第67話 私視点のロミオとジュリエット
幕が上がり、劇が始まった。
クラスメートたちが二手に分かれ、家同士の戦闘シーンを披露する。当然、魔法を使っての派手な演出で。
それを止めるよう、太守が現れ、舞台背景の説明を行いながら、みんな袖に引き上げる。
そして、私とフリードリヒが観客の前に現れる。
ロミオを演じるフリードリヒが、モンタギュー家の説明を終える。次は、ジュリエットを演じる私の番だ。
「私はキャピュレット家の一人娘、ジュリエット。街一番の美女と言われ、多くの殿方からの婚約の誘いを受けています……。中でも太守家のパリス様は、私のことを大層気に入っておられる様子。お母様のすすめで、パリス様や街の有力者を招いた仮面舞踏会を開催することになりました」
そう言いながら、私は舞台袖に引っ込む。それと入れ替わるように、ロミオの友人である、マキューシオとベンヴェーリオが現れた。
仮面舞踏会に行きたいという、ロミオ。危険だと止める、二人の友人。
噂のジュリエットを一目見たいと引き下がらないロミオに、友人たちは渋々ながら従うことにした。
仮面をしっかり被り、正体がバレないよう振舞うことを約束したロミオたちは、会場に向けて歩き出す。
舞台は変わり、私とパリスが、仮面を被りダンスをしている。それを、遠くで見守る親戚のティボルト。
そこに、ロミオたちが仮面を被って登場する。ジュリエットを探すような素振りをしながら。
そして、ダンスを終えたパリスが退場し、一人残された私のもとに、ロミオがやってくる。
ダンスに誘われた私は、それを了承する。前世のダンスを披露する私たち。
ダンスが終わり、ロミオが仮面を外す。それを見た私も、仮面を外す。
『美しい……』
仮面を外し、素顔を晒したロミオ。それを発見したティボルトが、ロミオのもとに歩み寄る。
それを遮るように立つ、マキューシオとベンヴェーリオ。互いが睨み合う。
それを察したロミオは、急いで仮面を被り直し、私に名前を告げて逃げ去る。
「美しく、たくましいロミオ様……。でも、貴方はモンタギュー家のお方。私はどうすればいいの!?」
私は天を仰ぎ、嘆き悲しむ。同時に、幕が下りて工作班が舞台を変え始めた。
私はバルコニーに上り、待機する。準備が整い、幕が上がる。
「ああ、ロミオ様。……どうして貴方はロミオなの?」
空を見つめ嘆く私。そこに、壁を乗り越え、ロミオが現れる。
情熱的に愛を語るロミオ。それを受け入れたい私。苦悶の表情を浮かべる。
「貴方はお父様と縁を切り、その名を捨てて。それが無理なら、せめて私を愛すると誓って……。そうすれば、私はキャピュレットの名を捨てましょう!」
その言葉に応えるように、結婚式を挙げることを申し出るロミオ。それを受け入れる私。
信頼する司祭、ロレンスのもとで式を挙げることを伝え、ロミオが去っていく。
そして、幕が下りた。その間に、バルコニーから降りて舞台袖に引っ込む。
幕が上がり、そこにはロミオ、マキューシオとベンヴェーリオ。相対するように立つ、ティボルト。
ティボルトがロミオに対して、様々な苦情と怒りをぶつける。それに対して、ロミオは急いでいるからの一点張り。
その理由を問うティボルト。ロミオは、ジュリエットとの結婚式のことを漏らしてしまう。
そこから、マキューシオの独白が始まる。ロミオは古くからの友人。そして、将来の主人。
だが、相いれない敵であるジュリエットを、妻に迎えようとしている。それを許してよいのか?
独白が終わり、激昂したティボルトが、ロミオに決闘を申し出る。だが、それを断るロミオ。
焦れたティボルトが剣を抜き、ロミオに向かって斬りかかる。それを庇った、マキューシオが斬られてしまう。
目の前で崩れ落ちていく友人の姿に、ロミオも剣を抜く。ティボルトと斬り結び、ティボルトの剣を弾き飛ばす。
敗北し、膝を折るティボルトの独白が始まる。密かにジュリエットに想いを寄せていた。だが、血の近さがそれを許さなかった。
ジュリエットをパリスに託せば、不幸にはしないだろう。だが、ロミオが相手では……?間違いなく不幸になる。
独白が終わり、ロミオに思い止まるよう詰め寄るティボルト。聞き入れられず、ロミオの剣をその身に受ける。
そこに、衛兵を引き連れた太守が現れる。状況を説明するベンヴェーリオ。裁きを下す太守。
ロミオの、即刻の街からの追放。衛兵に連れられ、追い出されるロミオ……。
場面が変わり、私とロレンス司祭がステージに現れる。いつになっても現れないロミオ。
そこに、ロミオの追放とパリスとの婚約を伝える使者が現れる。私は悲しんだ……。
その様子を見ていたロレンスが、私に一策を講じる。死をも覚悟しているのなら、これを使えと。
渡された薬は、偽死薬。ロミオには事情を伝える使者を立てるから、と。
幕が下り、ジュリエットの屋敷へと舞台が変わる。
キャピュレット夫妻、パリス、私。話し合いの結果、婚約が正式に決定する。
私は部屋に戻る。ベッドに横たわり、偽死薬を飲み干す。
日が変わる表現のあと、私の周りで悲しむキャピュレット家の人々。
私は運び出され、幕が下りる。最後のシーンである地下墓地に舞台が変えられた。
幕が上がり、私は安置台に横たわっている。傍らに、慟哭するパリス。
そこにロミオが現れる。事情を伝える使者とは会えないまま、ジュリエットの死だけ知ったロミオ。
ロミオの姿を見つけたパリスが、ジュリエットの死の原因になったことを理由に、ロミオに斬りかかる。
それをロミオは、持っていた短剣で受け止め、逆にパリスを刺し殺してしまう。
その後、ロミオは横たわるジュリエットを見つける。
「ジュリエット!私の愛しい人!」
フリードリヒが私に口づけをする。そして、懐から毒薬を取り出し……飲み干す。
ジュリエットのそばで、眠るように息を引き取る。直後、私は身体を起こす。
眼下に横たわるロミオを見つける私。ロミオの手に握られている空のビン。動いていない心臓。
「なぜ……毒薬を残しておいてくださらなかったのですか?同じ毒で……私も死にたかった……」
私はロミオの腰から、短剣を抜く。そして、ロミオの隣に横たわる。
「こうすれば……二度と離れることはありません。二人の愛は永遠です……」
私は短剣を胸に刺す。笑顔で……。
そこに、ロレンスとキャピュレット夫妻、モンタギュー夫妻が現れ、両家は和解を宣言した。
フィナーレを迎え、キャスト全員が並ぶ。挨拶をしながら幕が下りた。
拍手の音は、ほとんど聞こえない。代わりに、嗚咽の声ばかり聞こえてきた。
こうして、全クラスの劇が終わった。レオン主導で、投票用紙の回収が始まっていた。
残りの生徒会メンバーと合流した私とフリードリヒは、開票作業を進めている。
開票作業時間の繋ぎには、ミリヤム学校長の総評をお願いしてある。話が長いから……適任だろう。
さて、結果はどうなったかな……?




