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練習試合・U-19バンガウィッグス戦(前編)

あくる日曜日、ACシルク一行はシルク駅から15分ほどのバンガ駅に向かう魔法列車に乗った。

改札で切符を出すと、駅員がパチン、とはさみで切符に穴を空けた。

ぞろぞろとおそろいの服装で18人もの選手たちは駅では目立つ。

「あ、あれ。新聞で見たACシルクだ。」

「へぇ、本当にできたのねぇ。」

駅の利用者の注目の的だった。

異世界であるアウロラ王国の駅を初めて利用する草太は辺りをキョロキョロと見渡した。

線路はある。だが電線がない。

(ということは、蒸気機関車みたいなのが来るのかな?でもそれだと魔法じゃないよな)

するとサブリナが草太に声をかけた。

「列車が来ましたよ」

すると、遠くから牛が列車を引っ張ってきた。

しかしそれにしては異様な速さだ。

ホームに差し迫ってくる牛を見ると、本物の牛ではなく青銅で作られた牛が走って客車を引っ張っているではないか。

サブリナが説明をしてくれた。

「この列車は鈍行だから牛が引っ張って、快速列車は馬で、都市間高速列車はハヤブサが引っ張ってます。私は馬の列車でソレセ市の夜間高校に通ってるんですよ。」

その言葉に、イーチェンはポツリとつぶやいた。

「これなら、地球温暖化は解決できるわね」

「イーチェンさん、そうだね」


一行は3等客車に乗り込んだ。

列車の中は粗末な木製の椅子があるだけだった。

選手の一人であるFWのパブロがポツリと愚痴を吐いた。

「たった15分でも1等に乗らせてくれよ。」

その言葉は草太たちには届かなかったが、ナムには聞こえた。

(……小生意気なやつめ。スタメンで使うつもりだっがやめてやろうか。)


すると、『モー』という牛の鳴き声と共に列車が動き出した。

草太は驚いた。

「え!?意外と速い!時速80kmは出てるんじゃ!?」

列車は海沿いを駆け抜け、トンネルを潜ると街並みが現れた。

明らかにシルク村よりも家屋の数が多い。

「レベッカ、バンガ町って人口はどれくらい?」

「10万人くらいね。ま、バンガも少子高齢化が言われてるけどシルク村ほどじゃないわ。」

やがて青銅牛たちのスピードが弱まり、ついにホームに着いた。

『モー』という声とともに、扉を開けて駅に降りる乗客たち。草太たちもそれに続く。

そこで草太は目撃した。

「あ!牛が草食ってる!」

駅員たちが青銅牛たちに干し草を与えているのだ。

サブリナは呆れたように言った。

「ソウタさん、当たり前じゃないですか。何も食べさせなかったら青銅牛はストライキを起こしますよ。ちなみに、青銅ハヤブサには生肉を与えるそうですよ。乗ったことがないので見たことないですけど。」

駅のホームには様々な広告が貼られていた。

『紳士の身だしなみ。それはバンガウイッグのカツラで始まる。』

『私たち!カラーウィッグで一味違う女になる!』

『絶対にずれません!断言します!それがバンガウイッグ社!』

草太はこの広告をまじまじと見た。

(絶対とか断言とか、この国に消費者庁みたいな組織はないのかなぁ?)

駅を出たところで、あらかじめレベッカが手配していた馬車に乗り込み、30分ほどしたところで小さなサッカー場が見えてきた。

座席はなく、どうやら立ち見席しかないのだが目を引くのはピッチが美しい緑色の芝生に覆われているのだ。

馬車を降りると、1人のグレーのスーツを着た小太りの中年男性が右手を差し出し草太に話しかけてきた。

「はじめまして。トゴウチさん。私、バンガウイッグ社社長のアンデルソンです。」

草太はアンデルソンの右手をつかんだ。

「はじめまして。ACシルク理事の戸河内草太です。それにしても、美しいピッチですね」

するとアンデルソンは嬉しそうに口角を上げた。

「ガハハハハハ!トゴウチ理事は見るところが違いますな!そうでしょう!そうでしょう!

ここは練習場ですが手は抜きません!

ピッチの芝生もカツラの毛もフサフサに!それが我が社のモットーですからな!ガハハ!」

そして、草太とレベッカ立ち見席に用意された椅子に案内された。

選手たちはACシルクの青を主体とし、ピンクの縦ラインが入ったユニフォームを着てアップを始める。

胸にはメインスポンサーである『スノリマ商会』のロゴ、右袖には『仕立屋ファランス』のロゴ、左腕にはサブリナの実家である『グランコ山オレンジ農園』のロゴ、背中には『ソラタオル製作所』のロゴが入っている。

監督であるナムは腕を組みアップを見守り、その横ではイーチェンがドリンクの配備やボール拾いなどを忙しくサポートしている。

草太とレベッカも背番号12と書かれたユニフォームを着た。

アンデルソンはACシルクのユニフォームを見て草太に話しかけた。

「シルク村のスノリマ商会さんとソラタオルさんですか!骨太な企業さんですな!」

「はい。助けていただいています。腕のスポンサー様も大切ですよ。」

すると、今度は黄色いユニフォームを着た少年たちがピッチに入ってきた。

U-19バンガウイッグズの選手たちだ。

「結構結構。うちのユニフォームは見ての通りシンプルですよ。新製品の『カラーキュートバンガウイッグ』のロゴのみですからな。ガハハ!」

すると、ぞろぞろとホーム側の立ち見席に黄色いシャツを着たサポーターたちが入ってきた。

一斉に歌を歌い始める。

「ガハハ。あれは我が社の社員たちです。U-19の練習試合とはいえ、有志でスタジアムに足を運び社歌を歌うのです。ガハハ!」

草太は言葉が出なかったが即座にレベッカがフォローした。

「頼もしい社員の皆様ですね。」

「そうでしょう!そうでしょう!」

そこに、サブリナが1枚の紙を持ってやってきた。

「ソウタさん、先輩。これがスタメン表です。」

草太とレベッカは1枚の紙を覗き込んだ。

『スターティングメンバー

1: ビョルン (GK)(C)

6: グスタフ (DF)

4: ダンテ (DF)

5: エリク (DF)

8: ウーゴ (MF)

16: オスカル (MF)

3: セドリック (MF)

2: アルバロ (MF)

10: マルコ (MF)

15: ニコ (MF)

11: パブロ (FW)

控え選手

7: フェリクス (MF)

9: ラファエル (FW)

13: イヴァン (MF)

14: ハビエル (MF)

17: クエンティン (FW)

18: セルヒオ (FW)

19: ルピ(DF)』

「レベッカ、ついに始まるね。」

「そうね。ソウタ。ここからよ」

そしてアップも終わり選手たちは円陣を組んだ。

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