表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/272

第88話 男たちの休日?1

 私は、休みで誰もいない学校にいる。誰もいないは語弊があるな。生徒のいない学校だ。

 今日は公務も休み。なんの予定もない完全な休日。折角なので、マリアをデートに誘ってみたのだが……。

 今日は女子会があるんです。そう言って断られてしまった。早めから誘っておくべきだったと後悔している。

 その後悔と、揺れ動く政治情勢への悩みを断ち切るため、訓練場で黙々と剣を振っている。


「あれ?会長?なんでいるの?」


 そんな私に、誰かが声をかけてきた。素振りをやめ、声のする方へと顔を向ける。

 レオンとハインリヒだ。休みの学校の訓練場に、二人はなんの用事があるというのだろう?


「レオン。二人してどうした?今日は休みのはずだが?」

「俺としては、会長こそどうしたって感じなんだけど?俺たちは、自主練にきたんだよ」

「そういうことです。レオンに頼んで、武術の訓練に来ました。そうしたら、フリードリヒ様がいたというわけです」


 休日まで訓練か……。二人とも真面目だな。まあ、私もやることが無くて剣を振っているのだから、同類なんだろう。

 それにきっと、レオンは当然だが、ハインリヒもこの危うい情勢に備えようという意図があるのだろう。

 マリアやハインリヒも、シバ国の内部抗争の話を知っているようだったからな。アリーセ嬢あたりから聞いたのだろう。

 このままことが進めば、シバ国は確実に牙を剝いてくる。これ以上、我が国との戦力差が広がる前に動くだろう。

 そのことに、聡いハインリヒは気付いている。マリアも、薄々ながら気付いている節がある。


「二人とも、戦争に備えてか?ハインリヒ。お前はどこまで知っている?」

「武闘派の上級王が誕生しそうだということまでです。そこから先は、想像すれば……容易に察しがつきました」

「だから、俺の実戦的な武術を教えて欲しいんだってさ。俺としても、ハインリヒとの訓練は有益だしさ」


 ハインリヒがそこまで知っているのなら、マリアも同じところまでは知っているだろう。

 だが良かった。そこまでしか知らないのならば……。シバ国の動きは、私やマリアが大きく関わっていることは知られてはならない。

 私が魔法学校プロジェクトを立ち上げたことで、シバ国の強硬派が動き始めた。焦ったのだろう。

 そして、マリアの誘拐事件。その失敗が、強硬派の動きを更に加速させた。本当に、いい迷惑だ。

 だが、マリアがそれを知れば……悲しむだろう。私のせいで、戦争までの時間が短くなってしまったと。

 実際のところ、マリアに責は無い。ただ被害に遭っただけなのだから。完全にシバ国が悪い。

 なので、隠し通す。幸いなことに、知っているのはこの国の頂点付近の人間だけということだろう。


「そうだったか。なら、私も訓練に混ぜてくれ。一人で剣を振るのも飽きてきていたのだ」

「フリードリヒ様との訓練なら、良い訓練になりそうです。レオンもいいですか?」

「ああ。会長とハインリヒ。軍属以外では、この国の最高戦力二人だからな。当然、オッケーだぜ!」


 私は、本来の目的を忘れていたことに気付いた。悩みを振り払うために、剣を振っていたのだった。

 なので、二人と共に訓練することを提案した。身体を動かし、汗と共に悩みを流してしまおうと……。


 先ほどから素振りをしていた私と違い、二人は来たばかり。なので、入念に体操をしている。

 今からの訓練の予定は、こうだ。一対一の模擬戦を順番に行う。一人は、審判兼見学だ。

 主にレオンが、私たち二人の癖や指摘箇所を把握できたら、それらを矯正するよう指導してくれる。

 武術、特に剣術においては、レオンの実力は国内最高峰だ。これ以上の師は、なかなかいないだろう。

 そんなことを考えている間に、二人とも準備が整ったようだった。

 後から来た二人の身体を温めるため、最初の模擬戦を二人に譲る。私は形だけの審判役となり、二人の剣筋を観察するつもりだ。

 訓練場備え付けの刃引きした剣を構えた二人が、真剣な表情で向かい合っている。私は、審判として開始の合図を送る。


「始め!」


 先に動いたのはレオンだった。勢いよく地面を蹴って飛び出したレオンが、上段からハインリヒの左肩へ剣を振り下ろす。

 いきなりの大ぶりの斬撃だったが、ハインリヒは剣を斜めに構えて受け流した。そのまま、レオンの胴を横なぎに斬りつけた。

 だがレオンは読み切っていたようで、いなされていたはずの剣が胴の横に現れていた。流れるような剣の動きだ。

 ハインリヒの剣を難なく受け止めたレオンは、剣同士を絡めて、ハインリヒの剣を巻き上げてしまった。

 ハインリヒの剣が宙を舞い、レオンの剣がハインリヒに突き付けられる。


「参りました。ここまで、差があるとは……」

「ハインリヒは、剣筋が綺麗すぎるかな。並の相手なら、まったく問題ないだろうね」

「やはりお手本のような剣術では、レオンに通用しませんね」


 レオンの言う通り、ハインリヒは決して弱くない。むしろ、軍にいたとしても上位の実力者だろう。

 だが、レオンにとっては遊び相手程度の扱いだ。それだけ、レオンが強すぎるのだ。

 数合しか打ち合っていなかったため、レオンに疲れは無い。そのため、私がレオンの正面に立ち、剣を構える。

 レオンも再度剣を構え、表情を引き締める。ハインリヒが、開始の合図をする。


「始め!」


 先の試合を見ていた私は、レオンに主導権を与えないように素早く踏み込み、上段から真下に振り下ろした。

 レオンは、その剣を頭上で受け止めた。


「ちょっ!会長!なにこの馬鹿力!?身体強化無しで、この威力って」


 なんとか受け切ったレオンが、私の剣を打ち払い、距離をとった。そして、レオンが仕掛けてくる。

 鋭い踏み込みで、上段に剣を構えている。私はレオンと同じように、頭上に剣を構えて防御態勢を取る。

 だが、レオンの剣は私の剣に触れなかった。あえて私と同じ攻撃をするふりをして、私の意識を頭上に持っていったのだ。

 レオンの斬撃は振り下ろすのではなく、横一文字に変化していた。がら空きの胴に、レオンの剣が突き付けられる。


「参った。まさか、レオンに騙されるとはな」

「会長の剛剣には焦ったよ!身体強化を使ってたら、剣が叩き折られてたと思うよ」

「そのつもりで打ち込んだからな。さすがに強化無しでは無理だったが……」

「俺を殺すつもりかよ!会長は、もっと駆け引きを覚えるべきだね」


 駆け引きか。確かに、強化を使えば相手の防御ごと斬り伏せられるが、自分の剣も相応に痛む。

 一対一の状況ならいいが、戦場では複数を相手に連戦するのが当たり前だ。それでは、剣がもたないだろう。

 次のハインリヒとの立ち会いは、力以外で勝負をしてみよう。折角の機会なのだから。


 私は、ハインリヒと向かい合うように対峙した。レオン戦と同じ失敗はしないようにしないとな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ