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第63話 救出

 一人取り残された私は、急に恐怖に駆られた。誘拐されたという事実が、今になって襲ってくる。

 シバ連合王国に連れていかれてしまったら、私はどうなってしまうのだろう?

 以前、陛下が言っていたことを思い出してしまう。私との子を成す……。望まぬ妊娠。

 それだけは嫌だ!この状況をなんとか切り抜けなければ……。

 

 まず私は、周辺の確認を試みた。先ほどの探知魔法を、より集中して精度を上げる。

 それらから分かったことは二つ。

 1、上り階段があり、あの女性はこのフロアにいない

 2、小窓周辺の様子や上り階段があることから、ここは半地下のような場所

 そのうえで、帝都内のどこかなのは間違いがなさそうだ。この時間は門が閉まっていて、出入りが出来ない。

 ならば、私の居場所さえ伝えることができれば、誰かが救出に来てくれる可能性が高い。


 だったら次は、私の居場所を知らせる方法だ。これも、魔法を使えばいいのではないか?

 1、小窓から火魔法を打ち上げる

 2、小窓から雷魔法で疑似雷を発生させる

 3、小窓周辺の土を操作して、目印を作り上げる

 火魔法は駄目だな。爆発音で味方だけでなく、敵にも気付かれる。

 土魔法も良くないな。夜間では視認しづらい。気付いてもらえない可能性がある。

 だったら、雷魔法だな。目立つし、出力を上げすぎない限りは無音だ。


 その後、周囲に敵がいないことを確認しつつ、小窓から疑似雷を作り続けた。

 魔力を半分ほど使った私は、誰かが気付いてくれたことを期待して、眠りにつくのだった……。


――――――

 

「マリア!いるのなら返事をしてくれ!」


 フリードリヒの叫び声で目を覚ます。小窓からは、朝日が差し込んでいた。


「フリードリヒ!私はここです!」


 私はありったけの声で返事をする。すると、何人もの足音がこちらに向かってきた。

 そしてフリードリヒと共に、多くの兵士が鉄格子の前に現れる。私は助かったようだ。

 フリードリヒが牢の中の私の姿を確認するや、牢の鍵を魔法で破壊した。

 ん?これ……私にもできた気がする。自力で脱出できたのでは……?

 そんな風に考えていた私は、急に抱きしめられた……。とても強く……。


「良かった!本当に良かった!マリアがいなくなって……本当に心配したんだぞ!」


 私の肩に、フリードリヒの涙が零れ落ちる。私を抱きしめる腕が、小刻みに震えている。

 それほどまでに心配してくれていたのか……。この強すぎる抱擁が、今は心地よかった。


「ご心配をおかけしました……。気が動転していて、自力で脱出できることに気付きませんでした……」

「そんなことはどうでもいい!君が無事であったなら、そんなことは問題ない!」


 ただただ抱きしめられている私は、牢の前で待機している兵士と目が合った。

 多くの目がある中での熱い抱擁……。急に現実に引き戻され、恥ずかしくなる。

 驚いて固まっていたであろう兵士の方々も、正気を取り戻したようで、こちらに声をかけてきた。


「殿下、私共は上階に戻って、捕縛者たちを連行いたします!」


 そう言うと、兵士たちは足早に去っていった……。なんか、ごめんなさい。


「フリードリヒ、そろそろ苦しいので……放してくれませんか?」

「あっ、ああ。すまなかった……」


 やっと解放してくれた。向き合ったフリードリヒの目が、赤く充血していた……。

 夜通し探してくれていたのだろう……。そのうえ、涙まで流させてしまった……。

 

「いえ、私こそ……すいませんでした。簡単に誘拐されてしまって……」

「マリアが悪いわけ無いじゃないか!誘拐犯たちには……徹底的な取り調べが行われるだろうな」


 怒りを隠そうともしないフリードリヒ。なんとか落ち着かせないと……。

 私はフリードリヒの頭を両手で掴み、優しく胸元に抱き寄せた……。


「落ち着いてください……。でなければ、大事なことが伝えられません」

「マ、マリア……。この恰好は……いろいろまずい!落ち着いたから、放してくれ!」


 フリードリヒを解放し、落ち着いたのを確認した私は、シバ連合王国が今回の犯人であることを伝えた。

 落ち着かせる前にこのことを伝えていたら、兵を率いて攻め込んでいたかもしれない……。


「その情報は……間違いないのだな?」

「はい。主犯格の女性が言っていました」

「取り調べの結果と合わせて、母上には伝えておく。国としてシバには抗議文を送ると思うが……」

「きっと、知らぬ存ぜぬでしょうね……」


 その後、監禁場所から出た私は、帝都の北、職人区の倉庫を改造した建物に囚われていたことを知った。

 きっと、製品を満載した馬車に私を詰め込み、帝都の外に連れ出すつもりだったのだろう。

 また、生徒会メンバーやアマラ、お母様までも、夜通し捜索してくれていたらしい……。

 さらには、皇城の近衛兵、ティエラ教の職員までもが協力してくれたとのことだ。

 それを聞いて、事の重大さを改めて認識し、背筋が寒くなった……。


――――――

 

 厳重な警護体制で自室まで戻った私に、侍女が飛びついてくる。


「お嬢様!無事でなによりです!本当に本当に……良かった」

「ごめんね……アマラ。心配かけて……」


 普段は(言動以外)凛とした佇まいの侍女が、髪や服は乱れ、顔は涙でぐちょぐちょだ……。

 申し訳なさとありがたさで私も、涙が溢れてくる。


「お嬢様、お疲れですよね?着替えをしてお休みください!」

「貴女もね……。ずっと私を探してくれていたのでしょ?一緒に休みましょう?」


 最低限だけ身を清め、二人で私のベッドに潜り込む。

 最初は戸惑っていた侍女だったが、諦めたのか私の抱き枕になっている。

 牢屋の冷たい床とは違う、とても温かいベッド。暖かく、それ以上に心が温かい。


「ありがとう、アマラ。ただいま」

「おかえりなさい、お嬢様」


 言い忘れていた言葉を侍女に伝え、いつの間にか眠りに落ちていた……。


――――――

 

 今回の騒動を重く見た国の上層部は、私やフリードリヒの警護体制の見直しを行った。

 その結果、私にはアマラが、フリードリヒにはマクシミリアン様が常に身辺警護につくことになった。

 アマラは喜んでいたけど、マクシミリアン様は心配そうだった。武力的にも、仕事的にもだ。

 これでシバ連合王国が諦めてくれるといいのだが、まずは日常に戻れたことを喜ぶことにしよう……。

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