第68話 演劇大会閉幕
「皆さま、お待たせいたしました。結果発表を開始します」
集計が終わり、生徒会副会長のお兄様が結果を読み上げていく。
結果を一足先に知っている私たち生徒会メンバーは、その様子を様々な表情で見つめている。
「まず、第三位。四十一票獲得。三組の”童話劇~笑いを添えて~”です」
レオンとローズが悔しそうだ。もっと観客の年齢層が若ければ、結果は違っていただろう。
「続いて、第二位。七十九票獲得。一組の”ロミオとジュリエット”です」
私とフリードリヒは笑っていた。結果は二位だったけど、みんなで協力して演じ切った。
色々問題もあったけど、クラスのみんなも満足げだった。だから……これでいいと思う。
「そして、優勝は……八十票獲得。二組の”ベルサイユの百合”です」
発表をしているお兄様、それを聞いているテレーザ。共に無表情……。
お兄様は進行役なのでしょうがないけど、テレーザ……。少しは喜ぼうよ……。
「続きまして、個人コンテストの結果を発表します」
来てしまった……。この憂鬱な時間が。予想はしていたけど、まさかここまでとは……。
「優秀男優賞は、満票を獲得したフリードリヒ様です」
名前を呼ばれたフリードリヒが、ステージ中央に優雅に進む。
さすが皇子様。慣れていらっしゃる。観客から黄色い声があがっている。
お兄様が出演していたら、もっと票が割れたであろうけど……。あとレオン、ドンマイ!
「最後に、優秀女優賞は、こちらも満票。マリア様です!」
名前を呼ばれてしまった私が、ステージ中央に足早に進み、フリードリヒの隣に並ぶ。
お兄様が様付け、しかもなぜかテンション高め。淡々と発表していたのに、私だけ特別扱いしないでください!
ただ観客からは、フリードリヒの時と違い、舐めまわすような視線を感じる。
演技中は気付かなかったけど、こんな感じで見られたいたのか……。そう思うと、少し怖い……。
私が怯えているのを察したフリードリヒが、私を抱き寄せ、観客からの視線を遮る。
「皆には申し訳ないが、マリアは私の婚約者だ!不躾な視線を向けるのは遠慮願いたい」
一瞬静かになった観客席。だが、状況を理解した女性たちを中心に、嵐のような歓声があがった。
「殿下、かっこいい!」「マリア様、羨ましい!」「殿下、マジ王子!」
抱きしめられている私は、硬直し、なすがままだ。劇の中でのキスシーンと違い、これは演技ではないから。
衆目の中での、不意の王子様ムーブ。ときめくべきなのだろうけど……そんな余裕はない!
なんとか目線で、お兄様に助けを求める。お兄様が軽く頷く。
「皆さま、静粛に!お二人に盛大な拍手をお願いします」
解放された私とフリードリヒが拍手の中、ステージを後にする。
その後、お兄様から閉幕が宣言され、無事(?)に演劇大会は終わりを迎えた……。
――――――
ステージや観客席の撤去を指示した生徒会メンバーは、生徒会室に集まっていた。
一部の投票用紙にはありがたいことに、意見や改善案を書いてくれてあった。さすが、各家の当主や皇城勤めの方々だ。
なので、私たちが感じたことを含め、反省会が行われることとなった。
「来年同じイベントを行うかはわからないが、今回の演劇大会の反省点を、話し合いたいと思う。各自、意見を述べてくれ」
フリードリヒが言うように、来年も演劇大会を行うかは未定だ。だけど、初イベントの運営上の反省点は、記録として残したかった。
来年入学してくる生徒の中から、次の生徒会メンバーを選出する。なので、このイベントの経験は引き継ぎたい。
この学校は生まれたばかり。多くの事がゼロからのスタートだった。なら、来年は一とか二からスタートさせてあげたい。
そして、十年後や二十年後には……伝統と言われていたら、私たちの苦労は報われると思うから。
「投票用紙の意見にもあるけど、俺的に各クラスの持ち時間が短かったと思う」
「そうやな。三十分は短すぎやったな。昼過ぎに大会終わってもうたしな」
「倍でも大丈夫でしたね。私もマリアも台本を書く時、一番苦労をしたのが時間でしたから」
そうなのだ。時間を短縮しなければいけないため、原作を改変し、削りに削った。
結果、ダイジェスト版のような仕上がりになってしまった。まあ、学生が演じるのだから、それでもいいとは思うけど。
「そうだな。どのようなイベントをやるにしても、時間の管理はもっとしっかりやるべきだな。他には?」
「休憩時間、暇だった」
「私もそれは感じました。演劇を見ている時以外の、時間の過ごし方がもったいなかったです」
フリードリヒがイベント案で書いていたように、出店とかがあればよかったと思う。
舞台準備中も、観客が楽しめるような配慮が必要だ。これは要改善だろう。
「やはり、出店が必要だったな!来年は祭を行おう!他に意見は?」
フリードリヒ……そこまで祭がしたかったんだ。そういえば、マコト君は祭とか大好きだったからね……。
「これは観客側ではなく生徒側の事情なのですが、開催時期はもう少し早めた方がいいかと」
ん?早める?お兄様の意見に、フリードリヒ以外の全員が首を傾げる。
「なんで?クラス分けの関係か?俺は問題ないと思うけど?」
「レオン、三日後になにがあるか忘れたのですか?」
「三日後……?あっ!テストだ!やばい、忘れてた!」
あっ……私も完全に忘れてた。これはまずい。学生の本分は、あくまで学業!
イベントにかまけて、テストの点が落ちるのはよろしくない!由々しき事態だ……。
「そうだな。来年以降は考慮すべきだな。他に――――――」
その後も多くの意見が出て、反省会は終了した。この議事録は、来年以降に活用して欲しいところだ。
そして、生徒のみんなには頑張って欲しい。地獄のテスト勉強を……。
私も帰ったら、勉強漬けになるだろう。イザベルさんに負けないように。
――――――
テスト当日まで、私は頑張った!人間、やれば出来るものだ。今回のテストも大丈夫だろう。
直後に控えているクラス分けも、国の学校プロジェクトチームに丸投げしてあるから、問題ない。
そういえば、そろそろ基礎学年も折り返しか……。




