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うちのメイドはやりすぎるっっ!〜最強メイドたちは今日も力で事件を解決します〜  作者: 犬斗
第六章 メイド課の正体

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第32話 メイド課の正体

「オリハルト課長、そろそろ昼休憩ですよ」


 書類仕事に集中していると、アリッサさんに声をかけられた。

 俺は壁時計に目を向ける。


「え? もうこんな時間!」


 すでに昼だ。


「今日のランチはどうしますか?」

「そうですね、自分は食堂へ行きます」

「じゃあ、私もご一緒してもよろしいですか?」

「もちろんです」


 現在メイド課にいるのは、俺とアリッサさんだけだ。

 メイドたちは全員派遣業務へ出ている。


 俺とアリッサさんは城内の食堂へ向かった。

 城内には大広間を改装した職員用の食堂があり、旨くて安いと職員に好評だ。


 古城の周辺は比較的栄えており、レストランも多い。

 エリザベータさんなんかは繁華街のレストランへ行くが、俺はこの食堂が好きだった。

 味と価格に加え、ビュッフェスタイルで好きなだけ食べられるからだ。


「いつも思ってましたけど、課長ってたくさん食べますよね?」

「え? そ、そうですか?」

「ふふ、若いですものね」

「そんなことないですけど、食べることは生きることですから」

「私たくさん食べる人って好きです。ふふ」

「え?」


 アリッサさんは笑いながら薄桃色の髪を耳にかけ、スープを飲む。

 ただそれだけなのに、上品な所作に目を奪われてしまう。


「うちの課は魔力持ちばかりなので、みなさんたくさん食べますものね」

「あ、そ、そうですね。はは」


 俺のことではなく、メイドたちのことだった。

 一瞬でも勘違いした自分が恥ずかしい。


「シェリーナもリリアも、本当にたくさん食べますからね」


 魔力の使用は大量のエネルギーを消費する。

 食事を取らずに魔力を使用していると、体内のエネルギーが不足して『ハンガーノック』という症状を引き起こしてしまう。

 ハンガーノックが発生すると、身体機能が著しく低下する上、最悪身体が動かなくなる。

 特にリリアは魔法を使用することで魔力の消費が激しく、常に甘い物を持ち歩いているほどだ。


 アリッサさんは魔力持ちではないそうで、食事の量は普通だった。

 俺は自宅で調理をしないので、食べられる時に食べる癖がついてしまっている。


 いつものようにおかわりすると、アリッサさんは笑っていた。


 ――


 ランチを終え、アリッサさんとメイド課に戻る。


「さて、午後も書類仕事だ。今日中には片付けたいな」


 俺は書類の束に目を通していく。


「失礼します」


 男性の低い声とともに、メイド課の扉がゆっくりと開いた。

 メイド課に男は俺しかいない。

 誰だろうと疑問に思いつつ、声の方向に目を向ける。


「課長、少し時間をいただけますか?」

「きょ、局長!」


 扉を開けたのは局長だった。

 俺はすぐに立ち上がり、局長を出迎える。

 アリッサさんも同じく立ち上がり、深くお辞儀をして退室。

 給湯室へ向かったのだろう。


 俺は局長を応接室へ案内した。

 いつも使用するミーティングルームとは違い、応接室は高価な調度品が並ぶ。

 これらの調度品は、古城に残っていたものだ。


 対面のソファーに腰掛けると、局長が穏やかな笑顔を浮かべた。


「オリハルト課長。異動して二ヶ月ほど経過しましたが、どうですか?」

「はい、メイド課のメンバーとも打ち解けた……ような気がします」


 一部を除いてだが、そこはあえて言う必要はない。


「そうですか。それは良かったです。課長業務には慣れましたか?」

「書類仕事が多くて大変ですが、徐々に慣れてきました。ですが、まだ本来の業務は入ってないので、なんとも言えません……」


 アリッサさんが入室し、二杯のコーヒーを出してくれた。

 そして、火がついたアルコールランプと鉄皿をテーブルに置き、一礼してすぐに退出した。


 局長がコーヒーを口にした。

 小声で「旨い」と呟いている。

 アリッサさんが入れるコーヒーは確かに旨い。


「君が異動してから、初めての依頼が来ました」

「え!」


 人材派遣局は通常の派遣とは別の顔を持つ。

 内容は潜入捜査、情報収集、工作活動だ。

 通常の派遣業も、情報収集の一環として行われていた。


 人材派遣局とは名ばかりで、真の顔は、国王陛下直属の特殊諜報組織だ。

 メイド課はその特殊部隊の一つとなる。


「こちらが書類です。課長が読んだら処分します。記憶してください」

「かしこまりました」


 俺は書類を手に取り、全てに目を通す。

 そして、アリッサさんが用意していたアルコールランプで火をつけた。

 徐々に燃えていく書類を鉄製の皿に乗せる。

 程なくして、書類は全て燃え尽きた。


「上級貴族の舞踏会に潜入ですか?」

「はい、そうです。課長は以前の人狩り事件を覚えてますか?」

「もちろんです」

「舞踏会の主催者が、実はその黒幕なんです」

「え!」

「全てが繋がりました。これも営業課の努力と、メイド課のみなさんのおかげです」

「ど、どういうことでしょうか?」


 局長の話によると、先日の人狩りの実行犯は下級貴族のホレスなのだが、そこに人を卸していた黒幕がいる。

 つまり人買いだ。

 それが今回の潜入先である、上級貴族モルイ・ソルテリッジだという。


「じょ、上級貴族が人買い!」

「はい。しかもソルテリッジ家は遠縁ながら王家の血筋です。王位継承権も下位ですが保有するほどの貴族です」

「そんな貴族がなぜ!」

「金と血でしょう。莫大な金は人を狂わせる。そして、金を手に入れてしまった人間が求めるものは血です。ただそれだけです」


 金と血が人を変え、狂気を生む。

 俺には理解できないが、歴史上にはそういった狂った権力者がいたことは知っている。


「ちなみに、ここまで辿り着いた経緯も説明します」

「経緯ですか?」

「はい。まず、全ての始まりがシェリーナさんでした」

「え? シェリーナですか? ど、どういう……」

「シェリーナさんの派遣先、ジュドー・イルマスを覚えてますか?」

「もちろんです。その……猫を助けるために壁を破壊した顧客ですから……」

「ジュドーは猫だけではなく、人もさらっていました」

「え!」

「あの年齢で、あれほどの借家に住んでいることからも、相当な収入があったかと思われます」

「そう言われれば……」

「猫を虐殺していた地下室で、清掃課が一冊の帳簿を発見したのです。それが誘拐リストでした」

「誘拐リストですって!」

「ジュドーは殺人までは行っていませんでしたが、かなりの猟奇的な人物で、さらった人間を観察していたそうです。そのノートも出てきました」


 猫を虐殺していたジュドー。

 あの時、シェリーナに手をかけようとしていた。

 もう歯止めが効かなくなっていたのだろう。


「ジュドーのリストを分析室が確認しました。そして、営業課はホテルへ営業をかけます」

「それって!」

「トスコール商会です。あのマフィアが、人さらいたちを仕切っていた元締めです。まさか、レオリアさんが一人で壊滅させるとは思いませんでしたが、おかげでトスコール商会の帳簿も入手できました。あの時、課長が清掃課と営業課に連絡したのは正解です。もし騎士団に通報していたら、握りつぶされていたかもしれませんからね」

「まさか、騎士団に顧客がいるのですか?」

「ええ、騎士団の上層部、貴族院、元老院など多岐に渡ります」


 大事件なんてものではない。

 国家を揺るがす一大事件だ。


「……局長。人材派遣局に顧客はいませんでしたか?」

「いません。もし仮にいた場合、どうなるか分かりますよね?」

「はい。殺します」

「そういうことです。人材派遣局で背任行為はできません。人材派遣局は自浄作用が非常に強いですからね。まあ、君はよく知ってるでしょう。ははは」


 局長は笑いながらコーヒーを口にした。

 俺もカップを手に持つ。


「そして、トスコール商会の帳簿から二つのルートが確認できました。一つは卸先の人狩りです。この時もフィローラさんのおかげで、現場を押さえることができました」

「あの、メイドたちが毎回暴走して申し訳ございません」

「はは、彼女たちに非はありませんよ。むしろ、諜報員として皆さん優秀です」

「そして、もう一つが全ての元凶となる人買いです。誘拐や、他国の奴隷商人から購入した人を、国内で販売していたのです。それが上級貴族モルイでした」


 局長がもう一度コーヒーを口にした。

 その目は冷たく無表情だ。


「舞踏会というのは名前だけで、真の目的は顧客拡大の商談会です。国内外から集まるほどの規模ですから、潜入に関しては人材派遣局総出となります。綿密に計画を立てます。課長にも会議には参加していただきますよ」

「かしこまりました」


 今後の予定を打ち合わせして、局長が退出した。

 俺は自席に戻り、椅子に深く座り、背もたれに背中を預ける。


「ふう。大変なことになったな」


 まさか、シェリーナが猫を助けたことから、国家を揺るがす大事件にまで発展するとは思わなかった。

 だが、これこそがメイド課の存在意義だ。

 事件はどこで繋がっているか分からない。


「やりすぎるところもあるが、やっぱりうちのメイドたちは優秀だ。はは」


 思わず口に出すと、俺の右正面に座るアリッサさんが微笑みながら俺を見つめていた。


「す、すみません。聞こえてしまいましたか……」

「課長の仰る通りですよ。ふふ」

「アリッサさん、新規の依頼です。スケジュールを調整しましょう」

「はい、かしこまりました」


 俺はアリッサさんとミーティングルームへ移動した。

 メイド課全員が揃う、最も大きな派遣だ。

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