表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/272

第62話 誘拐

 演劇大会が近付きつつある、今日この頃。

 私たち生徒会は、出演組(私、フリードリヒ、テレーザ)と裏方組(お兄様、ローズ、レオン)に分かれて活動している。

 出演組は基本的にクラスでの練習を優先し、裏方組は従来の生徒会業務を行っている。

 特に私は、台本を書いてしまったため、主演兼監督のようなポジションになってしまっている……。


「マリア、このシーンでのロミオはどう演技すべきだ?」

「そうですね、もう少し身体を大きく使ってください。ティボルトへの怒りを身体でも表現してください」

「ここでのマキューシオは、どのような気持ちで演じればいいですか?」

「ロミオの友達でいたい気持ちと、家を裏切ったロミオを許せない気持ち。その狭間での葛藤ですね」

「すごく難しいですね……。悩みながらもロミオを守りたいって気持ちで演じてみます」


 原作よりも愛情や友情の設定を濃くしてあるため、各シーンごとにみんなが私に指導を求める。

 私もそれに応えようと、指導に熱がこもってしまう。やるならば全力でやりきるのみ!

 時間も忘れて練習をしていた私たちは、空が闇に包まれていくことに気付かなかった……。


――――――


「あっ!フリードリヒ、そろそろ帰らないとまずいですね」

「いつの間にか、こんな時間か……。皆、今日の練習はそろそろ終わりにしよう!」


 その声に、練習で残っていた生徒たちが帰宅を始める。

 私たちも急いで帰り支度を整え、学校を出る。街はすでに真っ暗だった。

 電気がまだ無い世界だ。当然、街灯のようなものはない。遠くに、巡回の警備兵が持つ松明の明かりが見える程度だ。


「これは、マクシミリアンに怒られるな……。マリアも、アマラが心配している頃だろう」

「気合を入れて練習しすぎましたね……。急いで帰りましょう!」


 そう言って急ぐ私たちの前に、何人かの人間が立ちふさがる。

 暗くて顔まで判別できないが、友好的な態度でないのは明白だった。


「なにか用か?私たちは急いでいるんだが」


 フリードリヒが問いかけるが、返事は返ってこなかった。

 代わりに、背後からも人が集まってくるのを感じる。周囲を囲まれたようだ。


「マリア、フリーデ姉様が雇ったごろつきだろう。仕掛けてきたら、殺さないように対処しよう」

「了解です。探ってみましたが、人数は二十人ほどのようです」


 聖女様の魔力の放出を参考に、簡易の探知魔法を開発してあった。

 魔力を周囲に放出し、反響を拾う。あくまで簡易なので性能は良くはないけど……。


「行け。殺すなよ」


 周囲を囲んでいるうちの一人が声をあげる。それと同時に、全員が襲い掛かってくる。

 私たちは身体強化の強度を高め、迎え撃つ姿勢をとる。素手でだ。

 フリードリヒは剣を、私はナイフを護身用に持ってはいるが、使うつもりはない。

 フリードリヒに飛び掛かってきた男が、何人もの敵を巻き添えにして吹き飛ぶ。

 私も負けじと、掌打を敵の胸部に叩きつけ吹き飛ばす。フリードリヒと同じように人間ボーリングだ。


「マリア!打って出る。そちらは任せた」


 吹き飛んだ仲間を見て躊躇し始めた敵を、どんどん無力化していく。簡単に言えば殴り倒しているだけだが……。

 国内最高峰の魔力を持つ私たちは、危なげなく全員を無力化した。


「マリア、こいつらが逃げないように見張っていてくれ。警備兵を探してくる」


 フリードリヒが走り去る。残された私は、倒れている敵をひと固まりにまとめて見張りをすることにした。

 なんというか、あっけなかったな。第二皇女様は、私たちの魔力を甘く見ているのだろうか?

 そんなことを考えていた私に、ふいに声がかかる。


「マリア様ですね。こちらの賊の対応はお任せください。つきましては、事情をお聞きしたいので、ご同行をお願いします」


 暗闇から現れた女性に導かれる。暗くて良く見えないが、警備兵の装備をしている様に見える。

 あれ?なんでフリードリヒは一緒じゃないんだろう……?敵の数が多かったから、先に一人だけ来させた?

 まあ、いっか。さっさと事情聴取を終わらせて、部屋に帰らないと!アマラが心配してるはずだから……。

 一緒に歩いていた警備兵?の女性が、視界から消えた。その瞬間、背後から口と鼻を押さえつけられた。


「へっ?モガモガ……」

 

 なにかしらの薬物だったのだろう。私の意識は徐々に薄れていった……。


「ホント、この国の貴族はチョロいねぇ……。こんな状況で、見ず知らずの人間についてくなんてね」


 意識が途絶える直前、耳元で女性が呟いていた。

 この国……?なんの事……?第二皇女様の仕業ではないってこと?

 そして私は、完全に意識を失った……。


――――――

 

 私が目を覚ましたのは、牢屋のような場所だった。

 周囲三面には壁。小さい窓から月明かりが差し込んでいる。そして、残り一面は鉄格子。

 牢屋のようではなく、牢屋だな……。さて、困った。状況が分からない……。

 とりあえず声をあげてみる。


「誰かいませんか?」


 すると鉄格子の先から、返事が返ってくる。


「マリアお嬢様、目が覚めたかい?寝心地はどうだった?」


 先ほどの女性の声が聞こえ、こちらに向けて歩いてくる足音が聞こえる。


「寝心地は……最悪ですね。地べたで寝たのは久しぶりです」

「そうかい。それにしても落ち着いてるねぇ。もっと騒ぐかと思ったよ」

「いえ。状況が把握できていないので、いまいちピンとこないといいますか……」

「鈍感なのか、図太いのかよくわからないねぇ。とりあえず、最低限のおもてなしはさせてもらうよ」


 そう言って鉄格子の隙間から、パンが渡される。

 最低限の明かりしかないが、女性の風貌を観察する。とりあえず、知らない顔だ。

 着ているものも警備兵の恰好から、商人風の装いに変わっている。


「そのパンを食い終わったら寝ときな。昼になったら旅行の開始だよ。シバ国へご招待さ」

「ええと、私は誘拐されたんですね……」

「そういうこと。ずっとチャンスを待っていたんだよ。あんた引きこもりすぎ……」

「学校と皇城への往復がほとんどですからね」


 女性は去っていき、私一人が残された。さて、どうしよう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ