表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちのメイドはやりすぎるっっ!〜最強メイドたちは今日も力で事件を解決します〜  作者: 犬斗
第五章 フィローラ・トワネル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/37

第27話 森のメイド2

 ◇◇◇


 派遣当日を迎え、フィローラは指定された通り、早朝から第三街区へ向かった。

 メイド服に袖を通し、右手で革製のトランクケースを持ち、優雅に街道を歩くフィローラ。


 高級住宅街の第三街区は、貴族や豪商たちの家が立ち並ぶ。

 今回の依頼主であるホレス・アントムは下級貴族だが、第三街区の一等地に居を構えていた。


 周囲の屋敷と比べて、一際大きな屋敷の門の前に立つフィローラ。

 門には守衛もいる。


「大きなお屋敷ですねえ」


 フィローラが書類を守衛に提出すると、待合室に通された。


 ――


「人材派遣局のフィローラ・トワネルと申します」

「フィローラ様、お待ちしておりました。本日はよろしくお願いいたします」


 アントム家の執事と挨拶を交わし、さっそく配下専用の馬車に乗り込み出発。

 料理人などは、前日から森の別荘に泊まり込んで準備をしているそうだ。


 執事も当然ながら同行する。

 四人乗りの馬車内で、対面に座るフィローラと執事。


「フィローラ様、本日はご依頼を受けていただき、誠にありがとうございました」

「とんでもないことでございます」

「本日は狩猟パーティーになります。フィローラ様は森の中のキャンプ地で、給仕をしていただきます」

「かしこまりました」


 その後は、仕事内容と来賓者の説明を受けた。


 現場に到着すると、三人の男が談笑している。

 男たちは、見るからに高級な狩猟服に袖を通していた。


 主催者である下級貴族ホレス・アントム。

 同じく下級貴族グレゴリー・ナーク。

 そして、商人イーサタ・ベルシだ。

 三人とも四十代で同世代だという。

 グレゴリーもイーサタも、執事を伴っていた。


 三人は弓を持ち、森へ向かう。

 森の中にキャンプ地が用意されており、そこまで狩猟を楽しみながら歩くという。

 三人の執事とフィローラは、その後をついていく。


 フィローラたちのさらに後方に、荷車を引く従者がいた。

 その人数は二十人ほどだ。

 従者としては多いが、フィローラ以外はキャンプ地に宿泊するという。

 貴族たちの荷物が多いのだろう。


 ◇◇◇


 俺は朝礼を済ませ、自席に戻った。


 今日はフィローラが直接現場へ向かっている。

 終了は夕方になるため、フィローラは直行直帰だ。


 俺の左正面の席に座るエリザベータさんが、冷たい視線でこちらを見つめている。


「ねえ、オリハルト君。今日のフィローラだけど……」

「はい、直行直帰です」

「そんなことは分かってるわよ。人の話は最後まで聞きなさい。本当にバカなんだから」

「す、すみません……」


 朝から怒られてしまった。

 まあ、いつものことではあるが……。


「今日は狩猟パーティーなんでしょう?」

「はい、そうです。森の中で給仕ですから、フィローラしかできない仕事です」

「そうね。うちの課で虫が平気なのは、あの子だけだもの」

「はは、エリザベータさんにも苦手なものがあるんですね」

「ええ、そうよ。私だって嫌いなものはあるわ。虫とか、バカな上司とかね」

「ぐっ」


 いつもの仕返しをしたつもりが、華麗に返されてしまった。

 エリザベータさんには絶対に勝てない。


「ところで、フィローラの顧客の貴族。ちょっと怪しいわよ」

「ホレス・アントム様ですか?」

「下級貴族なのに、金回りが良すぎるという噂があるわ」

「そう言われれば確かに……。つい最近、第三街区の一等地に居を構えたとか……」

「なぜかしらね」

「エリザベータさんは、理由をご存知なんですか?」

「そこまで知るわけないでしょう。それに、それを調べるのがあなたの仕事じゃなくて? 本当にバカな上司ね」

「す、すみません」


 俺は焦りながら頭を下げた。

 しかし、エリザベータさんは怒っていないようだ。

 珍しく俺をまっすぐ見つめている。


「ねえ、オリハルト君。下級貴族ごときが、急激に金回りがよくなる理由って何かしら?」


 下級貴族とはいえ、貴族をごとき呼ばわりするのはエリザベータさんしかいないだろう。


「商売が上手くいっているのではないでしょうか」

「あの貴族は商売してる?」

「表立っては聞きませんね」

「表立ってねえ。じゃあ裏があるのかしら?」

「え? 裏?」


 表立ってという言葉を使ったが、別に怪しんでいるわけではない。

 だが、エリザベータさんの言葉が胸に刺さった。


「真面目な話、私もホレス・アントムが何をしてるか分からないわ。だけど、急激に金回りが良くなる場合って、ほとんど犯罪なのよ」

「じゃ、じゃあ、フィローラは!」

「さすがに人材派遣局を巻き込む可能性は低いと思うわ。だけど、犯罪者の心理なんて分からないもの」

「確かにそうですね。これまでも信じられない猟奇的な事件ばかりでしたし……」


 俺が呟いたタイミングで、アリッサさんが俺の机にコーヒーを置いてくれた。

 胸にトレーを抱えながら、俺に視線を向けている。


「エリザベータさんの仰る通り、その貴族が犯罪行為をしていたら……」

「フィローラが危険です!」


 俺は椅子から立ち上がった。

 しかし、エリザベータさんは呆れた表情を浮かべている。


「だから人の話を最後まで聞きなさいよ。まったく……」


 エリザベータさんの言葉に、アリッサさんが小さく微笑んだ。


「フィローラちゃんが自ら首を突っ込む可能性があるということです」

「フィローラ自ら……」

「そうです。彼女は普段おっとりしていますけどね。あの娘、怒ると……」

「はっ!」


 俺はエリザベータさんの顔を見つめた。


「何よ?」

「い、いえ」


 エリザベータさんはメイド課で最も怖い人だ。

 いつ何時でも怖い。

 フィローラはメイド課で最も穏やかだ。

 彼女がいると場が和む。

 だが、実は怒ると何をするのか分からない。


 エリザベータさんが呆れた表情で、俺を見つめている。


「どうするの? 相手は貴族よ。あの子がキレたら面倒よ?」


 うちのメイドは全員やりすぎる。

 相手が貴族だろうと、フィローラもやりすぎてしまうかもしれない。


「た、大変だ! 見に行ってきます!」


 俺はメイド課を飛び出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ