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第57話 ティエラ教

 時は少し遡るがお茶会の頃、私たち生徒会は演劇の歴史を調べていた。

 演劇大会開催のための準備の一環として。最初は、そのような理由だった。

 大図書館で何冊も本を読み漁る。そのうちに、不思議なことが判明した……。


「大昔の劇の台本が見つかったで。ぎょうさん種類があったんやな」

「こっちもあったよ。俺の知らない劇ばっかりだな……。これなんて、めちゃくちゃ面白そうじゃん!」


 ローズとレオンには、とても古い台本、戯曲を集めてもらっている。

 大昔、カージフ帝国が王国でもなく、建国すらされていない頃の戯曲が多く見つかった。

 だが……。


「やはり無いな。ここにないということは……そもそもないのだろう」

「こちらにも無いようですね。カージフ王国時代の物は、存在しないと考えるべきでしょう」


 フリードリヒとお兄様には、少し昔、カージフ王国時代の物を探してもらっていた。

 結論としては、演劇という文化が消失していた……。大昔には、あったはずなのに。


「ん。見つけた。教会関連のものばっかり」

「テレーザの方も?こっちもティエラ教の布教用の物ばっかりだね」


 私とテレーザは、カージフ帝国時代、いわゆる近代の物を探していた。

 演劇は復活していた。ティエラ教のための物として……。一つ、思い当たることがある。


「この中で、演劇鑑賞したことある人!」


 私の問いに、私以外全員が手をあげる。ええと、私は流行から遅れているのかな……?

 悲しい気持ちをぐっとこらえ、質問する。


「それは、どこでどういった機会に?」

「豊穣祭の時に、聖堂の近くの広場でかな。俺もタダだったから、見にいったぜ!」


 他の面々も、だいたい同じような返答だ。現在の演劇はティエラ教が独占している。

 前世の歴史で習った状況と一緒だ。恐ろしく正確に一致している……。


「フリードリヒ、世界史の授業を覚えてる?」

「前世のか?ある程度なら……。それがどうした?」

「前世の歴史でも、キリスト教が演劇文化を弾圧したことがありました」

「そんなこともあったかな?その後は?」

「キリスト教の布教や信仰強化のために、演劇を取り入れました。宗教劇として……まさに今の世界のように」

「歴史の焼き直しか……。教会の主導のもとに、となると……教会を調べるべきだな」


 フリードリヒは私とお兄様、すなわち転生組を残し、他のメンバーを帰らせた。

 過去の演劇台本を借りていって、生徒へサンプルの台本を作って欲しいと口実を作って。

 三人が帰り、大図書館がいつものような静寂に包まれたのを確認し、お兄様に状況を説明した。


「フリードリヒ、この世界の広域宗教は、ティエラ教しかないんですよね?」

「マリアは最近記憶を取り戻したから、違和感を感じたのか……。そうだ。教会=ティエラ教と認識するほどに」


 前世では、世界的宗教がいくつかあった。だが、この世界はティエラ教のみ。

 それなのに、前世と同じように歴史が繰り返されている。誰かが裏で糸を引いている様に……。

 誰かというのは、まず間違いなくティエラ教上層部だろう。では……何故?


「お兄様の時代は、宗教はどのような状況でした?」

「あなた達の時代よりも悪化していました。超大国は、人種や言語は超越していましたが、宗教対立は残っていました」

「では、政治的対立以外にも、宗教的対立が文明崩壊にも影響していたんですか?」

「間違いなく影響していますね……。人種や言語の差が科学の力で克服できたぶん、宗教の違いが明確な違いになったと思います」


 宗教が複数あることが文明崩壊を早めた?ティエラ教会がその知識を継承しているのなら……。


「フリードリヒ、ティエラ教の異教徒への対応はどのような感じですか?」

「冷酷だな。徹底的に弾圧する。ティエラ教徒には寛容だが、異教徒には慈悲のかけらもない」

「やっぱり……。ちなみに、対抗できるような他宗教はありますか?」

「私の知る限りでは無い。残っている宗教は、土着の小規模な宗教が、潰されては復活し、を繰り返している程度だ」


 ティエラ教の考えはわかった。この世界を、再び崩壊させないようにしている!

 文明崩壊以前の知識を継承しているのも、間違いないだろう。歴史の流れは変えず、問題だけ取り除こうとしている。

 他宗教を許さない。でも、前世の宗教で行われていたことは再現する。当然、行き過ぎた技術は開示しない……。

 それならば、教会勢力からの協力はとても得やすいだろう。


「フリードリヒ、お兄様。ティエラ教とは良好な関係が築けそうです!」


 二人に、ティエラ教の狙いを伝える。二人は現状とすり合わせ、妥当な推論かを考察しているようだ。


「確かに筋が通るな。ならば、教会との交渉の仕方を変えるべきだな……」

「そうですね。こちらも情報を多く持っていることだけでなく、教会の意図を理解していて、協調する準備があることまで伝えるべきでしょう」


 カージフ帝国は大国だ。こちらからティエラ教会に干渉はしづらいが、逆も同じ。

 だったら、教会がコントロールしやすい皇帝を望むのは間違いない。こちらが裏切らない限り、味方でいてくれるだろう。


「これでティエラ教との交渉は、上手くいきそうですね?」

「ああ。目的がわかったなら、交渉の成功率は格段に上がるだろう。マリア、ありがとう!」


 フリードリヒが嬉しそうだ。それを見て、私もとても嬉しく思う。

 少し前までは、笑顔が少なかったが……悩みを打ち明けられてからは、よく笑うようになった。

 私は、その笑顔が好きだ。フリードリヒの笑顔が続くように……もっと頑張ろう!


「二人とも、交渉頑張ってくださいね。私もお茶会、頑張ります!」

「はい。マリアの気づきを無駄にしないように、上手く立ち回って見せますよ」

「私もだ。マリア、お茶会ではフリーデ姉様に気をつけろよ?」

「はい。あの人の恐さは、先日思い知りました……。お茶会では、警戒しておきます」


――――――

 

 そして、あの恐怖のお茶会が開催されたわけだ。この時、フリードリヒは第二皇女様の策に気付いていたはずだ。

 気をつけろ、だけに留めたことにも、きっと意味があったのだろう。私は、素晴らしく困惑したけど……。

 ちなみに、ティエラ教会との交渉は、着々と進んでいる。二人の努力の成果だ。

 テスト後には、教会トップの聖女様との会談が行われるところまで、たどり着いたようだ。

 この会談が成功し、教会勢力との協力体制が公表されたら……継承戦の勢力図は大きく変わる。

 国教であるティエラ教の威光は大きい。中立を保っていた貴族の多くは、改革派に合流してくれるだろう。


「フリードリヒの夢に、少しは近付いたかな?違うな……私たちの夢に、か……」


 そうだ。フリードリヒ一人の夢ではない。共に歩くと決めた日から、私たちみんなの夢になったんだ……。

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