第87話 それぞれの目標
秋の社交シーズンも終わりを迎える頃、学校では三回目のテストが行われていた。
前回のようにぎりぎりにならないよう、各自しっかりとテストに向けて勉強を進めていた。
そして、テスト休暇に突入していた。今回はクラス分けがないため、テスト結果発表前にテスト休暇だ。
――――――
テスト休暇前、私たち生徒会の女子三人組とイザベルさんは、カフェでの女子会を約束していた。イザベルさんは、最後まで抵抗していたけど……。
そして、今日は女子会当日だ。とはいえ、女子会といえど周囲には大量の護衛がくっついているんだけど。
メンバー的に仕方ない……。隣国王子の婚約者の公爵令嬢と、この国の皇子の婚約者(誘拐経験済み)がいるからね。
カフェは通常営業中ということになっているけど、入り口は警備兵が守っている。営業妨害も甚だしい。
そのため店内には私たち四人以外は、普通の客はいない。いるのはアマラや護衛隊のみ。少し離れた席で待機している。
女子会って、首脳会談みたいな雰囲気だっけ?たぶん……違うはずだ。
「前回よりもやばい雰囲気になっとるね……。肩の凝る女子会やな」
「ん。厳戒態勢のカフェ。斬新」
私も、ここまでの事態になるとは思っていなかった。前回は、普通にアマラも席に着いていたし。
確かに、警護対象が増えたけど……ここまでやる必要あるのだろうか?
「マリアさん、シバ国の情勢に動きがあったようですわ。そのための警備です。諦めるほかありませんわ」
やれやれといった感じで、イザベルさんはため息をついた。
上級王の話を、イザベルさんも知っているのだろう。立場的に、かなりの影響があるため当然か。
ただ、いつまでもこの厳戒態勢を気にしていては、私がしたい話が出来ない。思い切って、話を切り出す。
「今日みんなに集まってもらったのは、みんなが将来のことをどれくらい考えてるかを聞きたかったの」
私の話に、みんな首を傾げる。あれ?私、おかしいことを聞いただろうか?
私も首を傾げ始めた所に、ローズが質問をしてくる。
「将来いうんは、目標とかを聞きたいんか?それとも、具体的なプランか?」
「どっちでもいいです。とにかく、これからの事を聞きたいんです」
「そかそか。なら、あたしから。あたしは学校を卒業したら、オネスト商会を世界一の商会にするつもりや!東の果てから、西の果てまで……どこにでも、どんなものでも売っとる商会を作ったる」
ローズは、ローズらしい夢だと思った。正直、フリードリヒの夢よりも難しいかもしれないけど……。
物流も未成熟、経済学などの研究も未発達。帝国内全域に支店を構えることすら難しい。
でも数百年後、オネスト商会は世界中に広がっているんじゃないかと思う。それこそ、数世代かけて世界を制覇してそう。
「次は私。研究棟で研究する。新しい技術をたくさん開発する。そのためのお金は国から出るから」
テレーザもぶれないな。ローズの影響かもしれないけど、がめつくもなってるし……。
だけど、国としてもテレーザとしても、両者共に得をする。天才的な研究者が、豊富な予算で研究を進めるんだから。
この国は、さらに豊かになるだろう。私もアイデアを提供するつもりだし。
「次はわたくしですわね。わたくしは、ルスト王国の王子妃として、そしてアーティラ公爵の娘として……両国の橋渡しをするつもりよ」
「イザベルさんは、以前もそう言っていましたよね。具体的には、なにをするとか考えていますか?」
「なかなか突っ込んでくるわね。まだ希望でしかないけれど、ルストにも学校を作りたいわ!魔法学校との交換留学なんて、面白いと思うわ」
イザベルさんもおぼろげながら、将来の事をしっかり考えているようだ。学校づくりか……。
学校をつくるにあたって、ルスト国は帝国に協力してもらうことになるだろう。両国の人材が行き交うことになる。
それをスムーズに行えるようにするには、イザベルさんが適任だ。両国に顔が利き、権力も強大だ。
とても素晴らしい考えだと思う。すでに考えを持っていて……私と違うな……。
「最後は……私ですね。私はフリードリヒと共に、フリードリヒの夢を叶えたいです。民を豊かにする。ですが……私は、どうやってフリードリヒの力になれるのかが見えていません。どうしたらいいでしょうか?」
私の問いかけに、三人とも呆れた顔をしている。いや、諦めの顔か?
「マリアちゃん、ホンマ賢いようでにぶいな」
「ん。マリアならなんでも出来る。どれを選んでも大丈夫」
「本当に腹が立ちますわね……。貴女なら、なにをやったとしてもフリードリヒさんのためになりますわ!」
「ええと……具体的にはどうしたらいいでしょう?」
再度の問いかけに、三人ともさらに呆れているようだ……。
「別に、なんもせんくてもいいんちゃう?会長なら愛しのマリアちゃんのため、張り切って働くやろ?」
「私と研究棟で働いてもいい。マリアなら、いい研究者になる」
「フリードリヒさんと公務を行っても、貴女なら完璧にこなすでしょう?」
「ええと……結論から言うと?」
三人はため息をついた後、諦めたように吐き捨てる。
『好きにすれば?』
そんなに雑に扱わなくても……。でも、やりたいことと言えば……。
「だったら、研究棟で私も研究員をしても大丈夫ですか?皇子の妻が研究員とか、問題ある気がするんですけど」
「どうせ、マリアさんなら圧倒的な功績をあげるのですから、問題ないと思いますわ」
「ん。私も一緒に働きたい」
「研究材料のご用命は、オネスト商会までよろしく!」
私はこの道を進んで大丈夫なのか?大丈夫なんだろう。みんな、背中を押してくれているのだから。
今度、フリードリヒに研究員になりたいって言ってみよう。どんな反応が返ってくるかな?
その時が少し楽しみだ……。
その後は、女子会らしい話題で盛り上がった。ローズの婿探しや、イザベルさんのドリル……髪型についてなど。
社交に疲れ気味だった私にとって、こういう雰囲気が何よりの癒しだった。
名残惜しかったけど女子会の時間は過ぎていき、解散となった。
このテスト休暇が明ければ、秋の社交シーズンも終わる。その頃には、東部選帝侯戦の結果も判明するだろう。
そしてなにより、基礎学年は最終学期に突入する。あと三か月で、イザベルさんやレオンともお別れだ。
イザベルさんは、ルスト王国へ嫁入り。レオンは、国軍への入団。なかなか会うことは出来なくなる。
でも二人とも、それぞれの道を進むのだ。悲しがってばかりはいられない。笑顔で送り出してあげなければ……。




