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うちのメイドはやりすぎるっっ!〜最強メイドたちは今日も力で事件を解決します〜  作者: 犬斗
第七章 エリザベータ・ローレンテイル

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第33話 メイド課の休日1

「それでは出発しましょう」


 俺は全員を見渡し、号令をかけた。

 日の出を迎えたばかりの、まだ薄暗い森へ入っていく。


「私、狩りなんて初めてです。リリアちゃんは?」

「私も初めてだよ。シェーナちゃん」

「私もだ」

「えー、レオリアちゃんはありそうなのにー」

「エリザベータさんは経験あるんですよね?」

「もちろんよ」


 今日は早朝から、メイド課全員で狩りだ。

 場所は第七街区の郊外に広がるビオリ森。


 まずフィローラの自宅に集合して、全員で出発した。

 森の案内役はフィローラだ。

 フィローラは月に数回、このビオリ森で狩りを行っているという。


 アリッサさんが俺の隣を歩きながら、背中を見つめていた。


「か、課長……。あの……、全員分の荷物は重くありませんか?」

「え? 重い? 全然平気ですよ?」


 確かに俺は巨大なリュックを背負い、両手に大きなバッグを持っている。

 しかし、それほど重いというわけではない。


 しばらく森を進むと、開けた場所に出た。


「到着しました。ここがキャンプ地です」

「フィローラ、ここは?」

「私が開拓したキャンプ地です。いつもここでキャンプをするんですよ。ふふ」


 キャンプ地には、丸太のテーブルとレンガで作ったコンロが設置されていた。

 さらには小屋まである。

 キャンプ地どころか、これはもう立派な家だ。


 俺はフィローラが指示する場所に荷物を置いた。

 キャンプ道具として、折りたたみ式のテーブルや調理器具一式を持ってきている。


 フィローラが全員を見渡す。


「では、準備をして狩りへ行きましょう」

「キャンプの準備は俺がやっておくよ。フィローラ、みんなを連れて狩りへ行って」

「え? 課長は行かないんですか?」

「行くけど、先に準備を終えたい。火も起こしたいしね」


 隣で薪を手に持つリリアが、少しだけ首を傾けながら俺を見つめていた。


「火起こし? 私がやるよ?」

「あ、そっか。リリアの魔法があるのか」

「うん。私はここにいるから、課長は狩りへ行きなよ」

「え? いいのかい」

「うん。だって私は弓が使えないし、魔法を使うと被害が出ちゃうもん」


 リリアの魔法は力が強すぎる。

 獲物に必要以上の傷を作ってしまう。

 そうなれば味も落ちる。


「だから、私は応援するって言ったじゃん。ふふふ」


 笑顔を見せるリリア。

 リリアの目的は狩りというより食べることだから、問題ないのだろう。


 エリザベータさんが腕を組みながら、フィローラに視線を向けていた。


「フィローラ。狩りの方法はどうするの? 全員でぞろぞろと行くわけじゃないでしょう?」

「そうですね。では、二組に分かれましょうか」


 アリッサさんが手を挙げた。


「フィローラちゃん。私はここでリリアちゃんと、キャンプの準備をしながら待ちます」


 アリッサさんは、リリアと一緒にキャンプに残るようだ。


 今度はフィローラが、エリザベータに視線を向けた。


「じゃあ、二人にはここに残ってもらいましょう。えーと、この中で弓を使えるのは、私とエリザベータさんですよね?」

「そうね。私は何でもできるもの。フィローラは、シェリーナとレオリアと組みなさい」

「あら? エリザベータさんは課長と組むんですか?」

「ええ、そうよ。どうせオリハルト君は何もできないと思うから、私の荷物持ちね」

「あらあら。そんなことないと思いますけどねえ」


 二人が同時に俺を見つめた。

 突然のことで、俺はエリザベータさんの言葉の意味が理解できない。

 いや、理解したくなかった。


「え! 俺と!」

「嫌なの?」

「い……」


 嫌ですとは言えない。


「い、いえ。異論はありません」

「じゃあ決定ね」


 この森の中で、エリザベータさんと二人で狩り。

 最悪だ。

 どうしてこうなってしまったんだろう。

 俺もキャンプ地に残ると言えばよかったが、今さら言えない。


 フィローラが笑顔で全員を見渡した。


「それでは、準備して出発しましょう」


 ◇◇◇


 フィローラを先頭に、シェリーナとレオリアが森を進む。

 三人の服装は、動きやすい長袖長ズボンとブーツだ。

 さすがに狩りでスカートは履かない。

 三人とも、森の中で目立たない色の服を着用している。


「二人は何か食べたい食材はあるかしら?」


 フィローラは愛用の短弓を持ち、背中に矢筒を背負い、解体用のナイフを腰に装備している。


「私は鴨が食べたいです。でも、私の武器だと鴨は狩れないので、フィローラさんにお願いしてもいいですか?」

「もちろんよお。じゃあ、シェリーナちゃんには鴨を狩るわね」


 シェリーナの武器はいつもの双鎚ではなく、一本のスレッジハンマーだ。

 柄の長さは地面から腰ほどの長さで、ハンマーヘッドの大きさは、シェリーナの頭と同じくらいの円柱型だった。

 ハンマーが一本だと、消滅は使えない。

 それでも、シェリーナの魔力を込めることで、恐ろしいほどの威力を誇る。


「私は大牙猪だ。あの肉は旨い」

「確かに、今の時期は美味しいですねえ」


 レオリアは素手だ。

 とはいえ、膝まであるロングブーツを履いている。

 メイドの時とは違うシンプルなブーツだが、このブーツにも魔力を込めることは可能だ。

 レオリアの蹴りであれば、大牙猪も余裕で仕留めるだろう。


「この先に小さな池があるのよ。動物たちが水を飲みに来るわ」


 森を進むと、フィローラの言う通り池が姿を現した。


「わっ、鴨がたくさんいます!」

「シェリーナちゃんは幸運ね。あれは鴨でも南白鴨よ。この時期には珍しいわ。あれは高級食材よ」

「ほんとですか!」

「みんなの分も獲るとなれば、五羽は必要かしら」


 フィローラは、まず南白鴨の頭上をかすめるように矢を放った。

 矢に驚いた南白鴨は、水しぶきを上げながら一斉に羽ばたいていく。

 南白鴨が、池から森の木々の頭上に差し掛かったところで、フィローラは弓を五回射る。

 同時に五羽の南白鴨が地上に落下した。


「はい。五羽獲れたわよ」

「相変わらず凄いですね」

「ふふ。ありがとう。さ、獲りに行きましょう」


 池の上で仕留めても沈んでいくだけだ。

 シェリーナは、南白鴨を一旦飛ばして陸に落とした。

 三人は南白鴨を回収するため池の畔を歩く。


「あらあ、困ったわねえ。大爪熊よ」


 フィローラは特に驚きもせず、前方を指差した。


「わっ! 二頭います!」


 対照的に、シェリーナは驚きながら両手で口を押さえる。

 それもそのはず、大爪熊は森の上位捕食者だ。

 地面に落ちた南白鴨を狙っていた。


「私が狩ってこよう」


 レオリアは特に表情を変えず、無造作に大爪熊へ近づく。


「私も行きます! せっかくの南白鴨を取られちゃいますから!」


 シェリーナもレオリアの後を追う。


「あらあら、二人とも気をつけてねえ」


 笑顔で二人を見送るフィローラ。


 狩人にとって、大爪熊の狩りは命がけだ。

 数人でパーティーを組み、罠を仕掛けて狩りをする。

 それでも成功率は六割ほどで、命を落とす者も多い。


 だが、フィローラは全く心配していない。

 二人の実力を知っているからだ。

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