第54話 オリバーの孤立
タツミは密かにアンダーの縄を解いていた。
————
「あら、この子たちが侵入者かい?」
「いやー、結構若いね。まさに青春だねー」
ポータルから現れたのは、変わった目をした看護師姿の女——ナオイだった。
次の瞬間、彼女はにこやかに言った。
「まあ、私が呼ばれたってことは……いただくね、あなたたちの……」
「魔力を……」
「魔力暴喰——デボーレ」
その言葉と同時に、オリバーは自分の内側から何かが強引に吸い取られる感覚に襲われた。
「う……っ!?」
わからない。
だが確かに、何か大切なものが自分の中から抜け落ちていく。
同時に、激しい脱力感が全身を包んだ。
オリバー、メリア、タツミの三人が、ほぼ同時に膝をついた。
メリアの縮小魔法が解け、彼女は元の大きさに戻った。
「うそ……私の魔力が……ほとんど全部……盗られた……!?」
メリアの声が震える。
天使である彼女ですら、こんな一瞬で魔力を根こそぎ奪われたことはなかった。
ナオイは満足そうに膨らんだ腹をさすった。
「ううぅ……ごめん、もう満腹……ポータル、お願い!」
「ひとりだけ、魔力多すぎ……」
ナオイはフラフラしながら、シスターの後ろに下がった。
「ジュリア、あの少年を殺して」
「ああ、わかった」
オリバーが立ち上がろうとした瞬間——
正面から重い衝撃が腹に叩き込まれた。
ジュリアがトンファーで殴りつけ、開いたポータルの中へオリバーを押し込む。
「—————っ! オリバー!!」
メリアの叫びが響いた。
しかし、オリバーはただ、こちらを心配そうに見つめることしかできなかった。
ポータルが閉じる。
残されたのは、メリアとタツミ、そして解放されたアンダーだけだった。
——ポータルから吹き飛ばされた先は、森の中だった。
雑草の上を転がりながら、起き上がる。
身体には脱力感が残っている。
だが、俺はまだ戦える。
それなのに、不思議と怖くない。
サボンを倒した相手なのに——————。
まあいいや。
俺は元々、魔法使いではない。
魔法がなくても戦える。
戦士や騎士に憧れを抱いている。
誰かを守り、敵を倒す。
それだけだ。
剣を構える。
彼女も同じ考えのようだ。
あちらもトンファーを構えている。
まるで剣道の試合のようだ。
どちらが先に攻撃を仕掛けるか、互いに待っている。
攻撃を外せば、反撃でやられる。
————————っ!
どちらも同じタイミングで武器をぶつけた。
「お前を倒す!」
自分に言い聞かせるように叫ぶ。
「雑魚にできるか!」
ジュリアが即座に怒鳴り返した。
だが、俺は怯まない。
ここで負ければ、みんなを危険にさらす。
それだけは絶対にさせない。
——————
地下の部屋。
神父は木製人形との会話を終えていた。
「そうか、刺客を送りますか」
教会襲撃の件を伝えていた。
「•••••••••あの六斬魔のアヤがここに来るのか」
「•••••••••••わかりました。撤退の準備をします」
木製人形は、まるで通信が切れたかのように動きを止めた。
木製人形で通信していたのはガルミだった。
彼はニヤリと笑っていた。
アヤを送るということは、死刑を言い渡されるようなもの。
時王直属の処刑人だからだ。




