酔っ払いと赤面
夜勤をしていると頻繁に対応する事案がある。それは、酔っ払いの対応だ。当職が務めている交番近辺には飲み屋街があり、本署のPM(警察官)とよく対応に当たっている。今日もいつも通り、酔っ払いが暴れているとの通報が入り、一ノ瀬と現場に向かった。
現場につくと、居酒屋の店員に囲まれた中年の男を現認した。
「こんばんは、御琴南交番の神谷です」
「同じく一ノ瀬です!」
一ノ瀬の挨拶と同時に、心拍数が上昇した気がするが、これは職務に緊張感を持って挑んでいるというサインであろう。
「この人が飲むだけ飲んでお金払わないと言っていて…」
中年の男は俯き、少しうとうとしている。
「ご家族に連絡はできますか?」
当職が声をかけると、中年の男は顔をあげる。
「…、おお、美男美女のカップルだ」
「違います!しっかりしてください警察です!」
一生懸命に弁明する一ノ瀬の顔は赤らんでおり、耳に至っては茹で上がったかのように真っ赤だ。
「そういうのいいので、誰か連絡できる人いますか?」
本当はどうでも良くない。さっきの言動に関して、小一時間取り調べしたいくらい…。と、そんな馬鹿な考えを振りほどくかのように、持ち物検査や男の家族への連絡を済ませる。
男の家族が男を連れ帰ると、当職と一ノ瀬は肩を並べて歩く。
「先輩…、なんか、間違われちゃいましたね…」
照れくさそうに言う一ノ瀬。当職は胸のもやもやを業務にどうこじつけるか、必死に思考を巡らせる。
「でも、ほんとに先輩みたいな人が彼氏なら頼もしいのに…」
「…」
当職の心臓がうるさくなるせいで、いつものような冷たい言葉が出てこない。バカなこと考えるな。色恋など、私には必要ない。相棒には恋してはいけないのだから。




