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第64話 事件の後始末

 私が救出された日、魔法学校は騒然としていた。昨夜の帝都の状況、マリア誘拐の噂、生徒会メンバー全員の欠席。

 国から情報統制の指示は出ていたが、それゆえに噂は本当だと証明してしまっていた……。

 授業の円滑な実施が難しいと判断した学校上層部は、一日の休校を実施することとなった。


――――――

 

 そして、翌日。私たちは登校している。今までと違い、侍女と従者を帯同してだ。

 

「お嬢様ぁ、私たちのことは気にせず、殿下とイチャイチャしてもらっても大丈夫ですよぉ」

「しないわよ!こんな朝っぱらから……」

「それでは……朝じゃなければイチャつくんですね?」

「そういう意味ではないわ……。とにかく、変な気は回さなくて結構よ!」


 一日しっかり休んだため、私も侍女も普段の調子を取り戻していた。


「殿下、本当に私だけで大丈夫なんですか?」

「お前がいれば大丈夫だ。戦闘は不得手でも、身代わりぐらいにはなれるだろ?」

「ひどい!私の存在価値はその程度なんですね……」

「冗談だ。お前がいることに意味がある。これで、なにかあっても複数人で行動できるからな」


 フリードリヒも大丈夫なようだ。マクシミリアン様をいじる余裕があるようだし。

 誘拐事件があったことが嘘のように、ゆるやかな雰囲気のまま学校に到着した。


「マリアさん!貴女、大丈夫だったの?怪我は?体調はもう大丈夫なの?」


 学校に着くなり、イザベルさんを筆頭に、生徒たちが集まってくる。

 情報は伏せられていたはずだけど……人の噂に戸は立てられないか。まさかイザベルさんが、ここまで心配するとは。


「私は大丈夫ですよ!この通り、どこも怪我しておりません。みんなには心配かけたようで……ごめんなさい」


 私はその場でくるっと一回転し、無事をアピールする。そして、深々と頭を下げた。

 それを見てみんなは、よかったと安心したようだ。本当、いろんな人を心配させてしまったんだな……。

 多くの人に囲まれながら、私たちは教室に向かったのだった……。


 その後、午前の座学の時間が、緊急の全校集会に変わったため、生徒全員が講堂に集まった。

 学校長であるミリヤム様が、お話を始める。誘拐事件と、それに伴う学校側の対策の話だ。

 誘拐事件の内容に関しては、ぼかして説明が行われた。国の方針なのだからしょうがないだろう。

 そして対策。校則追加と、国からの人員派遣が主だった。

 1、閉校時間が決められ、日没三十分前には、校内から出ること

 2、不審者の侵入対策で、校門での生徒証の提示が義務になったこと

 3、国から衛兵隊が派遣されたこと

 4、通学路の警備兵が増員されたこと

 大きな変化としては、こんなところだろう。いずれは必要だったことばかりだけど、私がきっかけだと思うと……。


 集会が終わり、各教室に戻った私たちは、残った時間でコース分けの希望調査をすることになった。

 演劇大会が終われば、コース分けという名のクラス替えだ。このクラスも、もうすぐ変わってしまうのか……。

 少し物悲しさを感じながら、私は官吏科と記入して提出する。フリードリヒも同じく官吏科のようだ。

 コース分けの調査票が回収し終わり、この後の説明が行われた。

 午後の実技の授業は行うが、その後の演劇大会の練習は禁止された。警備体制が整うまでは、禁止とのことだ。

 説明が終わった後、昼休みとなった。


 食堂に向かった私たちは、生徒会メンバーと合流した。


「マリアちゃん!無事に見つかってよかった!俺、心配したんだよ!」

「ホンマや!ホント、シバの連中はクズしかおらんな」

「ええと、みんな私のために無理させちゃって……ごめんね。それと、ありがとう」


 みんな、夜を徹して捜索してくれた。そのことが嬉しい。いささか不謹慎だとは思うけど……。

 ふと、お兄様が静かなことに気付き、様子を窺う。……とても不機嫌なようだ。

 生徒会メンバーには、今回の騒動がシバ連合王国の手引きであったことが通知されている。

 きっと、お兄様の報復リストの最上位に、シバ連合王国の名前が載ったのだろう……。


「お兄様、私は大丈夫なので……とりあえず、落ち着いてください」

「ああ。落ち着いているよ。どのようにして、シバ国に落とし前を付けさせるべきかを考えているところだ」


 これは、駄目そうだ……。フリードリヒと違って、一生根に持ちそうだな……。

 そんなことを考えていた時、フリードリヒがみんなに声をかける。


「皆に紹介しておきたい者たちがいる。マクシミリアン、アマラ。お前たちも同席しろ」


 そう言って、後ろに控えていた二人を席に着かせる。


「マクシミリアンは私の従者だ。警護の関係で、常に私に帯同することになった」

「マクシミリアン・フォン・ブラウンと申します。皇城に詰めていたため、皆さんとは初対面ですね。よろしくお願いします」

「次にアマラ。彼女はマリアの侍女だ。常にマリアと一緒にいると思うが、仲良くしてやってくれ」

「アマラ・ツー・ドーナと申します。お嬢様の身は、命を懸けてお守りする所存です」


 二人の紹介を終え、生徒会メンバーが質問攻めを行っている……。

 さすがに可哀そうになってきたため、話題を変えることにした。


「みんな、コース分けはどこを選んだんですか?ちなみに私は、官吏科です」

「あたしとテレーザは商業科や。テレーザが商業科を選ぶとは思わんかったわ」

「俺は騎士科。まっ、当然だよな。それ以外の道は無いからね」

「私は官吏科です。皇城勤め希望ですからね」


 テレーザ以外は予想通りだった。お兄様が、皇城で働きたいというのも意外だったけど。

 その後、昼食を終えた私たちは、午後の授業を終えた。

 生徒会活動も演劇大会の練習同様、警備が整うまでは自粛することとなった。

 そのため今日は、早くに自室に戻ることができた。


「学校とは、あのような場所だったんですねぇ」

「アマラは初めてだったっけ。どう感じた?」

「そうですねぇ。とても不思議な場所でしたねぇ。本当に、身分差に寛容だと思いました」

「そうね。最初の頃は、いろいろ苦労もあったわよ。でも今は随分変わったわ」


 この変化が、良い変化だと思いたい。学ぶことに身分は関係ないのだということが……。


「次は平民ですか?」

「それもいずれはね……。その前に、やらなきゃいけないことがたくさんあるからね」

「そうですねぇ。一足飛びではできないことですからねぇ……」


 まずは、平民が学校に通うことができる下地を作る。生活のゆとりを作らなければいけない。

 ティエラ教会の助力も得られる。フリードリヒが皇帝になるまでには、下地作りは終わらせたいな。

 思わぬ横槍は入ったけど、夢への道は着々と進んでいるはずだ……。

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