


「最近あった嬉しいことも聞かせてください。」


 


 


結衣は少し照れながら笑う。


 


 


「はい!」


 


 


その笑顔は、


部屋へ入ってきた時よりもずっと明るかった。


 


 


夜。


 


 


手帳を開いた美咲は、


今日の出来事を書き留める。


 


 


最後に、


ゆっくりと一文を書いた。


 


 


『経験は、答えではない。』


 


 


少しだけ考え、


続ける。


 


 


『でも、誰かが前を向くきっかけにはなれる。』


 


 


ページを閉じる。


 


 


窓の外には、


静かな夜空が広がっていた。


 


 


美咲は今日、


誰かを導いたわけではない。


 


 


ただ、


少しだけ隣を歩いた。


 


 


その一歩が、


結衣にとっても、


そして美咲自身にとっても、


新しい物語の始まりになろうとしていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。