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うちのメイドはやりすぎるっっ!〜最強メイドたちは今日も力で事件を解決します〜  作者: 犬斗
第七章 エリザベータ・ローレンテイル

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第34話 メイド課の休日2

 レオリアが大爪熊に近づいた。


「待て。その獲物は我々のものだ」


 南白鴨を狙う大爪熊に声をかけるレオリア。

 とはいえ、これで離れてくれるわけがない。

 むしろ人間に警戒して、大爪熊は戦闘態勢に入った。


「グゴゥゥゥゥ」


 低い唸り声を上げる大爪熊。


「シェリーナ、そっちは任せた」

「はい!」


 突然、一頭の大爪熊が走り出す。

 一気に距離を縮め、レオリアに襲いかかった。

 大爪熊の瞬間的な足の速さは、馬に匹敵すると言われている。


 大爪を振り上げる大爪熊。

 レオリアの頭部よりも大きな掌が、その美しい顔を吹き飛ばさんと、容赦なく振り下ろされた。


 常人ならこれで頭部をなくしているところだが、レオリアは冷静に大爪熊の掌に向かって、超高速の上段横蹴りを放つ。


「グゴオオオオ!」


 跳ね返された大爪熊の右腕が、肩関節から力なくぶら下がる。

 レオリアの蹴りは、掌から肩関節までの骨を全て砕いた。


 レオリアはその場で大きくジャンプし、長い左足を天に届かせるかのように振り上げる。

 そして、落下と同時に大爪熊の頭部へ、踵落としを放った。


「グフォッ……」


 短い断末魔を上げた大爪熊。

 巨体がゆっくりと前のめりに傾き、地響きを立てて地面に倒れた。


 ――


 シェリーナはスレッジハンマーを握りながら、走って大爪熊に接近した。

 大爪熊は二本足で立ち上がり、両腕を大きく広げ威嚇する。


「グゴオオオオ!」


 だが、シェリーナはお構いなしとばかりに、大爪熊に向かって大きくジャンプ。

 スレッジハンマーを両手で握り、空中で振り上げる。


「その南白鴨は私たちの獲物ですよ!」


 南白鴨を飛び越えて、大爪熊の頭部に向かって猛烈な一撃を放つ。


「っしょ!」

「グフォッ!」


 衝撃波が大爪熊の全身を突き抜けた。

 直後に破裂音が鳴り響く。

 あまりにも大きな破裂音で、周囲の野鳥が羽ばたいていく。

 その衝撃は、地面に大きなクレーターを作り出すほどだ。


 シェリーナは、双鎚を使用すれば衝撃音を相殺して無音にすることができる。

 しかし一本だと、その猛烈な威力に比例した衝撃音が発生してしまう。


「野鳥が逃げちゃいました……。ごめんなさい……」


 シェリーナは振り返り、フィローラに頭を下げて謝罪した。

 背後では、全身の骨を砕かれた大爪熊が、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。


「本当にもう。二人とも凄いんだから。南白鴨五羽と大爪熊二頭なんて、普通は狩れませんよ? ふふ」


 大爪熊を仕留めた二人に笑顔を向けるフィローラ。


「フィローラ、この巨体は持ち帰れないぞ?」


 レオリアが疑問を投げかける。

 いくらこの三人でも、巨体を誇る大爪熊を二頭も運ぶことはできない。


「必要な肉だけ解体しますね」


 フィローラが腰のナイフを取り出し、慣れた手つきで大爪熊の解体を始めた。

 皮を剥ぎ、肉を削ぐ。

 それを用意していた麻袋に、次々と入れていく。

 その手際の良さは、シェリーナとレオリアが感嘆の声を上げるほどだ。


「余った部位はどうする」

「森の栄養になるんですよ。小型の肉食動物や、虫、地中の微生物が処理します」

「なるほど。自然は凄いな」


 感心したレオリアが頷く。


「ところで、課長とエリザベータさんは大丈夫でしょうか? エリザベータさんは課長が嫌いみたいなんですけど……」


 早々に狩りを終えたシェリーナは、二組に分かれていたことを思い出した。

 もう一組はオリハルトとエリザベータだ。

 シェリーナは内心、心配していた。


「そんなことないわよ?」

「うむ」


 フィローラが否定すると、レオリアが同意して頷いた。


「え? だって、課長はいつも困ってますけど……」

「むしろ、エリザベータちゃんは、課長が気になって仕方ないのよ。ふふ」

「うむ。だが、エリザベータですら、課長の素性は追えていない」


 三人が顔を見合わせた。


「確かにそうですよね。課長は謎すぎます。攻撃中の私の双鎚を素手で掴みましたし」

「私の矢も掴んだわよう?」

「私の蹴りも防いだ。骨は折ったがな」


 レオリアの発言に、苦笑いを浮かべるシェリーナとフィローラ。


 三人とも経緯はどうであれ、結果的にオリハルトに助けられた。

 異動当初は頼りないと思っていたが、今では上司として認めている。


「さあ、課長に美味しい料理を食べてもらうわよう。ふふ」


 三人はキャンプ地へ戻った。


 ◇◇◇


 キャンプ地では、リリアとアリッサが準備を進めていた。


 アリッサは折りたたみ式のテーブルを広げ、仕込みを開始。

 用意した野菜を切り、鍋に水を入れ、スープを作る。

 今日のメインは肉だから、サッパリとした野菜スープは喜ばれるはずだ。


 リリアはコンロに薪を入れ、手をかざして魔法で火をつけた。

 薪は一瞬で燃え上がり、キャンプ地に白煙が上がる。


「リリアちゃんの魔法は、相変わらず凄いですね」 

「そう? こんなの普通だよ」

「ふふ。普通の人は魔法を使えませんもの」


 リリアは大鍋を両手に持ち、コンロの網に乗せた。

 火加減を見て薪を追加する。

 そして、テーブルで仕込みをしているアリッサを見つめた。


「ねえアリーちゃん。課長って……」

「課長がどうかしましたか?」

「何者なんだろうって思って……」

「実は私も知らないんです。以前から人材派遣局に在籍していたようですが、経歴不明なんです。局長は何も仰らないですし」

「アリーちゃんが知らないって……」

「エリザベータさんも分からないくらいですからね」


 二人は作業の手を止めた。


「課長は私を止めるために、燃え盛る人間に飛びついて火を消そうとしたんだよ。普通そんなことする?」

「シェリーナちゃんも、レオリアちゃんも、フィローラちゃんの時も、自らを犠牲にして大怪我を負ったと聞きました」

「そうだね。全部私が治癒したもん」

「私は魔力がないので分かりませんが、彼女たちの攻撃を止めることなんてできるんでしょうか?」

「それなんだよね。普通は死ぬよ」


 深刻な表情を浮かべるリリア。

 対照的にアリッサが笑顔を見せた。


「課長の素性がどうであれ、彼はしっかりと仕事をしますし、アフターフォローも完璧です。顧客からの評価も高いんですよ」

「そうだね。パフェ奢ってくれるし」

「あら、いいですね。私も食べたいです。ふふ」

「じゃあ今度フルーツ堂へ行こうよ! 課長の奢りで!」

「はい。課長を誘って行きましょう」


 二人はオリハルトの追及をやめて、調理を続けた。


 ◇◇◇

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